近年、新たな投資テーマとして定着してきている「ESG投資」。環境や社会に良いイメージがある一方、一部でその実態が疑われるケースもあります。ESG投資自体は将来性が期待できますが、投資信託を通じて投資する場合は、その中身を見極めることが大切です。本記事では、本当に買う価値のあるESGファンドを選ぶポイントを紹介します。
- 日本最大のESGファンドの純資産は1兆円。ESG投資への関心が高まっている
- 一部のESGファンドに、組み入れ銘柄が既存の投資信託と変わらないという批判も
- 運用成績やコスト、上位組入銘柄の企業名は投資信託の運用報告書で確認する
「ESG」の投資信託が人気を集めている
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance:統治・管理)を重視して行う投資のことです。従来、投資の指標とされていた財務情報だけでなく、社会に有益な活動をしているかどうかを基準とすることで、企業経営の永続性も評価できると考えられています。
環境、社会、ガバナンスのどれをとっても、昨今の企業経営で非常に重要なテーマであることは確かです。どれか一つでもおろそかにして問題が起きたとすれば、企業価値は大きく損なわれ、株価にも影響が出てくることでしょう。長期的に安定した経営を目指すなら、ESGに注力した経営が理にかなったものであるのは間違いありません。
近年は国連でSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、世界中で環境や社会のサステナビリティ(持続可能性)が重視されるようになっています。ESG投資はSDGs以前からあった投資手法ですが、SDGsが注目されるようになったおかげで、ESG投資にも追い風が吹いている状況です。
ESG投資は、個人投資家でも投資信託などを利用すれば簡単に始められます。ESGファンドの代表格である『グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし) 愛称:未来の世界(ESG)』は純資産総額が1兆円を突破し、日本の個人投資家の中でもESG投資への関心が高まっていることがうかがえます。
投資先は本当にESGに取り組む企業なのか?
近年、ESGをテーマにした投資信託が増加傾向にあります。しかし、その組み入れ銘柄に対して、一部で疑問の声が上がっている点も事実です。
ESGをテーマにした投資信託は、組み入れ銘柄が環境や社会、ガバナンスに配慮した企業であることが前提となっています。しかし、そのような基準で選ばれたはずのESGファンドの組み入れ銘柄が、結果的に既存のアクティブファンドと変わらないのではないかと一部で言われているそうです。
そもそも、ESGファンドはアクティブファンドに分類され、手数料などのコストはアクティブファンドの中でも比較的高い傾向があります。「実質的に既存のアクティブファンドと大差がないにもかかわらず、高い手数料を払ってまでESGファンドを購入する意味があるのか?」と考える投資家も実際に出てきています。
ESG投資は目先の利益より将来的なビジネス、企業の永続性を重視した投資手法です。長く続く企業は安定的な利益を生み出してくれるため、結果として株主は長期的に経済的恩恵を受けられることが期待できます。こうした理由から、本来であればESG投資は単なる社会貢献ではなく、投資する人にとって将来的な金銭的メリットも大きい投資手法であると考えられるでしょう。
目先の運用成果だけで既存の投資信託と単純比較はできませんが、もしも運用の実態がESGと関係のないアクティブファンドと変わらないようであれば、ファンドそのものに厳しい目を向ける必要があります。
コストや上位組み入れ銘柄を確認してから投資する
したがって、ESGをテーマにした投資信託を購入する際は、本当にコストに見合う銘柄なのか(つまり、ファンドマネージャーによってESGを基準とした銘柄選定がきちんと行われているか)を見極めて選ぶことが大切です。
「ESGファンドの投資先企業が本当にESGに取り組んでいるのか」を個人投資家がチェックすることは困難です。しかし、運用成績やコスト、上位組入銘柄の企業名は、運用会社のウェブサイトなどに掲載される運用報告書で確認できます。余裕があればぜひファンドの運用実態をチェックして、信頼できるESG投資信託であるかをできる範囲で判断して投資するようにしたいものです。