ライフコースとは、人が一生の間にたどる道筋のことです。近年では価値観の多様化が進み、働き方や家族のあり方、老後の過ごし方など、多様なライフコースが描かれるようになりました。今回はそんなライフコースの多様化の現状を見てみましょう。
(1) 学歴―リカレントは減少傾向
リカレントとは、学校を卒業し就職したあとに、再び教育機関などで教育を受けることです。25~49歳の大学院修士課程の入学者数を見ると、2010年から2018年の間に、男性が1000人当たり3.40人から2.97人に、女性が3.01人から2.60人に減少。男女ともに減少傾向が見られます(図表1)。
ただし、2016年を底として、人口あたりの大学院入学者数はやや持ち直しの兆しも見えます。
【図表1】大学院修士課程の入学者数対人口比率(25~49歳)
出所:文部科学省「学校基本調査」、総務省統計局「人口推計」より作成
(2) 就職―転職者比率は上昇、勤続年数は40代で短縮化
転職者比率は、1992年から2017年の25年間で男女ともおおむね上昇傾向にあり(図表2)、平均勤続年数でみても40代では短縮化しています(図表3)。一方で、30代女性では平均勤続年数が延びており、結婚・出産を契機とした離職の減少傾向もみられます。
【図表2】転職者比率の推移
出所:総務省統計局「労働力調査」より作成
【図表3】正社員・正職員(大卒・大学院卒)の平均勤続年数
出所:厚生労働省「就業構造基本統計調査」より作成
(3) 結婚―晩婚化、再婚の増加、未婚率の上昇
直近(2017年時点)での平均的な初婚時期は男女ともに30歳前後となっています。細かく見てみると、男女とも半分以上は初婚時期が30歳未満ですが、一方で初婚が40歳以降なのは男性で1割強(39歳までに結婚した人の割合は89.9%)、女性で5%強(同94.8%)でした(図表4、5)。
1990年時点では、男女とも多くは30歳までに結婚(男性68.9%、女性88.8%)しており、初婚が30歳以降の女性は11%にすぎませんでした。この四半世紀で、女性の晩婚化が相対的に大きく進みました。
【図表4】夫の初婚時の年齢別構成比(累積)
出所:厚生労働省「人口動態統計」より作成
【図表5】妻の初婚時の年齢別構成比(累積)
出所:厚生労働省「人口動態統計」より作成
婚姻件数に占める再婚の割合もおおむね上昇しています(図表6)。再婚が増えているということは、必然的に離婚も増えていることになります。
【図表6】年次別婚姻件数に対する再婚の割合
出所:厚生労働省「人口動態統計」より作成
結婚しない人の割合は、過去20年で大きく上昇しています。生涯未婚率(50歳時点で結婚したことのない人の割合。「一生涯結婚しない人」の割合ではない)は、1995年から2015年の間に男性が9%から23%に、女性は5%から14%に上昇しました(図表7)。
【図表7】生涯未婚率・50~60代未婚率の推移
出所:厚生労働省「人口動態統計」より作成
(4) 出産―第1子出生時年齢は上昇、母は35歳以上が2割
初めて子どもを出産するときの父母の年齢(第1子出生時年齢)は、2017年時点では母30.7歳、父32.8歳で、1995年と比べると3歳ほど遅くなっています(図表8)。現状の日本社会では未婚での出産は例外的であることを踏まえれば、出産の時期は婚姻年齢により左右されるといえるでしょう。
【図表8】出生順位別にみた父・母の年齢
出所:厚生労働省「人口動態統計」より作成
第1子出生時の母の年齢が35歳以降であることは珍しくなくなりました。1995年時点では5%弱にすぎなかったのが、2017年には母親の5人に1人以上が、35歳を超えてから初めての出産を経験したことになります(図表9)。
【図表9】第1子出生時の母の年齢が35歳以上の割合
出所:厚生労働省「人口動態統計」より作成
夫婦間の子どもの人数は、妻の生年によらず「2人」が50%台前半を占めているものの、世代が若くなるほど「無子」「1人」の割合が高くなり、平均出生児数は減少しています(図表10)。
妻が1965~1970年生まれ(2019年時点で39~44歳)では、10組に1人が子どものいない夫婦(2017年時点)となっています。
【図表10】出生児数割合および平均出生児数(妻の生まれ年別)
出所:厚生労働省「人口動態統計」より作成
(次回は7月上旬を予定しています)