宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に引き続き、「直販」と呼ばれる投資信託を運用する独立系運用会社にスポットを当てて、その最大の特徴である「投資家との接点の近さ」について会社ごとに考察していきます。

  • 「直販」の投資信託の運用会社は、運用会社との接点が限りなく近い
  • 直販の運用会社の多くは、全国で運用報告会やセミナーを積極的に開催している
  • 子ども向けの投資教育など、金融リテラシーの向上につながる活動をする会社も

直販は投資家とのコミュニケーションを重視

【質問】
新NISAで乗り遅れないように始めようと投資信託を勉強しています。ある商品の購入を考えていますが、どうも直接販売と言われる投資信託みたいです。知人に訪ねてみたところ、「マニアックな会社より、有名な会社の方が安心できるよ」と言われています。やっぱり大きい運用会社の商品を買った方がいいのでしょうか?

今回も引き続き「直販」の投資信託を観察していきます。

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「直販」の投資信託を運用する独立系運用会社とは?

前回は8商品の基準価額と純資産総額を設定された年度順に各特長を紹介しました。

【図表1】主な直販の投資信託
商品名 設定時期 基準価額 純資産総額 運用会社
さわかみファンド 1999年 40597円 4379億円 さわかみ投信
ありがとうファンド
(ファンドの宝石箱)
2004年 35160円 231億円 ありがとう投信
セゾン資産形成の
達人ファンド
2007年 43055円 3329億円 セゾン投信
浪花おふくろ
ファンド
2008年 30218円 19億円 パリミキアセット
マネジメント
ひふみ投信 2008年 73416円 1755億円 レオス・キャピタル
ワークス
ユニオンファンド 2008年 38412円 137億円 ユニオン投信
コモンズ30ファンド 2009年 52651円 635億円 コモンズ投信
結い2101 2010年 21407円 473億円 鎌倉投信

※2024年5月1日時点

今回は、直販の最大のメリットである「運用会社との接点が限りなく近い」という観点から見ていきます。
8社とも共通しているのは報告会、セミナーに積極的に取り組み、投資家に直接訴えていることです。大手運用会社のファンドの運用報告は「報告書に書かれたものを見てください」としているだけの場合がほとんどですが、直販は報告書でも、わかりやすく投資家にメッセージを伝える努力をしています。

代表的なものの一つに、さわかみファンドの「さわかみレポート」があります。月2回発行する投資家向けのレポートです。刻々と変わる情勢を細かにわかりやすく説明するなどしています。

かのリーマン・ショックの折には、号外として暴落の3日後に「長期投資家の皆様へ」という題で、「ここで泡食って短絡的な行動に走らないようにしましょう」と発信しました。「株価が大暴落したところで、それで世界が終わるわけではありません」と、投資家に落ち着いてもらうためのメッセージを発し続けてくれました。
それから約半年間のレポートでも、投資家に安心感を与えるポジティブメッセージを送ってきました。投資家からの安心感と信頼が、下げに強い長期投資ファンドを作っていったともいえます。

このような、投資家とのコミュニケーションに手抜きをしない姿勢ができているのが直販の特徴といえます。

直販運用会社と投資家との接点を主観的に解説

ここからは直販8商品の特徴を考察していきますが、4月19日より新たに、元セゾン投信の中野晴啓氏が設立した「なかのアセットマネジメント株式会社」が独立系として船出をしました。商品自体は直販ではありませんが、今回からは、なかのアセットも直販に含めたものとして考察します。

各社の投資家との接点について、運用会社の顔であるホームページをもとに、個人的主観で述べていきます。各社のホームページも参考にしてください。

独立系① さわかみ投信

設定以来、投資家を「ファンド仲間」として位置づけ、毎週のように全国でセミナー、勉強会、報告会を開催。組み入れ企業へファンド仲間と視察もしている。投資家へのレポートも健在で親近感がもてる。

直近は長期投資家デビューを後押しするため、先着1万人限定・何と受講者に毎月1,000円、3年間で最大36,000円をあなたに投資してくれるプロジェクト開催中。勉強しながらお金を使わせてもらって体験できるとはうれしい限り。さわかみコンセプトが詰まっている。

独立系② ありがとう投信

投資家向けに全国でセミナー、報告会など開催している。
税理士、公認会計士が立ち上げた運用会社のメリットとして、希望者にFP(ファイナンシャルプランナー)サービスとして、ライフプラン提案書作成をお手伝いするサービスをしている。セミナーはFPの視点からのものが多くなっていて幅広い知識を習得でき、ホームページにも好感が持てる。

独立系③ パリミキアセットマネジメント

投資家との大阪、東京近郊でのセミナー、運用報告会を開催しているが、少しアピール不足が感じられるか。

金融系① セゾン投信

投資家向けに全国でセミナー、運用報告会を開催している。「タコライスを食べながら」などセミナーも特色あるものとなっている。

金融系② レオス・キャピタルワークス

投資家向けに全国で毎週のようにセミナー、勉強会を開催している。レポートも重厚で安心感がある。
直販とは別に商品もそろえるなど、一般の知名度も大きくなっている。

金融系③ ユニオン投信

投資家に運用報告会、場合によってはセミナーも開催している。ただし直近ではセミナーは開催されていないようで、あくまでも企業組合の色が強く感じられるか。ホームページには物足りなさがある。

金融系④ コモンズ投信

投資家向けの東京近郊でのセミナー、運用報告会も開催している。このほか、子ども向けのおかねの教室セミナーなど開催。金融リテラシーの向上に貢献している。
組み入れ企業への投資家との視察もある。ホームページもわかりやすい作りとなっている。

金融系⑤ 鎌倉投信

キーワードを「いい会社」として、投資家向けに運用報告会、全国でセミナーを開催している。
小学生向けの起業家体験・投資教育活動など、まさに金融リテラシーの向上への真骨頂を邁進している。レポートもわかりやすく仕上がっていて、ホームページには面白みがありコンセプトが感じられる。

金融系⑥ なかのアセットマネジメント

セゾン投信元会長が立ち上げた新しい会社であり、ホームページと2つのファンドもこれから。ただ、長期投資の思いは盤石で、報告会、セミナー、勉強会などに新しい方法を模索していくと考えられ、レポートとともに期待したい。

以上が直販の運用会社の特徴ですが、各社独特な顔を持ちながら、新規投資家の発掘に力を入れているのかがわかります。

今回は投資家との「接点の近さ」で考えてきました。次回は、商品の情報開示とパフォーマンスなどから、直販ファンドの今後を考察します。

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