現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第82回は、牛丼チェーンの「すき家」や「なか卯」、回転寿司チェーンの「はま寿司」などの人気外食チェーンを手がけるゼンショーホールディングス(7550)をご紹介します。
- ゼンショーの売上高の3割がすき家、2割がはま寿司。海外への出店も積極的
- 食材の原材料の調達から製造、物流、店舗での販売まで自社で一貫して企画・運営
- 株価は12月に上場来高値を記録。値上げによる増収を株式市場は好材料視
ゼンショーホールディングス(7550)はどんな会社?
ゼンショーホールディングスは外食事業を主力とし、丼ぶりチェーンのすき家、なか卯、ファミリーレストランのココス、回転寿司のはま寿司などの外食チェーンを運営しています。グローバルの売上高の約3割がすき家、2割がはま寿司となっており、日本国内のほか北米や豪州、アジアでも積極的に海外展開を進めています。その他にもスーパーマーケットチェーンや介護事業なども手がけています。
同社は1982年、創業者の小川賢太郎代表取締役会長兼社長によって設立されました。当初は資本金500万円を元手に小規模な弁当店からのスタートでした。社名のゼンショーには全部勝つという意味の「全勝」、善なる商売の「善商」、禅の心で行う商売の「禅商」という3つの意味が込められています。牛丼の「すき家」を軸に店舗展開を進めていき、2000年代に入ってからはM&A(合併・買収)を軸にさらに事業の拡大を進めました。
独自のMMDビジネスモデルを展開
同社の強みはMMD(マス・マーチャンダイジング・システム)と呼ばれる独自のビジネスモデルです。MMDとは、食材の原材料の調達から製造、物流、店舗での販売まで自社で一貫して企画・運営する一連の流れを指します。
調達ではグループ全体で購買を一括することにより、スケールメリットを生かしています。コストダウンだけでなく生産者との連携も密に行い、品質の保持に努めています。例えば米や野菜の栽培では、農薬や肥料の使用状況など管理状況の調査にも気を配るなど、独自の安全基準を設けています。
また、食材の製造では全国32カ所のグループ自社工場で、日々の販売量を予測し、最小限の量を可能な限り新鮮な状態で店舗に配送し、在庫や物流コストの無駄を省いています。さらに遺伝子レベルでの研究開発を進めており、良質で安定生産を目標とした食材の研究開発に取り組んでいます。
ゼンショーホールディングス(7550)の業績や株価は?
ゼンショーホールディングスの今期2025年3月期決算は売上高が前期比12%増の1兆800億円、営業利益が16%増の625億円を見込んでいます。現在、国内では129店舗、海外では1321店舗となっており、海外を中心とした新規出店を加速させる見通しです。
足元では、「グローバルはま寿司」などのセグメントで好調が続いています。はま寿司は、国内では他の回転寿司チェーンよりも安価な価格設定なども売り上げ増につながっています。また、寿司に加えて麺類やデザート、ドリンクなどのサイドメニューも充実し、客単価増に寄与しています。海外では寿司の持ち帰りなども伸びています。
1月6日に発表された12月の月次既存店売上高は17%と好調でした。とくに客数は4%増となった一方で、客単価12%増と値上げによる増収が続いています。11月には「すき家」の牛丼の価格を10~50円値上げしました。値上げは今年2度目となり、株式市場では収益改善につながるとして好材料視されています。
1月10日の終値は8567円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約86万円、予想配当利回りは0.8%です。
株主優待は毎年3月末、9月末時点の持ち株数に応じて、同社の店舗で利用できる食事優待券がもらえます。店舗で利用しない株主には、各ブランドの食材のセットなどとの交換も可能です。
株価は上げ下げを繰り返しつつも、着実に下値を切り上げる堅調な展開です。24年12月6日には上場来高値9749円まで値上がりしたのち、いったんは落ち着いています。注力する海外ではインバウンドによる口コミ効果もあいまって日本食ブームが加速しており、円安も業績の追い風となって、新規出店による業績拡大が続きそうです。