どんな場面でも常に高いリターンを上げられる金融商品はありません。どんな金融商品にも必ず「得意な局面」と「苦手な局面」があります。現役証券アナリストの佐々木達也さんが、今人気の金融商品や注目セクターの「とくい」と「にがて」を徹底分析する連載。第9回のテーマは「債券」。昨今の金利上昇を受けて、個人向け国債など債券への注目が高まっています。今回は、そんな債券の特徴について掘り下げていきます。
- 債券は、あらかじめ決められた利息を受け取れる仕組みの金融商品
- 個人向け国債や社債・地方債、外国債券のほか、投資信託やETFを通じた投資も
- デフレ・景気悪化局面に強く、既発債はインフレ局面を苦手とする
債券投資とは?
世界的なインフレや日銀の利上げでかつての低金利時代が終わりを告げています。日本でも「金利のある世界」が現実のものとなってきました。
投資の世界では「株」が主役になりがちですが、今のような不透明な局面こそ、改めてその価値を見直したいのが「債券」です。
債券とは、国や企業などの投資家からお金を借りる際に発行する「借用証書」のようなものです。あらかじめ決められた利息を受け取ることができ、国や企業などの発行体が破たんしない限りは、満期(償還)を迎えれば額面金額を受け取ることができます。
満期や固定の利息がない株式に比べ、リスク・リターンが抑えられた「守り」の証券といえます。
株式に比べると派手さはありませんが、世界の債券の市場は株式市場に比べてはるかに規模が大きく、年金や機関投資家などの資産運用の大きな受け皿となっています。
今回は、個人投資家が検討しやすい「個人向け国債」や「社債」、そして「投資適格債」を中心とした債券ファンドの特徴について解説します。インフレ局面における債券の正しい向き合い方を知り、ご自身のポートフォリオの「守り」を固めていきましょう。
債券に投資する方法は?
実際に債券へ投資する方法は、株式と同様に証券会社で口座を開き、個別の債券を直接選ぶ方法と、複数の債券に分散投資する投資信託・ETFを利用する方法があります。
個別債券への投資
個人向け国債
国債は日本の政府が発行する債券で、もっとも安全性の高い債券といえます。中でも、個人投資家しか買うことのできない「個人向け国債」が人気です。
3年・5年満期の「固定金利」タイプと10年満期の「変動金利」があります。銀行の定期預金金利よりも利息が高く、利息の一定額を払うと中途換金もできる自由さが魅力で個人投資家の関心が高まっています。
そのほか、個人だけでなく法人や団体でも購入できる「新窓販国債」なども選択できます。2年・3年・10年満期の固定金利タイプがあります。
| 三井住友銀行 「スーパー定期」 |
SBI新生銀行 「パワーダイレクト 円定期預金30」 |
個人向け国債 第189回債 |
|---|---|---|
| 0.60% | 1.00% | 1.39% |
※利率は税引き前。2026年2月20日時点
社債・地方債
企業や地方公共団体などが発行する債券です。信用力は国よりも相対的に低いとされることから、一般的に国債よりも利率は高めです。
財務や業績の悪い企業の社債は利回りも高い(ハイイールド債と呼ばれます)ですが、その分元本割れとなる信用リスクも高くなります。債券投資の経験があまりない方は、なるべく信用力(格付け)の高い「投資適格」の債券に投資するのをおすすめします。
| 発行体 | 期間 | 利率(仮条件) | 信用格付け | 申し込み単位 |
|---|---|---|---|---|
| T&Dホールディングス | 5年 | 1.75~2.35% | AA(JCR) | 10万円~ |
| 東急不動産ホールディングス | 5年 | 1.80~2.40% | A+(JCR) | 10万円~ |
※利率は税引き前。各条件は2026年2月20日時点。信用格付けは条件決定日に取得予定
外国債
米ドル建てや豪ドル建てなど、海外の国や企業が発行する外貨建ての債券への投資です。総じて利率は国内債券よりも高めなのが魅力です。
ただし、為替の変動により円建てで見た際のリターンが大きく上下する点には留意しましょう。投資時よりも円安になっていれば差益を得ることができますが、円高になっている場合は円に両替した際の価値は減ってしまいます。
投資信託・ETFを通じた投資
「どの銘柄を選べばいいか分からない」という場合は、ファンドマネージャーに運用を任せる投資信託も活用しましょう。
例えば、国内債券に投資するタイプの投資信託では三井住友DSアセットマネジメントが運用する『三井住友・日本債券インデックス・ファンド』 、外国債券に投資するタイプでは三菱UFJアセットマネジメントの『eMAXIS Slim 先進国債券インデックス』などが純資産総額も大きく投資家に支持されています。
株式と同じように売り買いしやすいETF(上場投資信託)では、野村アセットマネジメントの『NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債連動型』(2511)などがあります。
債券投資の得意な局面・苦手な局面は?
債券型の投資が得意とするのは、デフレ・景気悪化局面です。株式が暴落するような不況時には、投資家は安全な資産を求めて株式を売り債券を買うため、債券価格は上昇(利回りは低下)する傾向にあります。
反対に、債券はインフレ局面を苦手としています。物価が上がると、将来受け取る利息の価値が相対的に目減りしてしまうためです。
また、景気が拡大して中央銀行が利上げを行うと、新しく発行される債券の利率が上がる一方で、既発の低い利率の債券は売られるため、価格が下落してしまいます。
債券は目先の高い利回りを追い求める「攻め」の道具ではなく、株式市場などで何か大きなショックがあった際に、資産全体の目減りを防ぐための守りの資産とするのが良いでしょう。
債券の特徴と活用法
- 株式と比べてリスク・リターンが抑えられた「守り」の証券として活用
- 個人が買いやすいのは個人向け国債。より金利が高い社債は証券会社で買える。個別銘柄ではなく投資信託・ETFを活用する方法もある
債券の得意な局面・苦手な局面
- デフレ・景気悪化局面では、株式が売られて債券が買われる傾向があるため、債券価格が上昇しやすい
- インフレ局面では、物価上昇に比べて債券の利息が目減りしてしまうことも
- 景気拡大に伴う利上げ局面では、新しく発行される債券は利率が上がる
- 一方で、発行済みの債券は利上げ局面では利回りの魅力が薄れるため売られやすくなり、価格が下がる
次回(3月10日公開予定)は、金融商品とは違う切り口になりますが、積立投資・一括投資の“とくい”と“にがて”を見ていきたいと思います。

















