投資信託の中には、分配金を毎月支払うことを目指す「毎月分配型ファンド」(または毎月決算型)と呼ばれるものがあります。分配金が出れば、その分だけ投資信託の基準価額は減ることになりますが、同じ資産に投資する毎月分配型ファンドであっても、分配方針の違いによって基準価額の値動きも異なる場合があります。
- J-REITが投資対象の毎月分配型のインデックス型ファンドで分配方針を比較
- ボーナス分配を出すファンドの基準価額が比較的高くなった
- 累計の分配金額がほぼ同じでも、分配方針によって基準価額の値動きが変わる
今回は、毎月分配型ファンドの分配金の出し方による、基準価額に与える影響についてみていきます。
例として取り上げるのは、J-REITを投資対象とするインデックス型ファンドになります。
J-REITに投資するファンドを事例として選んだ理由は、銘柄数が60銘柄と少ないことと、インデックス型ファンドでは銘柄ごとの時価総額に応じて全銘柄に投資しているので、比較がしやすいと考えたからです。
3つの分配金の出し方
一般社団法人投資信託協会が提供している「投信総合検索ライブラリー」で、以下の条件で検索しましたら、6つのファンドが検索されました。(ファンド名は伏せます。興味ある方は、検索してみてください)
不動産投信/日本/インデックス運用/毎月分配/運用期間10年以上
それぞれのファンドの目論見書をみますと、分配方針に大きく3つのパターンがありました。
分配方針2:原則として、配当等収益を中心に毎月安定した分配を継続的に行うことを目指します。
分配方針3:毎月の安定した収益分配に加え、6カ月に一度、売買益(評価益を含む。)等から収益分配を行うことを目指します。
分配方針1では、決算期間に得た配当などの収益に加えて、値上がり益も加味して分配金額を決定しますので、比較的高い分配金利回りが期待できます。
分配方針2は、配当などの収益を中心に分配金額を決定しますので、1万口当たりの分配金も分配方針1に比べ少ない傾向があります。分配金利回りも分配方針1と比較して低めになります。
分配方針3は、毎月の分配の原資は、分配方針2と同じなので分配方針1と比べて少なくなりますが、年2回のボーナス分配月には売却益(評価益を含む)を加味しますので、その月の分配金は多くなり、年間の分配金額では分配方針2よりも多くの分配金が期待できます。
検索された6つのファンドについて
検索された6つのファンドのそれぞれの設定時期(発売時期)は、2003年が1本、2004年が4本、2012年が1本でした。
2012年のファンドが、分配方針2のファンドにあたります。このファンドは、1回目の決算から現在まで分配金額を変更せず、基準価額は約20,000円と設定時を大きく上回っています。
残り5つのファンドのうち、1つが年2回ボーナス分配を出す分配方針3のファンドであり、4つが分配方針1のファンドでした。
その中で興味深かったのは、分配方針1の配当などの収益と値上がり益を加味して分配金を出すファンドの中で、累計の分配金額が最も多い(約14,700円)ファンドの基準価額が約2,000円(2023年8月22日現在)に対して、分配方針3の毎月の分配を抑えてボーナス分配を出すファンドの基準価額が約8,000円でありながら、累計の分配金額(約14,000円)を比べると数百円の違いしかなかったことです。
直近の基準価額 | 分配金の累計 | |
---|---|---|
ファンドA (分配方針1) |
約2,000円 | 約14,700円 |
ファンドB (分配方針3) |
約8,000円 | 約14,000円 |
分配金の水準を低く抑えたファンド(累計の分配金額も少ない)の基準価額が高くなるのは、ある程度理解できますが、累計の分配金額がほぼ同じでも分配金の出し方によって基準価額が大きく変わるのは、私としては予想外の結果でした。
まとめ
毎月分配型のファンドは、投資元本が増えづらい(目減りしやすい)ということで、新しいNISAの成長投資枠でも投資対象から除外されています。しかし、今回検索されたファンドの実績を見ますと、分配金をある程度の水準(当期の利益以内)に保つことや、ボーナス分配して通常月の分配金額を少なくする方法で、設定当初より基準価額の上昇や値下がりを抑えることが期待できることがわかりました。
この結果を見ますと、「毎月分配型ファンド=運用資産を取り崩すファンド」という画一化した考え方は、かえって運用の選択肢を狭めてしまうかも知れません。
※ただし、上記の結果は将来も保証されているわけではありません。