テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのクかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第70回は、「ミュージックフェア」や「ラブミュージック」などの脚本を手掛けてきた、放送作家の大野ケイスケさん。

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「生かされている」放送作家

大野ケイスケさんの写真
大野ケイスケ
放送作家
日本放送作家協会会員

「放送作家」になって(してもらって)四半世紀が経とうとしていますが、「お金」にまつわることは大変難しい問題です。放送作家協会をはじめとする、諸先輩がた、そして先人のかたがたのご尽力によって、「放送作家」という職業が確立され、私はその恩恵にあずかって「生かされている」わけで、お仕事がなければ、なんでもないただの人ですし、だからこそ一生懸命やらなければならないのですが、それが「お金を稼ぐこと」を目的としているかというと、そういう意識は希薄かもしれません。

お世話になった方は、枚挙にいとまがありませんが、私を「放送作家」にしてくれた師匠といえる方がお二人いて、どちらも気前がよく、そして良い意味でお金に無頓着でした(どちらも「Mさん」なので「M1さん」「M2さん」とさせていただきます)。

お二人とも、お金に関しては「金なら、なんとかなる」という考えの持ち主でした。他人に迷惑をかけるようなことは一切ありません。

M1さんは、まとまったお金が入った時は、家賃を何ヶ月分も先払いし(マンションの大家さんが魚屋さんで、お店に現金で持っていく)、当時は珍しく高額のコンピューター(大型)を買って試行錯誤し、おそらくお金がない時は、ひたすら自宅で読書をして原稿を書いていました。

お金がないイメージ
二人の師匠はどちらも気前が良く、良い意味でお金に無頓着だった

M2さんは、都心のど真ん中にある昭和初期に建てられた集合住宅に住み(すきま風がすごかった)、映画でしか見たことがない国産の旧車と古いアメリカンバイク(しょっちゅう故障する)に乗っていて、おそらくお金がない時は、家の改修と、車とバイクの修理にいそしみ、ビデオで何本も映画を観てコントのネタを考えていました。

「世の中を楽しくする」という使命

「放送作家とお金」について、お二人と話したことは一切なく、とにかく「なんとかなる」のだなあと、その姿を見て漠然と思っていました。

「金なら、なんとかなる」の意味は、「いつかの仕事のために、自分が興味あること、好きなことを常に勉強して、常に楽しいこと、楽しくなることを考えていれば、いつしか仕事の依頼がきて、お金は自然と入ってくる」ということだと勝手に考え、なんとなく見習ってきたような気がします。

私は放送作家の仕事をはじめたと同時に結婚をしたのですが、家族で暮らすための家計としては不安定で、およそ計画的とは言えず、それは今も同様で、妻も子供も、うちは「お金がある時」と「お金がない時」がある、という一般的なご家庭とはかけ離れた共通認識を持ちつつ(持たされつつ)、なにより私が「楽しそうに仕事をしているか?」を第一に思っているようで、「金なら、なんとかなる」の精神は、本意ではありませんが、ぼんやりと受け継がれてしまっているのかもしれません。

もちろん、お金を稼ぐことはとてもとても大事なことで、放送局や関連会社、最終的にはスポンサーに利益をもたらすという大きな使命を果たすための一員であることは理解しているつもりです。

しかし、そんな少々浮世離れした、「生かされている」大人としての自覚を持ちながら、多くの人に楽しいテレビラジオ配信動画、胸躍るライブやイベントをお届けして、少しでも世の中のお役に立てるよう、一生懸命考えて、考えて、楽しく、楽しんで、精一杯仕事をしなければと思っています。

仕事を楽しむイメージ
仕事に向かうときは、一生懸命考えて、楽しんで、精一杯やりたい

以上を踏まえて、

楽しく生きて、楽しいことを考えるためのお金を稼ぐことができれば…… というのが、放送作家としての私の、お金に対する考えです。

ちなみに、高校生になった息子の将来の夢は「公務員」です。

次回は、放送作家の藤井青銅さんへ、バトンタッチ!

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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