宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に引き続き、株式投資のテクニカル分析を学びます。前回までは移動平均線など「トレンド系」の指標を取り上げてきましたが、今回は「オシレーター系」といわれる、株式の買われすぎ・売られすぎを測る指標についても見ていきます。

  • 日米とも株価の上昇トレンドが終わり、慎重に「買い場」を選ぶことが重要になった
  • 相場の方向性を見極める指標がトレンド系、買い場を探る指標がオシレーター系
  • 短期と長期で傾向が変わるので、運用期間を決めたうえで2種類の指標を見ていく

上昇トレンドからの転換で慎重な投資行動が必要に

【質問】
NISAを使ってネット証券で積立投資を始めて3年で、お金が少し増えてます。これだったら、残りのNISA枠で米国などの株を買えば、まだまだ増えていくのかと思うのですが、この考え方間違っていますか?

今回も前回に引き続き、日本株や米国株に投資するタイミングについて考察します。

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上昇? 下落? 移動平均線で株価の相場を読む

第116回から始まった株式講座ですが、主に投資初心者に向けて株式の購入方法、購入のタイミングなどについて話してきました。勘違いしてほしくないのは、これはあくまで株式を購入するにあたっての「入り口」であることです。買った後、保有するか売却するかといった先のことは、トレンドラインやチャートや移動平均線などの間にさまざまな関係が出てくるので、それから先は独自で、参考書などで勉強して欲しいと思っています。

例えば、移動平均線を利用してトレンド転換や売買シグナルを見極めていく王道として、短期と長期の移動平均線で見極める「ゴールデンクロス」は上昇のサインで、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けた時。逆に「デッドクロス」という下降のサインは、反対に短期の移動平均線が上から下に突き抜けた時です。このように、調べなければいけない基本はたくさんあります。

ただ基本は基本でしかなく、上手くかみ合わない場合があるのも株式投資だと思っています。特に、米国株式市場はインフレ真っただ中で上昇相場が継続中でしたので、移動平均線も短期、中期、長期とも上向きのトレンドを示していた銘柄が大半となり、ある意味成功しやすかったのもあります。

しかしこれからの株式投資は、米国ではハイパーインフレからの脱却に向けた政策金利下げと、経済成長を重視しながらのインフレ抑制など、バランスの転換に動きつつあります。日本とは言うと、デフレ脱却を加速させるための利上げなど、本来ならばインフレを容認しながら経済成長を促したいはずなのに、株価と為替への影響も見ながら、政策金利上げには慎重にならないといけないというジレンマに陥っています。

米国と日本で双方の政策が真逆となるなど、どちらにしても株式投資ではより慎重に行動をしなければないのが今の状況です。今回はテクニカル分析にある「2つのグループ」の特徴を見ながら、株式投資の成功を導くための方向性を考えていきます。

「トレンド系」と「オシレーター系」

テクニカル分析とはそもそも、過去の値動きの傾向をもとに計算したトレンドなどの指標によって値動きを予測する手法になります。

前号までに話してきたのは「トレンド系」といわれる指標で、相場の方向性をトレンド判断で見極めるものです。これに対して「オシレーター系」は、トレンド系でつかみきれない細かい買い場や売り場を探るものとして大別されます。おのおのの手法の得意分野を知り、トレンド系とオシレーター系を組み合わせて使うことで、自分自身で使いやすい有効な分析法を得るのもいいでしょう。

トレンド系のおさらいをすると、代表は①ロウソク足、②トレンドライン、③移動平均線、④一目均衡表など、相場の方向を見ていくものです。一目均衡表とは、過去の統計に基準を設け、相場の転換点を予測するものです。計算方法は複雑なので省かせていただきますが、特徴的な「雲」の帯を使って傾向を探ることができます。雲自体を抵抗線・支持線として、株価が雲を突き抜けると支持線を下抜けることになり、もう一段の下落の予想で売りとなります。逆に株価が雲を突き抜けると抵抗線を突破でさらに大きく上昇が予想され買いとなります。

一目均衡表
一目均衡表では「雲」と呼ばれる帯を使って、株価のトレンドを予測する

「オシレーター系」の代表格として、以下のものがあります。

❶RSI(相対力指数)……上昇幅と下落幅の比較によって「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を見る
❷ストキャスティクス……今の株価が過去の反動幅のどこにあるか(買われ過ぎ、売られ過ぎ)を見る
❸MACD……移動平均線から算出した2本の線で、トレンドの変化を見て転換点を把握する。そういう意味でMACDはトレンド系とも言えます

2種類のテクニカル指標で「買い場」かどうかを探る

私の場合は①②③をメインにして、❸❶❷そして最後に④と確認しています。ただ、短期か長期かでチャートと移動平均線のトレンドも変わってきますので、運用期間をはっきりとしたものにして分析する必要があります。

【図表】ルネサスエレクトロニクスの株価のロウソク足と移動平均線
(2024年6月3日~9月3日)
ルネサスエレクトロニクスの株価のロウソク足と移動平均線(2024年6月3日~9月3日)
※RSIや一目均衡表などの指標は、例えば日経電子版の「スマートチャートプラス」や、ネット証券の取引ツールなどで確認できます

ここでルネサスエレクトロニクスのチャートを参考に見てみましょう。9月3日付終了時点、期間3か月の日足で移動平均線5日(短期)、25日(中期)、75日(長期)を見ると、移動平均線は株価と短期線は小康状態、中長期線はまだ下落のチャートでは?と分析できます。

❸❷は買われ過ぎのサイン、❶はやや売られ過ぎの中間となっています。④も雲の流れに沿った雲下にあり、結果、短期的なトレンドではまだ買えないというサインが出ていると言えます。ただ中長期だと、チャートと移動平均線はやや上昇トレンドが継続しており、オシレーター系でも「売られ過ぎ」が勝っています。

株価の買い場を探るうえで、買う銘柄が確定している状態では短期トレンドを重要視すべきだと思いますので、今は待つのが賢明でしょう。

次回は、まとめとして相場のサイクルと、失敗リスクを抑えるための心構えについて考えていきます。

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