パーキンソンという認知症が進み、いきなり要介護4の認定を受けた私の父親は、当時73歳でした。体重が30kg台まで減りミイラのような様相で緊急病院に運ばれ、胃ろうが施されることになり、ベッドに括りつけられた状態でしたが、これ以上病院にいても治る見込みはなく、(病院としても迷惑なので)早く退院してほしいと告げられました。

そんなわけで、これまで札幌市の自宅マンションで知らず知らずのうちに介護をしてきた母親も、胃ろうという医療行為ができるわけでもなく、自宅で父親と暮らすのはもはや不可能だと悟りました。さぁ、どうしようかと母親と話しましたが、選択肢は1つ、「介護施設に入る」しかありません。

周りに似たような境遇の知人もいません。ケアマネジャーさんや病院では、こんな施設、あんな施設が選択できると伝えてくれますが、結局、決めるのは家族です。特別養護老人ホームで空いているところは、自宅からはとんでもなく辺鄙(へんぴ)な場所ばかりで、早速、候補から外れてしまいました。看護師がいる有料老人ホームを無難に探すことになりました。

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入居一時金で変わる施設のグレード感

他の地方都市も同様だと思いますが、札幌市も周辺の地域から高齢者が介護を理由に、施設に引っ越してくる動きが目立っています。雪国の暮らしをご存知の方はお分かりかと思いますが、戸建てに住む高齢者世帯が冬を越すのは結構サバイバルです。有料老人ホームもそれなりに増えています。リーズナブルなところからハイグレードなホームまで幅もあります。その傾向は、入居一時金の違いでだいたいわかります。というのが、いくつかの有料老人ホームを見学した母親の感想です。

入居一時金が100万円程度の施設は、2階建てのこじんまりしたところが多く、アットホームなのですが、独特の施設臭があり慣れない方には抵抗感を覚えてしまうところもあります。入居一時金が1000万円に近くなると、ホテルライクな外観で部屋のつくりも瀟洒(しょうしゃ)です。どっちも違うなということから、母親が選んだのは、川沿いに立つ10階建ての大型施設で、要介護・要支援はもとより、そうでない方も暮らせるオールラウンダーなホームです。部屋も予算などに応じていろんなタイプがあります。父親が入った部屋は入居一時金500万円。それ以外に月々20万円ほどかかります。

この施設では日々催しものが用意されており、健康体操、囲碁・将棋、生け花、俳句など楽しみがいっぱいです。でも、父親はどれも参加できませんでした。もはや、自分なりの思考で何かをやり遂げるには難しいのです。テレビも見ません。多少は歩くことはできたので、館内を徘徊するのが持て余す時間を使う唯一の行動だったかもしれません。

時間のある母親も、結局は父親の様子が気になってか、ほぼ毎日、施設の部屋で父親と一緒にいました。レクレーションに積極的な入居者がいるなかで、そんな二人の様子を何度か見ていると、施設における孤立感が悲しく思えるものです。

トラリピインタビュー


どのような介護施設を選ぶべきか、経験や情報が少ないと判断は難しい

次第に胃の機能が衰えた父は、胃ろうでの栄養さえ摂取しづらくなり、病院に移送され、20日後に亡くなりました。回復の見込みのない父親にとって2年ほど過ごした施設は、ホスピスとも言えます。お金を取り崩しながら、ほとんどベッドに入るだけだった2年を思うと、施設のサービス内容は十分すぎました。退室する際に戻ってきた入居一時金は200万円。2年で300万円分の一時金を支払ったことになります。

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