「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、非課税で投資できるNISAの投資先の候補として、「賃上げ」をテーマとした銘柄選びについて考えます。

  • 日銀がYCCの柔軟化を宣言して金利が上昇。国内経済への懸念が残る
  • 賃上げの流れに乗って、投資先を「平均年収の高い企業」の中から選ぶという考え方
  • 賃上げは今のところ大企業のみだが、投資でその恩恵を受けることもできる

日本の今……円安と物価高で海外旅行は夢に

先月、日本銀行の総裁がYCC(イールドカーブ・コントロール=長期金利から短期金利まで、金利全体の動きをコントロールすること)運用の柔軟化を宣言しました。YCC柔軟化の宣言を予告するかのように、個人向け国債の10年変動物は金利が上がっていました。今月は、先述の個人向け国債の10年変動物が0.39%、同固定5年物は0.14%です。いずれ、預金金利も上昇し、「コンマ以下、いくつゼロが続くのか」という状況を脱するかもしれません。果たして、リスクを取って投資する必要があるのでしょうか?

日本銀行
金融緩和から徐々に金融引き締めに向かう日本銀行。それは本当に適切な判断なのか?

YCC柔軟化宣言と相前後して、WEB上で賑わったのが某政党女性議員によるフランス研修でした。それなりに妙齢の議員先生方が幼いポーズの写真を撮ってSNSに上げたり、その写真を観て、庶民が批判を繰り返したり……筆者は「まさに平和の象徴だなぁ、長閑だなぁ」などと独り言ちながら眺めておりました。しかし、批判の中で気になったのは「国民は円安に物価高に喘ぎ、海外旅行どころではない」というコメントです。日本史上、海外旅行がブームになった時期もありましたが、やはり、今の日本は国内経済という視点でも、金融(為替)という視点でも、海外旅行は縁遠くなってしまったんだなと、まざまざと感じざるを得ませんでした。

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こんな時にYCCを撤廃し、マイナス金利を解除したら、「物価高や海外旅行の難しさ」という為替の点は解消するかもしれません。つまり、今よりも円高になる可能性がありますから。しかし、国内経済という点では、いかがでしょうか?

かつて、海外のどこの国に行っても「ショッピングに勤しむ日本人がいる」などと言われたものですが、最近では「一生に一度のハネムーンですら、欧州なんて、夢のまた夢です」という言葉を聞きます。こんな日本だから、こんな日本の経済の現状だから、(お金の出所はともかく)研修先ではしゃぎまくる国会議員の先生方と、批判する庶民という絵ができてしまうんでしょうね……。しかし、このような経済情勢で、こんな日本で果たして、YCCを撤廃し、マイナス金利を解除しても、良いものなのでしょうか?

フランス旅行
円安と物価高で、庶民にとってフランスを旅行するのは難しくなった

人を羨む前に……羨望の的を我が物に!

国会議員は報酬のほかに、先述の研修なども含め高待遇なのは国民に広く知られたところです。上級国民などという皮肉もありましたよね。そして、福利厚生も含め高待遇なイメージが強いのが、やはり上場企業です。

筆者はかつて上場企業(=親会社)の子会社に勤めていました。親会社と子会社とで、福利厚生を含め待遇に大きな違いがあることには驚かされました。もっとも、親会社の「課長の座席と机」が(筆者の勤めていた)子会社では「部長の座席と机」と同じ規格だったことには笑ってしまいましたが。

今年こそ、賃上げの動きがあるようですが、日本は失われた平成の30年の間、賃金が上がらず、先進国はもちろん、一部の新興国よりも低い賃金なのは、やはり国民に広く知られたところです。だからこそ、先述の国会議員たちの海外研修とそれを批判する庶民という図が描かれてしまうのですが。

そこで、投資先を「平均年収の高い企業」の中から選ぶという考え方です。雇用される人の平均年収は2021年度で443万円です。その平均年収をはるかに凌ぐ年収を従業員に払っている企業です。

「平均年収が高い会社」ランキング全国トップ500(東洋経済オンライン)

やはり商社が多いのは予想通りでしたが、銀行や保険会社がないのは筆者にとっては意外でした。

年収が高ければ従業員のモチベーションも高いと思われますし、企業も従業員を大切にしている裏付けでもあります。まさに「企業は人なり」です。モチベーションが高い従業員が支える企業ですので、将来の伸びを期待することができそうです。

まとめに代えて

「投資はギャンブル」という人がいますが、否定できません。「未知の未来への投資」ですから、確かなことといえば、「リスクがある」ということだけです。

ところで、企業と私たちとの関わりは「消費(=客)」と「労働(=職場)」です。そこに「投資(=株主になる)」という視点を加えてみてはいかがでしょうか? 年収が高い従業員が支える企業の成長、つまり株価上昇や配当金等の恩恵を受けるという考え方です。

なお、冒頭に書いたマイナス金利解除の大きな要件に「賃上げ」があります。筆者も読者も収入が増えれば良いのですが、もともと高年収の企業の賃金だけがさらに高くなり、結果として日本の「賃上げになり、マイナス金利を解除する」のでは、やるせないと申しますか、残念なだけです。

上を見ればキリがありませんが、投資という機会があります。この機会を活かすか否かです。

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