最近よく目にするFIRE(経済的独立と早期リタイア)という言葉。会社に縛られない自由な生活に憧れる人は多いですが、その道のりは決して平坦ではありません。FIREを実現するには、何から始めればいいのでしょうか? 会社員生活から独立して、自由な生活を手にした投資家の遠藤洋さんに教えていただきます。

第6回テーマ

自分の会社を立ち上げて独立した遠藤さんも、最初から「稼げた」わけではなく、今に至るまでにいろいろな段階を踏んでいるはず。独立後、どのような働き方をしていたのか?

「実践! FIREへの道」記事一覧はこちら

過去の経験を生かし「業務委託」で収入を得る

遠藤洋
遠藤 洋
投資家
投資コミュニティixi主宰

前々回から前回にかけて、「写真配信サービス」のビジネスを始めるために自分の会社を起業して、勤め先の会社を辞めて独立するまでの話をしました。今回は、独立してからどうやって稼いできたかというお話です。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

退職前に会社を設立。基本は“スモールスタート”

前回、以下のように書きました。

新しいビジネスを始めるには、当然ある程度の初期投資が必要になります。その頃にはすでに株式投資をしていたので、投資で得たお金を会社の資本金にしました。仮に今すぐ会社を辞めて、数年間無収入になったとしても、なんとか暮らしていけるだけのお金はありました。

確かに、いざとなったら無収入でも生きていけるのですが、時間だけでなくお金の自由を手にするために独立したのですから、投資で得たお金を切り崩していくのは違うと思いました。独立したからには、自分のビジネスで食べていきたい。最低でも、事業のランニングコストを払えるくらいの売上や利益を上げられなければ、ビジネスを立ち上げた意味がないと考えました。

独立した当初に手がけていた写真配信サービスは、客単価が600円程度なので、ユーザーが増えていかなければ売上が立ちません。それでも、サービスを維持するために毎月の固定費がかかります。写真配信の売上だけでは固定費すら支払えない状況だったので、差し当たって月15万円ほどの収入が必要でした。時間に縛られない生活のために独立したのですが、最初のうちは自分の時間を犠牲にする必要がありました。

僕がやっていたのは「採用支援」の仕事でした。都心の一等地にある大手企業と業務委託契約を結んで、新卒採用の時期だけその会社に通って、採用の戦略を考えたり、実際に学生と面接をしたり、そんな仕事をしばらく続けることで、自分のビジネスを維持させながらなんとか食いつないできました。

なぜ採用支援の仕事をしていたかというと、以前の職場で新卒採用などの仕事を経験したからです。このように、会社員ではない働き方として、今までの仕事の経験を生かして個人として仕事をもらう方法もあります。会社員を辞めてから完全に独立するまでの段階として、自分の経験や能力を売り込んで、業務委託契約を活用するのもいいかもしれないですね。

東京・丸の内
東京都心の高層ビルにあるオフィスは眺めがよく、新鮮な経験だった(写真はイメージです)

毎月の給料がなくなるからこそ、危機感が行動につながる

会社を辞めてよかったことは、やはり自由な時間を持てることです。これだけで独立する価値があると思います。もちろん、独立してすぐの時期は売上も少ないので、何かしらのビジネスをして、お金を稼ぐために時間を割くことにはなりますが、ある程度収入のめどが立ってくると、今日は天気がいいから散歩しようとか、その日の行動を自分で決めることができます。会社員時代のように満員電車に乗らなくてもいいなど、日頃のストレスから解放されるのは大きかったですね。

一方で、会社員でなくなるデメリットもあります。いちばん大きいのは、社会的信用がなくなることですね。たとえばクレジットカードが作れなくなったり、不動産を借りることが難しくなったりします。会社員時代と同じくらいの年収があっても、所属先がなければローンが通りにくくなります。そうした不便が解消されるまで、独立してから3年ほどかかりました。

もうひとつは、やはり毎月の給料がなくなることです。独立して定期的な収入がなくなってしまうと、預金通帳の数字は減る一方です。ただ、減った預金額を見て、なんとかしなきゃという危機感が行動につながるという面では、決してネガティブなことばかりではないと思います。

預金通帳を見て心配する人
数字が増えない預金通帳を見たときの「やばい」という実感が、新しい行動のモチベーションになる

社会人経験がなくても、若くても起業できる

僕は会社員として4年間働いてきましたが、独立した当時を振り返ったときに、「もう少し早く会社を辞めてもよかった」と思うことがあります。会社員としての経験は自分にとって役に立ったのですが、会社員という状態での仕事と、独立した状態での仕事は、同じ仕事であってもまったく別物だということを実感しました。

僕は26歳のときに自分の会社を作りましたが、いろいろな若い経営者と話したりする中で、いちばん若い人は24歳でした。その人は大学生だったときに会社を作って、卒業せずに休学か退学をして、ビジネスをメインとした生活に切り替えました。今では毎日のように、客単価5~6万円のお店でおいしいものを食べているようです。そんな姿を見ると、社会人経験も必要なくて、若いうちにビジネスを始めるのもいいのかなと思いました。

「自分がいるべき場所」にいることが大切

以前にもお話ししましたが、とにかく大切なのは、自分が今していることの延長線上に、自分が望む未来があるという確信を持つことです。僕にとって、会社員時代にはそれがありませんでした。確かに会社員として働き続ければ給料は上がるし、成長もすると思いますが、その成長や変化の先に「希望」があるか。未来に希望がなければ、今を楽しく生きられない気がします。

お金も自由も手に入れるために起業、そして独立

会社を辞めて独立するかどうか、起業するかどうかは人それぞれですが、どんな状況であれ、「自分がいるべき場所にいること」が大切です。そこを間違えてしまうと、どれだけ努力しても望む結果は出ません。自分に合うポジションを見つけて、そこでがんばることが大事だと思います。

遠藤洋今回のポイント

  • 独立したからにはきちんと稼ぐ。最初は自分の時間を犠牲にすることもある
  • 毎月の給料がなくなることは独立のデメリットでもあり、行動のきっかけにもなる
  • 自分がいるべき場所とは、成長や変化の先に希望がある環境

ビジネスを軌道に乗せて、FIREを達成するまで

メルマガ会員募集中

ESG特集