テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第167回は、ボーカリスト、DJとしても活動する鮫肌文殊さんが登場。鮫肌さんが師匠である関西サブカル界の大スターだったコピーライターの故中島らもさんに教えられて、いまでも守っていることとは?

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「おもろいこと考えるの得意やろ」

鮫肌文殊さんの写真
鮫肌文殊(さめはだ・もんぢゅ)
放送作家
日本放送作家協会会員理事

中島らもが死んでもう20年になる。
そもそも放送作家になったきっかけが、我が師である小説家・中島らもが司会を務めた関西伝説のカルトバラエティ「なげやり倶楽部」(1985年)のブレーンとして番組に呼ばれたことから。

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「キミ、おもろいこと考えるの得意やろ。今度、読売テレビで僕が司会する番組やるからブレーンになってくれへんか?」
高校時代に書き溜めた小説をまとめた「父しぼり」という処女作を、当時売れっ子コピーライターとして関西サブカル界の大スターだったらもさんに送りつけたところ、新番組のアイデア出し要員に呼ばれたのだ。

それきっかけでテレビ業界に足を踏み入れて以来、まさかその「おもろいことを考える」バラエティの放送作家という仕事を39年も続けることになろうとは。人の運命とはわからないものである。

しかーし!
放送作家という職業があるのを教えてくれた中島らもがもうひとつ、余計なものを私に教え込んでくれた。
そう、酒である。

お金の使い方がとにかく奇麗だったらもさん

四六時中飲んでいて「人間奈良漬け」なんて異名を誇っていたアル中作家中島らもに金魚のフンのようについて回っているうちに、一滴も飲めなかった紅顔の美少年だった私がいっぱしの大酒飲みになるのに時間はかからなかった。

トラリピインタビュー

中島らもの自宅に転がり込んでほぼほぼ居候状態だった20代前半。
毎日毎日、食事代から酒代から全部奢ってくれたらもさん。ある日、あまりに悪くて「ここは僕が出します」と言ったところ、らもさんにこう諭された。

「君ら若いモンは金持ってないやろ。金は持ってるやつが出したらええねん。オレも上の人にそうしてもらってきた。だから稼げるようになったら、今度は鮫肌が下のやつに出してやったらええ
お金の使い方がとにかく綺麗だった中島らも。らもさんの教えに感動した私は今もその教えを守っている。

だが飲み続けた結果、ついに膵臓がバースト。ドクターストップがかかり断酒というオチがつくのであるが。

私が酒を断ってからもう13年経った。
らもさんが酔っ払って階段から落ち、あっけなく逝ってしまってから20年。
この夏、「中島らも20th Birthday あの世に生まれて20年」という追悼イベントが大阪と東京で娘の中島さなえさん主宰で開催される。
私もDJとバンドで参加の予定だ。
故人の「うたって、おどって、さわいでくれ」の遺言通り、盛大に見送ってあげたい。
片手にノンアルビールで、らもさんの教えを改めて噛み締めながら。

次回も鮫肌文殊さんの登場です!

ぜひお越しください!

中島らも20thイベント

中島らも20th Birthday ~あの世に生まれて20年~」東京と大阪にて開催!

中島らもさん20thイベント告知

■渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
2024年7月30日(火)18:00開場 19:00開演 
■大阪 心斎橋 BIGCAT
2024年8月1日(木)18:00開場 19:00開演 
詳細は、こちらをご覧ください

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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