宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に引き続き、株式投資のテクニカル分析を学びます。今回は株価の目先の変化を示す「ロウソク足」に加えて、一定期間内の変化を示す「移動平均線」の使い方について見ていきます。

  • 株価は一定の法則性のもとに動くと言われ、「三段高下の法則」などの考え方がある
  • 移動平均線が並ぶ順番や値動きの向きによって、上昇相場か下降相場かを読み取る
  • 上昇から下降、下降から上昇に転じる相場でも移動平均線の動きには特徴がある

下落トレンドに入ったら簡単には上昇に転じない

【質問】
NISAを使ってネット証券で積立投資を始めて3年で、お金が少し増えてます。これだったら、残りのNISA枠で米国などの株を買えば、まだまだ増えていくのかと思うのですが、この考え方間違っていますか?

今回も前回に引き続き日本株、米国株について考察していきます。

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ロウソク足から株を買うタイミングを測る

米国株、日本株とも経済の先行き不透明感などから、相場のトレンドはいよいよ下落に転じ始めたようです。日本に関してはアベノミクス相場からの13年弱、長期にわたって上昇相場が形成されたものが、ようやく調整相場に入っている途中なのと理解しています。お金をじゃぶじゃぶ使って株価の上昇を促す景気政策(アベノミクス相場)の反動は、当たり前の結果だと思います。

前回からルネサスエレクトロニクス株も下げトレンドに入っていますが、問題は株価がどこで落ち着き底値を形成し、上昇に転じるかです。これから投資家は買い場を探ることになりますが、下落トレンドに入った相場は簡単には上昇に転じないものです。予想よりも長く続く傾向にあることをご理解ください。

特に今回の下落トレンドには為替と政策金利、そして地政学リスクなどが背景にあり、これらの状況を注視している政府、日銀とも、株が暴落すれば利上げに慎重になるとの綱渡り的な金融政策でもあるので、政策にも不透明なところが多く、株価への影響がどうなるのか定かではありません。

そしてここにきての天災、南海トラフ地震注意報発令です。地元延岡でも大きな横揺れを感じ、恐怖を覚えた次第で、当分は日本株は買えないかなと思っています。

株価の法則性に注目

調整は短期で終わるのか、半年以上続くのかは分かりません。チャート分析の考え方では、相場の基本習性には例外はあるものの、ほとんどの株価は上下動を繰り返しながら、ある一定の法則性のもとに動いていると言われています。日本では「三段高下の法則」、米国では「エリオット波動の法則」という、一種の波動理論による考え方です。

三段高下の法則

三段高下の法則は「上昇相場、下降相場とも3つの段階を経て、1つのサイクルが終わりを迎える」というものです。

すなわち上昇相場は底、第1段上げ、調整安、第2段上げ、調整安、第3段上げ、天井となり、下降相場は天井、第1段下げ、反動高、第2段下げ、反動高、第3段下げ、底という行程を繰り返すと言われています。

【図表1】三段高下の法則のイメージ① 上昇相場
三段高下の法則のイメージ① 上昇相場
【図表2】三段高下の法則のイメージ② 下落相場
三段高下の法則のイメージ② 下落相場

エリオット波動

この法則にさらに説明を加えたのが「エリオット波動原理」です。株価には波動があって、大小のサイクルがある。その中で、大きい下降波動の1サイクルは、下降5波と上昇3波から成り立っていると言っています。

この法則からすると、下げはまだまだ収まっていない事になります。まだ慎重にことを運ぶべきでしょう。

移動平均線は短期、中期、長期の3本がある

今回は「移動平均線」について解説していきながらチャートの行方を見ていきます。

移動平均線とは、株価の一定期間の平均値を連続して計算し、株価チャート上に表したものです。一般的に、期間の異なる「短期線」「中期線」「長期線」の3つの平均線を描き、その向きや振り幅、そして株価との位置関係などから、株価のトレンドや売買のタイミングを推測するものです。

移動平均線はロウソク足チャートと併用するのが一般的です。今は金融機関や金融情報のホームページなど、各社ともチャート情報が充実したものになっていますので、確認しながらどうやって使えば良いのかを理解していればいいと思います。

株価と移動平均線との間には、基本的な考え方があります。それは、相場が安定しているとき、①上昇相場では下から「長期線、中期線、短期線、株価」と並び、反対に②下降相場では「株価、短期線、中期線、長期線」の順に並びます。相場は①と②が繰り返されながら動いていくわけです。

そして、まさに今の相場状況ともいえる、上昇相場から下降相場に移行する際には、以下の①から⑤の順に転換していきます。

①下から「長期線、中期線、短期線、株価」。株価だけ先行下落
②下から「長期線、中期線、株価、短期線」。株価が下落、短期線が次に下落
③下から「長期線、中期線、株価、短期線」。中期線が下落。株価および短期線も下落
④下から「株価、短期線、長期線、中期線」。長期線が最後に下落、中期線も下落
⑤下から「株価、短期線、中期線、長期線」

このような順番で、全てにおいて下落の完成になります。株価が先行、次に短期線、中期線が動いて、最後に長期線が続くことになります。

逆に上昇が始まるサインは、最初に下から株価の上昇で始まり、最後に長期線の上昇で、最終的な上昇相場になっていきます。全体的な流れを見るには、日足よりも週足チャートと移動平均線がいいと思います。

【図表3】ルネサスエレクトロニクス(6723)の株価(週足)
ルネサスエレクトロニクス(6723)の株価

ルネサスエレクトロニクスのチャートを参考に見てみると、8月9日付け、期間2年の週足と、移動平均線を5週(短期)、25週(中期)、75週(長期)とすると、上記③の行程、下からの短期線の下落までになっての下落途中と考えられますので、チャートからはまだ下落途中と言えるのではないでしょうか。

あとは移動平均線で重要な「グランビルの8つの法則」に当てはめながら買い場、売り場などを画策していきます。今回は基礎的な移動平均線と株価の関係に視点をおきますので、グランビル法則は割愛させていただきます。

以上になりますが、テクニカル分析には相場の方向性を見る「トレンド系」のロウソク足とトレンドライン、移動平均線などと、相場の変化を見る「オシレーター系」とに区別されています。次回はオシレーター系について考えていきます。

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