どんな場面でも常に高いリターンを上げられる金融商品はありません。どんな金融商品にも必ず「得意な局面」と「苦手な局面」があります。現役証券アナリストの佐々木達也さんが、今人気の金融商品や注目セクターの「とくい」と「にがて」を徹底分析する連載。第11回のテーマは、米国とイスラエルによるイランへの攻撃を契機に、価格が不安定な状況となっている「原油」への投資です。
- インフレヘッジに利用される原油投資。イラン攻撃で価格が急上昇し注目が高まる
- 原油先物価格への連動を目指すETFや、石油元売り会社などの株式を通じて投資
- 地政学リスクの高まりは価格が急騰する要因に。景気拡大・後退にも連動しやすい
米国・イスラエルのイラン攻撃の影響で、ホルムズ海峡の運航が妨げられ、原油価格のマーケットの注目度が急上昇しています。
原油は「経済の血液」とされており、私たちの生活に最も密接に関わる資源の一つです。ガソリン代や電気代、プラスチック製品の価格に至るまで、原油価格の動向は産業や家計に直結します。ただ、投資対象としての原油は、株式や債券とは全く異なる値動きをすることもあり、なじみの少ない方も多いかもしれません。
今回は、原油投資の仕組みと、その「得意」と「苦手」な側面を詳しく解説していきます。
「原油投資」とは何か?
一般的に個人投資家が「原油に投資する」と言った場合、実際にドラム缶に入った原油を買い取って保管することはほぼ不可能です。しかしインフレ局面におけるリスクヘッジや、資産運用のポートフォリオの分散先として、個人投資家のみならず機関投資家にとっても無視できない存在となっています。実際の原油投資は、未来の値段と期日を決めて売り買いする「先物」などを通じた取引が主流となっています。
注意したいのは「原油価格は世界一律ではない」という点です。原油は採掘される場所によって品質が異なり、地域ごとに取引の目安となる「指標」が存在します。
WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)
米国産の軽質油で、ニューヨーク市場で取引されます。世界で最も流動性が高く、ほぼ24時間取引されているため、投資信託や機関投資家の多くがこのWTIを指標としています。

北海ブレント
英国やノルウェーなどの北海で採掘される原油で、欧州市場の指標です。
ドバイ原油
中東産原油の指標で、アジア市場における価格決定の基準となります。
なお、ホルムズ海峡など中東での緊張が高まった結果、アジアの依存度が高い「ドバイ原油」が現状で突出して値上がりしています(下図参照)。米国指標のWTIなどの上げ幅を大きく上回っており、今回のリスクが「世界全体の需要増」ではなく、特定地域の「供給不安(地政学リスク)」に由来していることが価格からも見て取れます。

原油に投資する方法
実際に原油先物などへ投資するには、WTIなどに連動するETF(上場投資信託)や、原油の値動きに業績が関連する個別株式などに投資する方法があります。
ETF(上場投資信託)
東証に上場している「WTI原油価格連動型ETF」などを通じて、株と同じ感覚で売買する方法です。少額から投資でき、最も一般的です。
『WTI原油価格連動型上場投信』(1671)や『NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信』(1699)などが売買高や純資産総額も大きく、機関投資家なども利用しています。
石油関連企業の株式
エネルギー価格に業績が連動しやすい石油元売り会社や開発会社の株を買う方法もあります。原油先物価格が上昇する局面で株価も上がりやすくなります。LNGや天然ガスなど、その他の変動要因もある点には留意が必要です。
CFD(差金決済取引)
証拠金を預けて売買の「差額」のみを決済するCFDを利用した投資もできます。レバレッジをかけられるため、資金効率が良くなります。また、売りのポジションを取ることもできるため原油価格下落でも利益を得ることができます。
他の方法に比べてリスクが高くなるため、投資経験の長いベテランの方以外にはおすすめできません。
原油投資の得意な局面・苦手な局面は?
原油投資がその真価を発揮するのは、まさに今のような「地政学リスクの高まり」と「インフレ局面」です。
ホルムズ海峡の緊張や産油国の政情不安は、供給が止まるという恐怖を市場に植え付けます。株式が「先行き不安」で売られる一方で、原油は「物理的に手に入らなくなる」という予測から価格が急騰します。
また景気が力強く回復し、物流や製造が活発になる「景気拡大期の初期」も、実需に基づいた買いが入りやすく、得意としています。
一方で、原油が明確に弱さを露呈するのは「世界的な景気後退(リセッション)」です。景気が冷え込めば、工場の稼働が止まり、物流や航空機の動きも鈍ります。原油は「使ってナンボ」の実需に基づいた商品であるため、需要が減ると価格は容赦なく下落します。
長期的な視点では、電気自動車(EV)の普及や再生可能エネルギーへのシフトといった「脱炭素」の潮流も大きな逆風です。
原油投資の手段
- 原油価格の代表的な指標である「WTI」への連動を目指すETFを活用
- 石油の元売り会社や開発会社など、原油価格が上昇する局面で値上がりしやすい企業の株を買う
- CFD(差金決済取引)では売りから入れるため原油価格の下落局面でも利益を得られるが、証拠金取引のためリスクが高い
原油投資の得意な局面・苦手な局面
- 米国・イスラエルのイラン攻撃など産油国をめぐる地政学リスクが高まる局面では、原油の供給が止まる懸念から価格が急騰しやすい
- 景気拡大期の初期も、物流や製造の活発化を見込んだ実需により原油は買いが入りやすい
- 逆に、景気後退局面ではエネルギーの需要が鈍り、原油価格は下落しやすい
- 長期的な「脱炭素」の潮流も原油価格を押し下げる可能性がある
次回(4月7日公開予定)は、全自動で投資・資産運用ができるサービスであるロボアドバイザー(ロボアド)の“とくい”と“にがて”について見ていきます。















