「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回のテーマも前回に引き続きREIT(不動産投資信託)。今回は、REITの負債が固定金利か変動金利かに着目して、REITの特色について見ていきます。
- 個人の住宅ローンは変動金利が多いが、金利が今後も上がる可能性も考えたい
- 一方のREITは負債の90%ほどが固定金利で、「固定金利が当たり前」と言える
- 固定金利かつ自己資本比率も低くないREITは「金利の上昇に弱い」とはいえない
マンションの分譲価格の上昇が止まらないようですね。東京都心部では中古マンションの15.5%が「億ション(=1億円以上のマンション)」という報道も流れています。
筆者が驚いたのは価格だけではありません。これだけ「円の金利は、今後も上がり続けるかも」と言われる時代にあって、「変動金利を利用する人の割合」が圧倒的に多いことです。
個人が組む住宅ローンの金利は「変動金利」が常識?
国土交通省住宅局住宅経済・法制課が令和7(2025)年3月31日に発表したプレスリリースを引用します。
個人向け住宅ローンの新規貸出における金利タイプ別割合は、変動金利型の割合が継続的に増加し、最も高い(84.3%)。
個人が組む住宅ローンの金利は「変動金利」が常識といっても良いでしょう。
冒頭にも述べた通り、日本の金利の上昇は、遠い将来も行われても不思議ではありません。住宅ローンの返済期間は35年、中には50年に及ぶ長期の借入もあるようです。
ということですと、15年後や25年後の金利の情勢を見据える必要があるのではないでしょうか?
REITは「固定金利」が当たり前
一方でREITの借入金利は固定金利が当たり前です。
REIT銘柄 | 固定金利比率 |
---|---|
野村不動産マスターファンド投資法人 | 85.4% |
日本ビルファンド投資法人 | 86.9% |
オリックス不動産投資法人 | 90.7% |
産業ファンド投資法人 | 91.8% |
※2025年9月16日時点における公開情報
表は各投資法人サイトに載っている情報です。表ではREIT(=投資法人)4つだけ載せていますが、固定金利の比率が低いREITでも85.4%、高いREITですと91.8%が固定金利です。
なおインターネットで検索したり、AIなどに問い合わせると、「REITの借入金の固定金利比率は平均90%」という回答を得ることができました。REITの借入金は固定金利が当たり前と言い切ることができそうです。
「REITは金利の上昇に弱い」とよく言われていますが……
REITの魅力は何と言っても、利益の90%超を分配することで「分配した利益は非課税」になることです……つまり利益を内部留保せず、投資主(=株主)に分配金として還元するということです。
この「配当性向の高さ」こそが、「長期保有を前提にしたNISAに向く」と言われる所以です。しかし、この魅力も同時にREITの弱点とも言われています。
REITそのものを成長させるためには、内部留保ではなく、外部からの資金調達、つまり借入金などを利用することになります。そのため「REITは金利の上昇に弱い」とよく言われています。
しかし、前号でご確認いただいたとおり、意外と自己資本比率が高く、「借入金に依存している」わけではありません。そして本稿でご確認いただいたとおり、REITの借入金の、そのほとんどは長期金利です。
ですので、REITが「無防備に金利の上昇に晒されている」わけではないことも、併せて留意しても良いと思います。