宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは、老後資金の準備をしないまま60歳を迎えようとしている方に向けた「今からでも始められる資産運用」です。

  • 地方ではお金や資産運用の情報に触れる機会が少なく、老後資金に無関心な人が多い
  • 60歳以降は「仕事の延長」を勝ち取るのが大事。そのうえで支出を減らしていく
  • 通信費や光熱費を削減しながら、退職金の一部を運用して収入の足しにする

老後資金に無関心なまま退職を迎える人も多い

【質問】
いや~参った! 定年退職で、退職の延長を言われたんだけど、給料は半減するし、どちらかと言うとしぶしぶとね……。いまさら別の仕事はないから延長を吞むしかないし、そうしたら年金までまだまだ5年もあるし、我慢して暮らすしか生きていかれんね。
今頃気付いても遅いけど、やっと、あんたが言ってた意味がわかったよ!

この言葉、まさに私の同級生が私に向けた生の言葉です。

今回は「老後資金が2000万円必要ですよ」と国が提言して、国民が老後資金について考えるきっかけになった、いわゆる「老後2000万円問題」について、地方で暮らすことのデメリットを踏まえながら「どうしたらいいのか? 退職に間に合うのか?」を考えていきます。

私は今までも一貫して、お金を増やすためには「時間と期間の大切さ」を言ってきたつもりです。相談者のように地方暮らしとなるとなおさらです。
地方では今も「地道に働き、地道に生活するのが一番」と格言のように語り継がれていて、実際にそう思っている方が大半です。もちろん地道に働くのはいいことですが、現実社会では、自分に残された時間を考えながら「賢く働き、賢く生活するのが一番」ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

学校教育で「お金の教育」がされないという日本の悪い面が、主に地方の町で強く出てしまっているのは残念でなりません。
私の住む、宮崎県は延岡市を例にあげて話をしていきます。延岡市は人口12万人弱の、製造業中心で栄えた市となるでしょうか。地場産業はまだまだこれからで、中小企業に務めるサラリーマン中心で成り立った町とも言えます。金融機関は地方銀行しかなく、お金や資産運用の情報が圧倒的に少ないのと、これは偏見と言われるかもしれませんが、商業都市ではなく製造業の街であることも、お金への関心が低くなるデメリットになっていると感じています。

古い工場
東京や政令指定都市のような都市圏と比べて、地方で暮らすのは資産運用の話題に触れる機会が少ないことがデメリットになる(写真はイメージです)

このような生活環境が、私の同級生やその他多くの地方で暮らす人の、資産運用への無関心を作ってしまっていると過言ではありません。資産格差の拡大が問題になっていますが、その要因のひとつとして、特に地方では、同級生のように自分の年金に無関心なまま退職の時期を迎えてあわててしまっている方が多くいるという現実があります。

私と同年代の人が65歳受給開始を知らなかった、ねんきん定期便も見ていない、スマホは使うがパソコンは持たず、ねんきんネットも使えないと言われても、正直に言うと、いくらなんでも年金に無関心で知らなすぎだと困惑してしまいます。だからといって「もう遅すぎだよ」ではなく、時間と期間に限りがある50代後半以降の世代が、これからやれることを考えていくことにします。

60歳以降は支出を節約しながら、増やすことも考える

私の同級生は、60歳からの生活資金について、まずは第一段階をクリアしてたのでホッとしました。給料が半減するとはいえ、仕事延長をつかみ取ることができたのは良かったと思いますよ。無収入ほど厳しい状況はありませんからね。

65歳からの収入が年金のみとなれば、とにかく将来の支出をどうするか考えることが先決です。毎日の生活費とともに、持家であれば修繕費や生活必需品の買い替えなどのお金が必要になります。65歳以降は、年金収入だけでは足りなくなるので貯蓄の取り崩しで補いながら、支出を節約するしかありません。
その一方で、仕事以外で収入を増やす方法も検討してみます。

退職後に困らなくてすむように、今からできるであろう検討項目を決めていきます。

収入を減らさない努力

まずは「収入を減らさない努力」です。60歳定年退職からの退職延長ということですが、収入減は紛れもない事実です。今から収入を大きく増やすことは、他に仕事を探さない限り難しいでしょう。

ただ、年金受給が開始する65歳までの5年間にお金を有効に活用する方法として、つみたてNISAの利用と、来年度からのiDeCo活用第38回参照)も可能となります。貯蓄の取り崩し(支出)を振り分けて、一方は生活費などに使い、もう一方はつみたてNISAやiDeCoで貯めるといいと思います。収入が減った分、別口で少しでも増やす努力は必要なことです。

60歳直前のiDeCoは「暴落に備える短期運用」

65歳で退職するときに十分なお金があれば、65歳以降の年金受取時に受給開始を繰り下げて、年金額を増やすこともできます。70歳受取への変更なら年金は約1.4倍になり、一生涯続きます。

面倒と思わずに行動を起こすことが、自分の利益につながることを忘れないでください。できれば長く働いて、収入を確保できると安心です。まずは65歳までの仕事延長を勝ち取りましょう。

支出を減らす努力

そして大事なのが、支出を減らす努力です。これは、できることからまず始めてみましょう。
手っ取り早いのが、①スマホやインターネットの通信費の見直し。そして②電気、ガスなど光熱費の事業者の変更。さらに③住宅ローン残額が多くあれば、ローンの見直しがあります。④生命保険の見直しも検討してみるといいでしょう。

①通信費と②光熱費は、用途に合ったプランや事業者を選べば支出を大きく減らせることがあるので、絶対条件です。
また、細かいことですが、クレジットカードの作りすぎにも注意が必要です。1年間は無料で2年目からは有料は当たり前ですので、最低限のカード利用を心がけましょう。

通信費
インターネット回線やスマートフォンの通信費は、プラン変更などで大きく減らせる可能性がある

③ローンの見直しですが、退職金を使っての住宅ローン返済に関しては、過去に借り換えなどしているなど見直しの経験があれば、返済は慎重に検討するべきです。今の貯蓄や金利水準からしても、退職金を返済に充てるよりは、退職金を投資で運用して老後資金を育てる方が有利だと考えています。虎の子の退職金を、有意義な使い方で育ててみましょう。

④生命保険の見直しについては、国民健康保険の高額療養費や傷病手当金、障害年金を生かして、今必要な保険のみに絞ることで、支出を減らせるかもしれません。

そして最後に、自分にとっての楽しみに使うお金の見直しですが、私はできれば、楽しみのための支出を減らすことはお勧めいたしません。自分の楽しみまで取って、毎日の生活ができるとは思ってはいません。
ですが、自身の終活は自身のお金でやることが、自分や家族にとって最大の終活であることを忘れないでください。

今回は、私の同級生の定年時に起こった事案を例に、老後資金の準備と資産運用について考えましたが、心がけることは全年齢同じです。自分にとって、今何ができるのか? 考えるだけでなく、行動を起こしてみましょう。お金の心配をせずに楽しむことができる老後を目指しながら、賢く生きましょう。