宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマも「利回り」。投資する対象や方法によって利回りに幅が出る「不動産投資」について、今回から掘り下げていきます。

  • 不動産小口化商品は利回りで判断せず、投資対象をしっかり吟味することが大切
  • 現物不動産投資は実質利回り5%あれば成功。新築は高騰しており、中古が狙い目
  • マンション投資の実質利回りは管理費などの経費と空室率なども加味して考える

不動産小口化商品でトラブルを避けるには

【質問】
こんなに物価も上がってきてたいへん。お金を増やすのにはリスクは当たり前のことじゃけど、金利も上がってきたから、定期預金も良いちゃないですか? 安心、安全パイだし。

今回も「利回り」をメインにして金融商品を見ていきます。
相談室第147回で紹介した商品の中で、利回りが3番目に低いと思われる「不動産」を考えます。

アート投資を資産形成に!

金融商品選びの注意点と利回り商品のランキング

利回り商品ランキング

①債券 10,000円~(1%~)
②外貨預金(米ドル) 30,000円~(3%~)
③不動産投資 30,000円~100,000円(3%~10%)
④投資信託 30,000円~150,000円(3%~15%)
⑤株式投資 マイナス~300,000円(~30%)

一般的にミドルリスク・ミドルリターンと言われる不動産投資。5年前にもある程度述べさせていただきましたが、5年経った今では、都市部を中心として物件が高値で取引されていることから、利回りが低調など、手が出しにくい投資となりつつある状況です。

現在では、現物不動産は「相続財産」対策である評価減に伴う税逃れなどが国税から指摘されることも多くなり、法改正も検討されつつあります。だからと言って、全部が全部厳しいわけではなく、きちんとした根拠があるものであれば、現物不動産に投資はできます。

ただ直近の事案で、現物取引でない不動産小口化商品「みんなで大家さん」のトラブルのような例もあります。小口化商品で、一般人にとって投資のしやすさが、大きなリスクとなり跳ね返っています。

現在、少額で不動産投資ができる商品の代表格が「Jリート」と、「小口化商品」。その中でも、上場商品で証券取引所などに厳格に管理され、大きな金額で複数の物件に投資しているJリートと、投資物件は運営会社任せの管理となる小口化商品の差が明暗を分けていますが、その明暗と、投資金額の大小とは関係ありません。

小口化商品は、匿名組合として、例えば2億円の物件を100万円200口に分けて出資者を募る方式で、利回り7%であれば、5年満期で35万円の分配金が保障される商品です。この問題に関しては、いかに投資対象の物件選びが大切かを思い知らされた案件となっています。

今回話題になった例では、どう見ても利回り7%を毎年5年間確約するなど無理がありすぎでした。商品をどこの不動産会社が扱っているのか? 資金繰りの先も大丈夫な大手なのか? 利回り7%の商品で失敗経験のある私も、偏見かもしれませんが、小口化商品の「利回り7%以上」は特に鬼門、ボーダーラインではないかと思っています。5年前にも、小口化商品では投資対象を吟味する必要性を伝えていました。

運用利回りランキング② 投資信託・不動産投資

不動産小口化商品は、物件によってある程度元本が確保できる確証があれば、利回り2~3%前後のローリスク・ローリターンを狙ってもいい投資だと思います。難しいですが……。

マンション投資は地方では難しくなっている

不動産投資の本来の醍醐味は、人に貸す目的で不動産を購入することにあります。例えば、ワンルームマンションを購入して家賃収入を得ること。つまり大家さんになって不労所得をいただこうとするものです。

この現物の不動産投資、大きなお金で投資しますので、利回り5%もあれば成功です。1000万円で購入したマンションで、1年間に50万円の家賃収入を得られる。これが基準として、利回りが出るのなら不動産投資に挑戦できます。

でも実際には、家賃収入のみの単純な計算法でなく、もっといろいろな要素を足して、実質的な利回りを出さなければいけません。今回の「利回り」ランキングは、前回までのような100万円を使った1年間の利回りと考え方は少しずれますが、大まかな目安としてはこの「5%」を基準に「単純利回り」を考えていき、最終的な「実質利回り」にたどり着きたいと考えます。

ただ投資マンションも高値が続いて、借入金の金利も上昇していることから、実質利回り5%をクリアするためには、中古物件で投資せざるを得ない環境にあることを自覚した方がいいと思います。間違っても新築マンションには手を挙げてはいけません。これこそハイリスクになるでしょう。

初めてのマンション投資は最小限のリスクで

ここでは、マンション投資については5年前にも説明していますので割愛しますが、最大の課題は価格です。実質利回りは最良の物件によって高くなるのですが、マンション投資で利益が出るのは、分譲価格の下落ほど家賃相場が下がっていないからです。

都市部は別として、地方での5年前との大きな違いは、分譲価格は上昇しながらも、家賃相場に変化はないことです。これは儲けが減るという意味なので、マンション投資は地方ほど難しくなっていると実感しています。

実質利回りの計算では空室リスクも加味する

今回から、不動産投資の「利回り」の計算法を順を追って説明していきます。

マンションを購入すると必ず発生するのは、管理費と修繕積立金です。ともに築年数が古いほど支払いは高くなります。また、入居者を募集すれば広告宣伝費としてコストが跳ね返ってきます。入居者が途切れるリスクも頭に入れておく必要もあります。

購入時にローンを組めばローン金利もプラスしなければいけないし、入居者が集まらない時には家賃の値下げなど、最悪なケースも考えなければならない。それらの要素(経費)を加味して作るのが「実質利回り」です。この数字は一般に「単純利回り」より2割ほど少なくなります。つまり、単純利回りが5%なら、実質利回りは約4%となります。この4%で利回りを考えておけば安全パイというわけです。

では実際に、ある不動産会社のチラシを見ながら実質利回りを考えていきます。

【基礎編】中古マンション

  • 価格 600万円
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造
  • 専有面積23,24m2、1K
  • 平成3年竣工、築年数34年
  • 総戸数 170戸
  • 13階建ての7階
  • 管理積立費など 年間192,000円
  • 家賃年間収入 536,000円

そのまま利回りを計算すると、1年間の収入(536,000円)から1年間の諸費用(192,000円)を引いたものを、投資金額(6,000,000円)で割ると、実質利回り(5.73%)がはじき出されます。実際チラシにも掲載されています。大半がこのような形だと思います。

ただ、これ以外にリスクを想定する必要があります。借主が見つからなかったことを想定した空室率を加味します。家賃の1割程度(地方なら2割)でいいでしょう。そうなると、1年間の利益は482,000円となり、実質利回り4.8%がはじき出されます。これが最終実質利回りと考えますが、借入金などがあれば、さらに利回りは減ります。ただし、返済完了時には現物資産が手元に残る。これが大きな旨味なのです。

この物件は福岡市のマンションです。都市部ということで実質利回り4%を上回っていますが、これが地方物件だと際どい利回りになります。不動産投資は、所在地・価格・諸費用などのバランスによって利回りも決まるので、新築が高値の今は、中古物件に旨味があると理解しています。

次回も不動産投資の利回りを細かく見ていきます。