現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第84回は、水道管やガス管の製造や管理で日本の重要なインフラを古くから支え続け、近年はDXを活用した製品の展開を進めている日本鋳鉄管(5612)をご紹介します。

  • 日本鋳鉄管の主な事業は水道管・ガス管製造で、「ダクタイル鋳鉄管」に強みを持つ
  • 価格競争に陥りやすい業界の中で、DXを活用した製品やサービスに活路を求める
  • 耐用年数を超えた水道管が多く残っており、更新の需要による株価上昇に期待

日本鋳鉄管(5612)はどんな会社?

日本鋳鉄管は水道管・ガス管製造を主な事業として展開しており、東証スタンダード市場に上場しています。JFEスチールが発行済み株式数の約3割を保有する大株主です。特にダクタイル鋳鉄管と呼ばれる製品に強みを持っています。

ダクタイル鋳鉄管とは、球状黒鉛鋳鉄とも呼ばれる素材で作られた鋳鉄管のことです。従来の鋳鉄管に比べて優れた強度と耐久性を持ち、曲げや引っ張りのストレスに対しても高い耐性を示します。そのため、水道管やガス管といった重要なインフラにおいて広く利用されています。その他に、鋳造技術を活かした鉄蓋やガス用ポリエチレン管も製造・販売しています。

同社は1937年に東洋精機株式会社として創業しました。以来、地方自治体などを顧客とし、日本の水道インフラの拡大、管理を支えてきました。

水道管
水道やガスという重要なインフラを支える鋳鉄管(写真はイメージです)

DXを活用した付加価値のある製品に強み

水道管業界は均一規格の商品での競争となるため差別が難しく、価格競争に陥りやすくなっています。また、水道インフラは人口減少に伴う水道料金の収入減で財源が不足しています。さらには水道管路を整備する事業体、工事業者ともに現場の技能者の高齢化により、人員やスキルを持った技能者の不足が課題となっています。

こうした中で同社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した製品展開を進め、強みとしています。

例えばプリセット接合工具の「楽ちゃく」は、手軽に時間をかけず、ワンタッチで埋設管と新設管の接合作業が可能となります。AI(人工知能)による管路の診断サービスでは、漏水調査や修繕工事などの維持管理情報をAIに学習させることにより、精度の高い管路の劣化予測サービスを提供しています。

トラリピインタビュー

その他、GPS地図に連動したマンホール蓋の点検・調査DXアプリなども展開するほか、ドローンを活用した水管橋点検の実証実験なども進め、水道インフラ管理の省人化や効率化に貢献しています。

日本鋳鉄管(5612)の業績や株価は?

日本鋳鉄管の今期2025年3月期決算は売上高が前期比0.8%増の170億円、営業利益が43%減の4億3000万円を見込んでいます。1月末の24年4~12月期決算と同時に今期の業績見通しを下方修正しました。物価や人件費の高騰に伴い、水道事業体の布設延長工事が減少している点などを織り込みました。

2月7日の終値は1296円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約13万円、予想配当利回りは1.93%です。株主優待は現時点では実施していません。

【図表】日本鋳鉄管の株価(2013年~2025年2月7日、月足)
日本鋳鉄管の株価(2013年~2025年2月7日、月足)

主力のダクタイル鋳鉄管は、同社の創業以来、日本の高度成長とともに国内各地で布設が進められてきました。こうした中で、法定耐用年数である40年を超えても未更新の管路が多く残っています。同社によるとこうした管路の更新率は年間わずか0.75%に過ぎず、更新が必要なすべての管路を置き換えるには100年以上が必要になるとしています。

また、1月末に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故もあり、水道インフラの可及的速やかな更新は急務との認識が広がっています。東京都は2023年に90年計画で浄水場の更新工事を開始しました。

株価は1月の八潮市の陥没事故を受けて水道工事関連銘柄に資金も入り、短期で反騰ムードが強まっています。しかし1990年のバブル期の上場来高値8790円には遠く、月足ベースでも2024年7月の高値2177円を大きく下回っています。足元の業績低迷は株価に織り込みが進み、PBR(株価純資産倍率)は0.4倍台と解散価値の1倍を大きく割り込んでいます。

水道インフラは息の長い更新需要があることから、さらなる業績悪化の可能性も低いと見て、ここからの株価上昇に期待したいところです。