宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマも「利回り」。以前にご紹介した「商品別利回りランキング」を受けて、今回は「外貨預金」の利回りの考え方と注意点を見ていきます。

  • 今なら円の1年定期預金は0.55%に対し、外貨預金なら4%の金利が期待できる
  • 外貨預金の利回りを求めるには税金、換金手数料と為替レートを考える必要がある
  • 外貨預金で実際に金利分の利益を得るには、米ドルなら3円ほどの円安ドル高が必要

金利だけを比較すると、外貨預金はお得に見える

【質問】
こんなに物価も上がってきてたいへん。お金を増やすのにはリスクは当たり前のことじゃけど、金利も上がってきたから、定期預金も良いちゃないですか? 安心、安全パイだし。

今回も「利回り」をメインにして金融商品を見ていきます。
相談室第147回で紹介した、主な商品の中で利回りが2番目に低いと思われる「外貨預金」で考えます。

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金融商品選びの注意点と利回り商品のランキング

利回り商品ランキング

①債券 10,000円~(1%~)
②外貨預金(米ドル) 30,000円~(3%~)
③不動産投資 30,000円~100,000円(3%~10%)
④投資信託 30,000円~150,000円(3%~15%)
⑤株式投資 マイナス~300,000円(~30%)

外貨預金とは、円を外国の通貨に交換して預金することを言います。国内が超低金利でも影響されることなく、外国の金利が適用できます。

他国の金利も、経済状況(インフレ、デフレ)などによって決められていくものです。例えば、現状の日本では、銀行に100万円預ける場合、1年定期預金で0.55%の金利で、税込み(所得税などが引かれる前)の利息は5,500円。米国だったら、100万円を1年間預けると、約4%の金利が付いて、税込み利息40,000円。

他国と比較すると、これだけ利息の差が出てきます。金利だけを比較すると、円の定期預金より外貨預金が7倍以上も高くお得に見えます。
「えっ!こんなに違うの! なら、やった方が絶対いいじゃん!」と思うはず。しかしながら、そうでない事実も出てきます。

外貨預金は税金以外に換金手数料、為替リスクもある

外貨定期預金をする場合は、通貨を換金(解約)するときに手数料を取られるし、国内定期預金と同じく利息の約20%が税金として持っていかれます。
NISA商品ではないので、税金は普通に取られます。

通貨は自国で使えば手数料はかかりませんが、他国であればいったん換金しなければ使えません。
そしてこれも悩ましいことですが、外貨預金には為替リスクもあります。換金するときには為替レートを見ながらやらなければなりません。とはいえ、満期も決まっているので、満期後すぐに円に換金しない場合は口座で外貨(米ドルなど)のまま保有するか、他商品に置き換えるなどするなどしておく必要があります。

先ほどの利回りランキングの金額も、手数料なども考慮して決めたものがあります。漠然とした説明では納得感が出ないので詳しく説明すると、例えば外貨預金は為替レートの変動によって、利回りも大きく変わってきます。
仮に購入時の為替相場に変動がなくても、手数料と税金を払いながら満期までに利益を出すためには、購入時から最低でも2%くらいの上乗せが必要になってきます。これは外貨預金だけでなく、外国通貨で運用する商品全般に関わることなので、その根拠など説明を付け加えることとします。

換金時手数料は、米ドルなら往復2円程度

外貨預金の利回りを見るにあたって重要なのが為替レートです。
仮に満期までに年4%の利息があっても、為替レートで損失を被ってしまったら元も子もありません。それだけ外貨預金は、利息よりも為替差益の儲けや損失のほうが、運用利回りへの影響が大きいと認識することが大切です。

外貨預金で使う為替レートは「銀行間相場」と言われるものが適用され、それを元にその日のレートを決めます。銀行は、これに手数料を加え「TTS」「TTB」としてレートとします。
(換金時の手数料は通貨によって異なり、米ドルなら通常、往復で2円。TTSは「円を外貨に換えるための為替レート」で、TTBが「買った外貨を円に戻すときの為替レート」です)
例えば、銀行間相場が1ドル=150円なら、仮に片道手数料1円だったとして銀行手数料1円を足してTTSが151円、TTBが149円になります。

円高のときに預金して円安のときに解約すれば、儲けが出ることになります。元本が100万円だったら、TTSが1ドル150円で預け、TTBが1ドル160円の時に円に換えるだけで、金利とは別に10万円も利益を得ることができます。これが最終利回り10%の上乗せとなるわけです。

その逆で、円安の時に預金して円高のとき解約すると損することになります。具体的に、100万円を1ドル150円で預金して1ドル153円で解約したとすると、手数料を加味すれば預金時のTTSは1ドル151円、解約時にTTBが1ドル152円なので、計算すると6,620円の利益で、約0.7%の利回り。逆に1ドル149円で解約すると、預金時のTTSが1ドル151円、解約時のTTBが1ドル148円となり、19,870円の損で利回りは約-2%です(いずれも利息は含まない場合)。

このように、為替レートがたった1円円高になるだけで、2円の往復手数料があるために約2万円も損してしまいます。
外貨で利益を確保するのに、為替レートがいかに重要かわかったかと思います。

外貨預金は「為替レートが円高時に交換して、3円以上円安になったらに円に戻す」が鉄則です。

外貨預金の運用利回りを求める方法

以上が為替レートの仕組みですが、ここからは外貨預金の金利などを元に、運用利回りを求める計算法について説明します。

外貨預金の金利は、預金している通貨に付く表面金利で、実際は受取時に税金約20%が引かれます。米国通貨の預金金利が年4%なら、実質金利は3.2%になります。

1ドル150円のときに100万円の外貨預金をして、1ドル154円で1年後に解約した場合の計算手順は、

① TTSで円を外貨に換える
1,000,000円÷151円(TTS)=6,622.5ドル(ドル建ての預金額)

② 実質金利を足す
6,622.5ドル×3.2%+6,622.5ドル=6,843.42ドル(ドル建ての1年後の預金額)

③ 解約時、TTBで外貨を円に戻す
6,843.42ドル×153円(TTB)=1,045,666円

④ ③から①を引いて、差額を当初の預金額で割る
(1,045,666円-1,000,000円)÷1,000,000円=0.045666

利回りは4.57%です。

「3円以上円安になったら円に戻す」根拠

外貨預金で金利分まで含めてのプラス効果を得るためには、TTBがいくらあればいいのか? 目安として、頭に入れておくと便利です。
計算法は預金額に金利額を足して、それを②の実質外貨額で割ります。
このケースの例だと、

(100万円+4万円)÷6843.42ドル=152.17円

となります。
よって、為替レートは153円以上で解約すれば金利分まで儲けが出る計算です。

表面金利4%の場合は、1ドル150円で預けた外貨預金は1ドル153円以上で売らないと金利分の儲けを得られないことを知ってください。
ただし一番の方法としては、通貨をその国で使うのであれば、円高になっても問題ないのです(笑)。

今は銀行によっては、外国通貨対応のデビット機能付きのカードもあることから、貯めた外貨がそのまま使え、使った分が銀行口座から引き落としとなり、換金時の無駄な手数料もかからなくなっています。有効活用したいものです。

次回(12月5日公開)は、不動産投資について見ていきます。