宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、値上がりした株式を売るべきか、持ち続けるべきかを迷っている投資初心者に向けて、株式投資の心構えをお伝えします。

  • 投資信託は「ほったらかし」でもいいが、株式投資はそうとは限らない
  • 株価は投資家の心理によっても大きく変動する。下げはあっという間
  • 株式運用では、ある程度上がったら売却するなどの「決め事」が大切

投資信託は「ほったらかし運用」で良い

【質問】
いくつか日本株を持っています。知っている企業だったので、つぶれることはないだろうと深く考えないで、配当利回りが高いものを買っています。今は調子がいいのですが、株の場合は儲かったら売ることも必要でしょうか? それか、投資信託のようにそのまま放置してもいいのでしょうか?

今回は、「株式投資と投資信託の違い」にスポットを当てて、質問者の疑問について考えていきます。

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すでに株式と投資信託の両方を運用されている方は違いをわかっているかと思いますが、初めて株式を購入する方だと、そうはいかないでしょう。
投資信託では「ほったらかし運用」でも良いのですが、株式投資でも通用するのでしょうか?

最近、初めて投資信託を購入するという主婦の方から相談があり、「リスクがあるのはわかるけど、具体的なことは難しすぎて資料を見てもわからない、でもやってみたい」という言葉がありました。家庭をやり繰りしている主婦の方の大半は、「家のことだけでも考えることは山ほどあり、資産運用まで手が回らない」のが本音でしょう。
将来のために投資信託を運用するのなら、踏み込むべき方法は1つしかありません。「買ったらほったらかしにすれば良い」のです。

もちろん商品選択は必要ですが、商品が決まって、一度買ったら「ほっとく」という割り切りが必要です。彼女から「小田さんの『ほっとけばいいんですよ』に後押ししてもらいました」と言われて、「ほったらかしにすれば良い」は魔法の言葉なんだと実感できる機会となりました。

米国では、子供の頃から家庭などで「お金の話」をする機会が多いのですが、家でも学校でもほとんどお金の教育をしない日本では、格差社会が広がるばかりです。お金や資産運用の話を、特に地方では多くの人に伝えるべきだし、伝えなければ日本国民の心と暮らしは豊かなものにはなっていかないでしょう。お金の運用は、生活の手段としてみんなが積極的に活用すべきだと思います。

ただ、株式投資では、投資信託を運用するのと同じことが必ずしも当てはまるとは限りません。株は怖い、金持ちだけができるもの、そう思っている方々がいまだに多いのも事実です。
ここからは、初めて株式投資にチャレンジしていくなかで、実践すべきステップを考えていきたいと思います。

株価は「投資家の心理」の変化で大きく下がることもある

まず、株式投資を行ううえでの重要な知識として、株の基本的な役割や、株価がどのようにして決まるかなどを確認していきましょう。

1つの株を買うことは、企業の成長にいっしょに参加することであり、出資したお金の分だけその企業を所有していることになります。
企業は「株式市場」を活用して投資家からお金を集めています。株取引では売り手と買い手の両方が存在し、両者が価格で合意したときに初めて売買が成り立ちます。その仲介を行うのが証券会社です。

株価が決まるのにはいろいろな要因があります。企業が利益を上げているか、成長しているか、経営体制は盤石か、大口株主はどんな方がいるのか、などが評価されます。企業の分析についてはアナリストなどの専門家がレポートにまとめて、投資家にアドバイスを行っています。レポートの中には一般向けに有料で公開されているものもあります。「売った方がいい」「そのままでいい」「買った方がいい」などのアドバイスをもとに、一般の投資家も、投資信託を運用するプロの投資家も、株をどうすべきかを判断します。

また、株価が決まる要因には企業の利益などとは別の大きな要素として、「経済成長しているか?」「財政赤字はどうなのか?」「インフレ懸念はないか?」「雇用は順調か?」などの、社会全体の動向もあります。

しかしながら、私が重要視しなければならないと考えているのは「投資家の心理」です。人間の心理が市場に影響を与え、株価の上げ下げに影響を与えていることが大きいと感じています。

投資信託はさまざまな業種の株式の集合体ですので、株価の影響は分散されますが、株式投資では単一企業の株価で利益や損失が決まるので、短期的な値動きの影響は大きくなります。
大きい情報に対してパニックになり、過剰反応を起こしやすいのが人間の心理です。企業に関する悪い話を聞くとみんながあわてて株を売って、株価が大きな下げに転じることもあります。株価が上がるのには時間はかかりますが、下げの時間はあっという間です(笑)。

悪いニュース
悪いニュースを見て、みんなが不安になって株を売れば、株価は短期間で一気に暴落してしまう

値上がりしたら解約して、利益を確定させる

私がこれまで個別株式で投資した企業でも、2~3日で株価が20%下落するなど普通にありました。最悪の場合は、上場廃止などで取引停止になることもあります。株価が下がると気が滅入ってしまうのも人間で、いかに自分の精神をコントロールするかは、成功や失敗の経験を積むことでようやく身に付くものだと思います。

精神のコントロールに慣れていない株式投資の初心者は、まず決め事として、たとえば10%利益が出たなら解約手続きして、値上がり益(キャピタルゲイン)を確定させるなどします。保有継続による配当(インカムゲイン)も欲しいところですが、まずは株式投資で「益」を目指すのが先決です。勝ち癖ではありませんが、益を出すことが、これからの株式運用にプラスの心理を必ず植え付けてくれるはずです。

投資信託はほったらかしでも益が増え続けるのを期待できますが、投資家心理が反映されやすい株式運用では、投資家から見放されて売られた株が、再び上がるまで長い時間がかかることもあります。二度と上がらないかもしれません。益が出たらすぐに確定させることも必要となってきます。

一方で、10%値上がりしていても「もっと上がるかも」と思って売らずにいたら、急に暴落して、益どころか損が出てしまうこともあります。上値を望んで失敗してしまうのも株式投資なのです。忘れないでください。

ところで、株価の予測にはチャートを使った「テクニカル分析」という方法もあり、米国を中心に発展してきました。このテクニカル分析も、株価の変化から相場を読むというより、投資家心理の変化を読むことを真髄として作成されているのだそうです。

どちらにしても株式投資は、投資信託と違って株価や世の中の動きを常に見続ける必要はあるものの、上がるときは投資信託より大きく上がります。余裕資金で投資をするのに、最善の方法の一つになると信じています。

次回も株式運用について考えていきます。

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