テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのクかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第71回は、作家・脚本家・放送作家・作詞家と肩書が多すぎ、オードリーのオールナイトニッポンでおなじみの藤井青銅さん。

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「面白い」はむつかしい

藤井青銅さんの写真
藤井青銅
放送作家
日本放送作家協会会員

放送作家というのは、なにか面白いことを考えたり書いたりしてお金が儲かる商売でしょ? 「楽チンでいいよなあ」……と多くの方が思うのではないか?
一般社団法人・放送作家協会員の8割がそう思って仕事を始めた。あと1割は他に出来ることがなくて、残りの1割はなんとなく始めた(※諸説あります)。

私も8割のクチだ。ところがどうだ。現実は、そうカンタンには儲からないのだ。
なぜだろう?
放送作家の仕事を図解してみる。
私だってもう40年もこの仕事をやっていれば、すべての仕事が「儲かる」とは思わない。私が「面白い」と思うものの一部がお金になるんだろう。つまりはこういうことだ。

放送作家の仕事の図
自分の「面白い」と、放送作家の「儲け」の関係

ちなみに、「面白い」というのは笑いとは限らない、泣けるのも、感動も、学びも、ワクワクも、くだらないも……みんな「面白い」だ。
だから、この「面白い」と「儲かる」の重なり部分を多くしていけばいい。簡単なことだ。優秀な作家はたぶんみんなそうやっている。
私がちっとも儲からないのは、重なり部分が少ないせいだ。

優秀な放送作家とダメな放送作家の比較の図
左=優秀な放送作家/右=駄目な放送作家(藤井青銅)

これはつまり、「私が面白いと思うものと世間が面白いと思うものの重なりが少ない」ということだ。
たとえば、私は以前『東洋一の本』という本を書いた。これは古い世代ならよく聞いたことがある「東洋一の~」というフレーズについて、
「東洋一の基準は何だ?」
「そもそも、東洋ってどこなんだ?」
ということを考え、調べ、書いたもの。とても評判がよく、いろんな書評に取り上げられた。結果的にこれがキッカケで国語辞典に「東洋一」という項目を載せた(それまで、なぜか載っていなかったのだ)。だが、本はサッパリ売れなかった
私の「面白い」と、世間の「面白い」の重なりが少なかったということだ。
私の仕事にはこのパターンがとても多い。

数少ない逆のパターンが、腹話術のいっこく堂だ。私はかつていっこく堂の脚本を書いて、演出をして、プロデュースをしたことがある。一緒にラスベガスにも行った。いっこく堂が大ブレークしたのはご存知の通り。これは、私の「面白い」と世間の「面白い」がピッタリ重なったということだ。

どちらのケースも私にとっては同じ「面白い」なのだが、世間の反応はまったく違っていた。「面白い」はむつかしいのだ。

ポートフォリオ作家宣言!

私の肩書は「作家・脚本家・放送作家」となっていることが多い。作詞家が加わることもある。
作家としての本は小説もエッセイ・コラムも、『東洋一の本』みたいな歴史・文化ウンチク本も書く。
各種放送脚本・台本はもちろん、イベント、コンサートの台本も書く。
さらに落語脚本も書くし、腹話術脚本も書く。ラジオのパーソナリティもやる。
よく人に「藤井さんはなにがやりたいんですか?」と呆れられるが、答えは「どれも面白そうだから……」なのだ。

ところで、資産管理はリスクヘッジを考えて、現金、預金、株式、債券、不動産、貴金属などに分散させろという。「ポートフォリオ」だ。
私には分散管理するほどの資産はないが、この考えはよくわかる。つまり、放送作家というのは不安定な職業だから、リスクヘッジを考えて、放送台本だけでなく、本や、作詞や、舞台や……いろいろなことをやっておけ。それぞれの「面白い」と世間の「面白い」との重なりは少なくても全部合わせればなんとかなる、ということではないか?

放送作家のポートフォリオの図
放送作家の仕事のポートフォリオ

どうだ。みごとなポートフォリオではないだろうか? 
これからは新しい肩書で「ポートフォリオ作家」と名乗ろう!
もっとも、古い言葉で「貧乏ヒマなし」というのもあるが。

次回は放送作家の高山省吾さんへ、バトンタッチ!

是非読んでください!

一芸を究めない」(春陽堂書店)という本を出しました。私がこれまでに経験した放送・芸能・出版の世界のエピソード……などエンタメ世界の話です。

「一芸を究めない」の本 表紙

有名な役者、歌手、タレントなどのお名前がいっぱい出てくるので芸能ゴシップ本風ですが、そうではありません。たんに出来事だけでなく、その時に感じたこと、考えたこと、そしてエンタメを作るというのはどういうことか? つまり、人が生きるとはどういうことかについて書いているわけで、これは「芸能本」ではなく「ビジネス本」でもなく、「人生本」になりました。

タイトルの「一芸を究めない」は、実は40年来、私が座右の銘にしている造語。つまり「ポートフォリオ」だ。いつか本のタイトルにしようと温めていました。その意味は本のまえがきに書いています。そこから編集者が抜粋して、帯に書いてくれました。

「一芸を究めない」の本 帯

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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