宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に続いて、NISAやiDeCoで資産形成を始めたいと思いながらも、何を買っていいかわからないと悩む30代の女性に向けて、投資信託を選ぶ際に見るべきポイントについて解説します。
- 暴落時に投資信託を売って後悔する投資家は多い。今は下げが収まるのを待つ
- 投資信託を選ぶ際に見たいポイントはリスクメジャー、騰落率、純資産総額など
- 銘柄の分散も重要。特定の銘柄に偏った投資信託は長期投資に向かないことが多い
下げ相場では、あわてて投資信託を投げ売りしない
【質問】
NISAやりたいんですよ。iDeCoもやりたいんですよ。でもどうすればいいのかわからないんです。何を買えばいいのかわからんし、どこに行けば良いじゃろうか?
トランプ関税を発端として、世界の株価全般が暴落に陥っています。専門家の中には、「どうやらセリング・クライマックス(総投げ売り状況)に近い様相になっている」と発言する人も出てくるほどです。それほど乱高下しながらの下げはきつくなっています。当分の間、下げは続いていくでしょう。
世界各国の政府が救援策を練りながらもなかなか有効な打開策がない中、金融恐慌や世界不況の到来といった不安な心理は高まる一途となっています。しかし、そもそも今回の暴落はある程度予測されていたもので、その発端がトランプ政策だっただけのことです。
日本、米国に限らず、これだけお金を金融緩和と称してジャブジャブお金を垂れ流して景気を良くしたのですから、その代償はかなり大きなものになるはずです。
投資信託を買ったばかりの初心者の投資家は「これではお先真っ暗だ。ここで売ると大損するが、売らずに持っているとまだまだ損するぞ」といった集団心理が働き、一刻も早く不安を解消したいということで、なりふり構わず売りが殺到する状態になります。
にわか投資家が、損した後悔から友人など周りを巻き込みながら「早くやめないと大変よ~、お金なくなるよ」と、なりふり構わず話す光景が見えるようです。
しかし、後から振り返ってみると、「なんであわてて売ってしまったんだろう」と、ほとんどの投資家が後悔してしまう。セリング・クライマックスなんてそんなもんです。あわてないで騒がず怖がらず、下げに立ち向かう心理で、じっと収まるのを待つだけで十分なのです。

下げ相場が来てあわてて投資信託を売ってしまうと、その後の株価の回復と成長の恩恵を得られない
それでは今回の主題です。どうやって投資信託を選ぶのか? そのステップについて深掘りしていきます。
インデックス? アクティブ? 投資信託を選ぶポイント
最初に決めなければいけないのは投資信託の方向性です。投資信託を大きく2つに分けると、まず皆さんがメディアなどでよく目にする商品でもある、指標に連動するインデックス運用商品。人気があり、販売網も多く買いやすい、株式中心の投資信託です。
2つ目は、運用会社が銘柄を選定してポートフォリオ(資産構成)を作り上げるアクティブ運用の、こちらも株式中心の投資信託。この2つが代表格です。
他にも債券中心の商品や、株式と債券などを含んだバランス型商品などもありますが、長期的投資に適したパフォーマンスとコストのバランスを考えて、今回は省かせていただきます。
今回は主に、インデックス運用とアクティブ運用の2つの種類を選別していきます。あくまでも長期で運用した場合のパフォーマンスで、どちらが良いのかを見ていきます。
ポイント① リスクメジャー
2つに共通するのは、投資信託は結果が全てであり、結果が出て初めて、その商品が良いか悪いかの評価がわかるということです。最初から良さがわかればいいに越したことはないのですが、投資信託は過去の運用実績をもとにした「リスクメジャー」(値動きの大きさを示す指標)を、自身のリスク許容度(値動きの大きさにどれだけ耐えられるか)で計って選ぶしかありません。
ポイント② 期間別騰落率
そして、投資信託が結果を出し続けているかの判断材料として、月次報告書の中に期間別騰落率(価格の変化率)があります。
騰落率の表記は一般的に、過去1カ月から3年ぐらいで分けられていますが、ここでも長期の実績で判断します。騰落率の変化が大きいことは、それだけ運用にチャレンジできているともいえます。インデックス運用商品よりもアクティブ運用商品の方が、騰落率の変化は大きい傾向にあるように思えます。
ポイント③ 純資産総額
そして大事になるのが純資産総額、運用しているお金の総額です。
運用会社が投資信託を運用していく中で一番困るのは運用資金です。資金不足だと銘柄も買えません。良い銘柄を買えないと基準価額も上がりません。資産総額が多いほど、基準価額が上昇につながっていきやすくなります。
投資信託は基準価額1万円からスタートして、その後各社の商品で差が出るのはパフォーマンスの差で、パフォーマンスが良い商品は、純資産総額と基準価額のバランスが上手くいっているといえるでしょう。
そして、ある程度の銘柄が買えないとリスクも高まります。できれば最低でも100社前後の銘柄には分散してほしいところです。
ポイント④ 銘柄の分散
次の手順として、株式の投資信託でも、幅広い分野の銘柄が買われているかを確認する必要があります。銘柄が同じ業種に偏っていないかなどを、選ぶ時に確認します。幅広い銘柄に投資していることはすなわち、投資のリスクを軽減することにつながります。
インデックス商品は初めから指標に連動するように運用するので、多くの企業群が買われ、安心材料となります。
一方、インデックス商品でもアクティブ商品でも、テーマ型の投資信託(半導体、ロボットなど)のように、特定の業種などに集中して投資する商品は、今は旬でも、長期で成長し続けるかはわかりません。よってリスクも高いものになりやすいので、長期投資には不向きといえます。
安全を重視する年金基金も株式で運用する
ちょっと脱線しますが、最大の長期運用者であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、国民の年金を運用する機関は、国内株式25%、海外株式25%、国内債券25%、海外債券25%のポートフォリオで運用しています。
下落相場になるかもしれない不透明な環境でも、GPIFはここから引き続き5年間も、株式を半分含めて運用する方針を固めています。常に安全を重視して資産を増やしていかなければならない年金にも、株式は欠かせないことがここでもわかると思います。そこからしても、長きにわたり運用ができる覚悟があれば、株式運用中心の投資信託が良いということです。
今回は主に、投資信託を見極める最初の行動として、月次報告書の中で見るべき項目などを話してきました。最後に、何よりもNISAで使える投資信託を選ぶのを忘れてはいけません。NISAの対象でない投資信託の多くはリスクが大きく、経験者向きなのです。
次回も、続けてインデックス商品とアクティブ商品の投資信託の選び方について、具体例を見ながら深掘りしていきます。