どんな場面でも常に高いリターンを上げられる金融商品はありません。どんな金融商品にも必ず「得意な局面」と「苦手な局面」があります。現役証券アナリストの佐々木達也さんが、今人気の金融商品や注目セクターの「とくい」と「にがて」を徹底分析する連載。第5回は、株式を時価総額の大きさで分類した「大型株」「中小型株」について詳しく見ていきます。
- 東証では時価総額上位100銘柄を大型株に分類。101~500位が中型株
- 個別株のほか、投資信託やETFでも大型株・中小型株を狙った投資ができる
- 相場全体が上昇する局面は大型株。企業業績の向上でより上がりやすいのは中小型株
大型株投資、中小型株投資とは?
株式の銘柄選びでは、企業の規模によって「大型株」と「中小型株」に分けることが一般的です。この分類は「誰もが知る有名企業」と「これからの成長が期待される企業」の違いや、単なる会社の規模の違いだけにとどまりません。
大型株と中小型株では株価の値動きの傾向が異なるうえ、適切な投資方法も大きく異なってきます。
大型株、中小型株の特徴
大型株と中小型株は、「会社の値段」である時価総額(株価×発行済み株式数)によって分けることができます。どこからが大型株で、どこまでが中小型株かは絶対的な基準はありませんが、ここでは東京証券取引所による分類について説明します。

大型株とは?
東京証券取引所は、東証プライム市場の時価総額上位100銘柄を「大型株」に分類しています。厳密には、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄の上位100銘柄(TOPIXコア30とTOPIXラージ70)がこれにあたります。
2025年12月時点での時価総額上位はトヨタ自動車(7203)、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、ソニーグループ(6758)などで、誰でも知っている大企業がほとんどです。大型株は海外投資家や年金基金といった大きな資金で取引されることが多いため、売買のしやすさ(流動性)も高く、値動きは一般的に中小型株に比べると穏やかになる傾向があります。
中小型株とは?
大型株に次いで時価総額の大きい銘柄は「中型株」に分類されます。TOPIXでは、大型株以下の時価総額上位400銘柄が該当します。ざっくりと時価総額1兆円以下くらいのイメージでしょうか。
時価総額がそれ以下のTOPIX構成銘柄は「小型株」と呼ばれます。大型株よりも時価総額が小さいという意味で、中型株も含めて「中小型株」とひとまとめにした表現も良く使われます。流動性や時価総額が低いため大型株よりも値動きは大きくなる傾向があります。取引があまりない銘柄では、値段がほとんど動かない場合もあります。

※期間は2025年1月6日~12月18日。始点を100として指数化
大型株、中小型株に投資する方法は?
個別株投資
具体的に大型株、中小型株に投資するにはどのような方法があるのでしょうか?
証券会社の口座で個別株を選んで買う方法が一般的です。一応、日本取引所のホームページの東証規模別株価指数の構成銘柄から調べることもできます。ただ、そこまで厳密である必要はありませんが、投資しようとしている株、もしくは保有株がざっくりと大型株なのか中小型株かくらいは把握しておきたいところです。
投資信託を通じた投資
個別株を選ぶ知識や経験がないといった方は、投資信託経由での投資もおすすめです。
ファンドマネジャーが銘柄を厳選して投資するアクティブファンドでは「中小型株」の名を関した投資信託も多く、例えば野村アセットマネジメントの『小型ブルーチップオープン』やフィデリティ投信の『フィデリティ・日本小型株・ファンド』などは運用成績などの評価も高いとされ、相対的に純資産総額も多めです。
アクティブ運用の大型株タイプではスパークス・アセット・マネジメントの『スパークス・新・国際優良日本株ファンド』、野村アセットマネジメントの『ノムラ・ジャパン・オープン』なども有名です。指数に連動するタイプのインデックス投信では、日本を代表する大型株で構成される日経平均株価になじみのある個人が多いためか、ニッセイアセットマネジメントの『ニッセイ日経225インデックスファンド』などの日経平均連動型に資金が流入しています。
ETFを通じた投資
個別株と同じく売買の自由度が高く、手数料も低めのETF(上場投資信託)を通じて投資することもできます。大型株タイプでは、例えば野村アセットマネジメントの『NEXT FUNDS TOPIX Core 30連動型上場投信』(1311)は、TOPIXコア30銘柄のみに投資できます。
中小型株タイプではアセットマネジメントOneの『One ETF JPX日経中小型』(1493)などがあります。ただ、純資産総額や流動性がやや少ない点には留意したいところです。中小型株への投資ではETFではなく、投資信託を通じた投資が良いかもしれません。
大型株、中小型株の得意な局面・苦手な局面は?
大型株の「とくい」と「にがて」
大型株は、相場全体が大きく上昇するような局面を得意とします。2025年の日経平均株価の上昇の牽引役はソフトバンクグループ(9984)やアドバンテスト(6857)など、値がさの大型株でした。流動性が高いため配当や株主優待狙いで長期投資するのも向いています。
一方で成長した大企業が多いため、成長率という面では中小型株に劣ります。個別株投資で大きく値上がりを狙いたい局面は苦手と言えるかもしれません。
中小型の「とくい」と「にがて」
大型株に対して、中小型株は企業として成長段階にあることが多く、業績の向上や特定テーマへの資金流入の局面は株価が大きく値上がりする得意な場面とも言えます。
対して相場の悪化局面では大型株よりも値下がりすることが多く、苦手としています。
| 大型株 | 中小型株 | |
|---|---|---|
| 特徴 | 日本を代表する大企業であり、年金基金などプロの投資家も頻繁に売買するため、流動性(売買のしやすさ)が高い。値動きは比較的穏やかな傾向 | 時価総額が低いため、株価の値動きは大型株より大きくなりやすい。ただし流動性が低いため、取引が少ない銘柄は株価がほとんど動かない場面も |
| 得意局面 | ・相場全体が大きく上昇するような局面 ・配当や優待を狙った安定志向の長期投資に向く |
・業績の向上や、特定のテーマに資金が流入したときの値上がりは大きくなりやすい ・成長企業に出会えれば、短期的に大きな利益を狙える |
| 苦手局面 | ・成熟企業が多く、成長性では勢いのある中小型株に劣る傾向 | ・株式市場全体が悪化する局面では大型株より値下がりしやすい |
次回(1月13日公開予定)は、日経平均株価などの株価指数の2倍、もしくは商品によっては3倍以上の値動きをするようにつくられた「レバレッジ型」の投資信託・ETFについて見ていきます。
















