「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回のテーマも前回に引き続きREIT(不動産投資信託)。今回は「決算」に注目してREITの活用法を探ります。

  • J-REITの決算月は年2回が多く、時期も企業と違って銘柄ごとにばらけている
  • 決算月の異なるREITを6本持てば、分配金を毎月受け取ることも可能に
  • REITの決算月と分配金が支払われる時期は異なる。値動きのリスクにも注意

皆さん、こんにちは。酷暑お見舞い申し上げます。

参議院議員選挙が終わりました。多くの政党や多くの候補者が訴えたのが「減税」でしたね。
減税により税収増にならなければ、国債の発行に頼ることになります。国債の増発は物価高につながると思います。物価高ということは「お金の価値が下がる」ということ。

アート投資を資産形成に!

では「お金の価値を維持する」、つまりインフレ対策のためには?
この問いに対する答えは「換金しやすく、かつ、姿や形が変わりにくい物」を持ち続けることですね。この答えを実現するための選択肢の一つに、NISAの利用がありますね。

さて、本稿でもNISAの利用の一つとしてREIT(日本のREIT=J-REIT)をとりあげます。

個人では難しい不動産投資もREITなら実現可能?

上場企業の決算月に注目

本稿では、決算月に注目したいと思います。上場企業の決算は3月に集中しているのではないでしょうか?

よく3月になると、「年度末」なんて言ったりしますよね。上場企業のおよそ60%が3月決算です。そのためか、6月の特に後半の頃になると「株主総会の日程が集中している」とも言いますよね。
株主総会が6月に集中するのは、「定時株主総会は決算から3か月以内に行うこと」という趣旨の決まりが会社法にあるからです。次いで多いのが「年末」、つまり12月決算ですね。その割合は、およそ15%くらいです。つまり、上場企業のおよそ4分の3が、3月決算と12月決算なのです。

REITの決算月は?

まず上場企業が「1年決算」なのに対し、REITの多くは「6か月決算」です。上場企業の中には「中間配当」を出す企業もありますが、REITは決算の期間が短いためか、中間配当はありません。ちなみにREITにも「1年決算」がありますが、やはり中間配当はありません。

本稿の執筆を機に、改めてREITの決算月を調べてみました。3月決算(=9月決算)のREITが少ないのが意外でした。上場企業を意識しているのでしょうか……? 上場企業の決算が3月と12月に集中しているのに比べると、REITの決算月が、結構バラけているのが分かります。

【図表】J-REITと上場企業の決算月別割合
J-REIT
1月・7月 14社
2月・8月 15社
3月・9月 3社
4月・10月 8社
5月・11月 10社(うち2社はインフラファンド)
6月・12月 10社(うち2社はインフラファンド)
12月のみ 1社
6月のみ 1社(インフラファンド)
上場企業
3月 60%程度
12月 15%程度
それ以外 25%程度

※2025年7月時点

決算月がバラける……決算月の分散にどんなメリットが?

では決算月がバラける、つまり「決算月の分散」に、どのような意味があるのでしょうか?

決算月の異なるREITを6本持てば、事実上、毎月決算のようなイメージになります。そしてREITは決算後に投資主総会(=株主総会に相当)を経て、分配金(=配当金に相当)の支払いとなります。つまり毎月、分配金を受け取れるイメージですね……ということは、夢の家賃収入が実現する可能性がある、ということです。

REITの分配金の原資は、REITが保有する不動産から得る家賃や地代収入、物件の売却代金です。

決算月と分配金の留意点

なお、「決算月=分配金受取日」ではないことに留意しなくてはなりません。
先述のとおり、決算を経て投資主総会後に分配金が支払われるというスケジュールです。例えば、ある2月(=8月)決算のREITの場合、2月決算の分配金を受け取れるのは5月16日です。

もし、REITの分配金を当てにして、例えば旅行を予定を組むとか、ご自身がお持ちの不動産の固定資産税の支払いに充てるなどの計画がある方は、スケジュールに十分、留意しましょう。

まとめに代えて

REITをたくさん保有し、また決算月を上手に分散できれば、夢の家賃収入、そして夢の家賃生活が実現するかもしれません。

中には、特に年金を生活の主たる収入源にされている方は、分配金の支払い月を奇数月にしてREITを保有することを検討されていらっしゃる方もいるでしょう。インフレ対策も期待できますし、年金は偶数月の15日に受け取りですからね。
しかしREITは株式と同じく東京証券取引所に上場しています。上場株式と同じようにリスク資産の一つであることは肝に銘じておかなくてはなりません。