資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。

  • 長期投資は短期的に値上がりが見込みづらい株でもじっくりと持ち続けられる
  • 投資初心者は短期投資で失敗したときに焦りやすく、投資判断に時間をかけたほうが良い
  • 初めての人は、まずは半年〜1年程度の中長期投資から始めてみては?

長期投資or短期投資、よくある疑問だが正解はない

今回は投資の時間軸のお話をしたいと思います。

よくある株式投資にまつわる疑問として、「長期投資と短期投資はどちらが良い?」というものがあります。最初に結論をお伝えすると、これについては実は正解はありません。

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それぞれのメリット・デメリットについて考えていきたいと思います。

短期投資のメリット・デメリット

短期投資は、まさに短期で株を売り買いし、値上がり益を狙う手法です。株を買ったその日に売る「デイトレード」や、数日〜2週間程度の期間で取引を行う「スイングトレード」などの手法があります。

デイトレードの場合、取引を1日で手仕舞うため株の持ち越しリスクを負わない点がメリットとなります。例えば金曜日の取引終了後、土曜日に海外で大きなリスクイベントがあり、月曜日の株式市場が大幅安で始まったとしても株を持ち越していないので安心できます。

ただし、取引1回あたりの利益は長期投資に比べると当然ながら少ないので、コツコツと利益を積み上げるスタイルです。相場時間中に取引できる人やじっくりと利益を積み上げられる方向きの手法といえるでしょう。

スイングトレードは、デイトレードよりもやや時間軸の長い取引手法です。日中相場を見る時間を取ることが難しいサラリーマンなどの短期投資にも向いています。

取引回数が多くなる短期投資では、資金を効率的に使える一方で、取引の手数料が長期投資よりかさむデメリットもあります。そのため、証券会社によっては一日定額制や一定回数までの取引を定額とする手数料プランもあるので活用をおすすめします。

短期投資のメリット・デメリット
メリット ・デイトレードは株の持ち越しリスクを負わない
・売買の頻度を高めることで資金を効率的に使える
デメリット ・取引1回あたりの利益は長期投資より少ない
・取引回数が多くなるので手数料がかさむ

長期投資のメリット・デメリット

決まった期間はありませんが、およそ1年以上株を持ち続ける場合を長期投資と呼ぶことが多いようです。長い場合は保有期間が10年以上になることもあります。

長期投資のメリットは、時間軸を長く取ることができるので、短期的に値上がりが見込みづらい株であってもじっくりと持ち続けることができる点です。短期投資の場合は、どうしても値動きの軽い株を選びがちですが、長期投資では値動きはあまりないけれども優良な株を安値で買ういわゆる逆張り投資にも向いています。成長する株を長期保有できたときのリターンは、他の金融商品にはない株式取引の魅力の一つです。また、配当や株主優待によるインカムゲインを狙った投資も長期投資が有効です。

デメリットとしては、時間軸が長くなると値上がりする時は良いのですが、値下がりした場合はその分損失も大きくなることが挙げられます。値下がりした株を売ることができずにずっと保有したままになってしまう、いわゆる塩漬け株となるリスクも短期投資よりは高くなります。そのため、値上がりを期待して買った株が思惑が外れたことで見切る「損切り」も大切です。

長期投資のメリット・デメリット
メリット ・短期的に値上がりが見込みづらい株でもじっくり持てる
・成長する株を長期保有できたときのリターンが大きい
デメリット ・時間軸が長くなる分、値下がりした場合の損失が大きくなる
・塩漬け株となるリスクが高くなる

投資初心者はまずは半年〜1年程度の中長期投資から検討

このように短期投資、長期投資どちらもそれぞれメリットやデメリットがありますので、どちらが良いとは一概に言えません。ただ、投資初心者の方は、いきなり短期投資で失敗したときの焦りが出やすく、投資判断もある程度の時間をかけた方が良いでしょう。まずは半年〜1年程度の中長期投資から始めてみてはいかがでしょうか?

また、投資の時間軸はあまり途中で変更することはおすすめできません。短期のスイングトレードのつもりで買った株が値下がりしてしまうことはよくあることですが、だからといって長期投資に切り替えて長く持ち続けるのは、塩漬け株になりやすい投資行動といえます。値下がりしてしまった株を売って損失を確定させるのは、精神力の必要な嫌なことでもありますが、適切な時期に適切に損を出せるようになることは投資家として必要な条件です。

今回は投資の時間軸についてご紹介しました。お話した投資の期間はあくまでも一例ですので、慣れてきたらご自身の性格や投資のスタイルにあった方法を探してみてください。

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