資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第17回は、個人投資家のIPOとの向き合い方や、投資する際の注意点を解説します。

  • 「資産の桁を増やしたい」という目的なら、爆発力を秘めた小型株投資
  • IPOは株価が実力以上に上がりやすい。デイトレーダーも参加し株価は乱高下
  • IPO後、株価が落ち着いてから投資すべきか見極める。「人」という要素に注目

株式投資の魅力は「爆発力」

遠藤洋
遠藤 洋
投資家
投資コミュニティixi主宰

個人投資家が投資する方法は、大きく3つに分けられると思います。

1つはETF。市場全体への投資です。おおまかに言えば「国全体、人類全体が発展していく」という方向性にお金をベットする方法です。ETFのメリットは銘柄を選ぶ必要がなく、手数料も比較的安いことです。一方で、ETFへの投資では、個別株のように短期間で何倍にも増えることはほとんどありません。

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2つ目は投資信託です。ETFと同じように市場全体に投資するものもありますが、業界やテーマで投資先を絞ったものもあります。こちらも投資家が自分で銘柄を選ばずにすむので楽ではありますが、手数料の高さが投資信託のデメリットです。

最後が個別株です。個々の会社を自分で選んで投資するのは、非常にめんどくさいというデメリットがあります。日本だけでも4000社近い企業が上場していて、その中からひとつの会社を見つけるのは確かにたいへんです。勉強が必要で、時間がかかります。個別株を敬遠する人が多いのも仕方ないことかもしれません。

それでも僕は、個別株にこそ可能性があると思っています。個別株の最大のメリットは、資産の桁が上がるような爆発力を秘めていることです。株式投資で資産が100倍、1000倍になり、一代で莫大な資産を築いた人もいます。

小型株を推す理由は「短期間で大きく増やしやすい」

「資産の桁を増やしたい」という目的であれば個別株投資、特に小型株におもしろさがあると思います。中大型株はすでに時価総額が大きいため、期待できる伸びしろも大きくありませんが、時価総額が小さい小型株には、ここから何十倍、何百倍に伸びていく会社もあります。もちろん、業績が伸びずに消えてしまう会社も少なくないのですが。

そして、投資家のリテラシーが試されるのも個別株投資です。取引の方法によって、株は堅実な投資にもなるしギャンブルにもなります。個別株投資はある意味でお酒と似ていて、適度に飲めば人生を楽しくしますが、飲み過ぎれば自制がきかなくなったり、健康を害したりしてしまいます。

IPOの直後は株価が実力以上に上がりやすい

IPO、つまり新規上場を果たす会社には小型株が多いので、僕も注目しています。すべての上場企業は必ずIPOをします。その中から、株価が何十倍に伸びる会社も出てきます。

注意したいのは、IPOは通常の株取引とは異なる特殊な市場であることです。先ほどお酒の話をしましたが、僕はIPOを「誕生日パーティー」のようなものだと思っています。パーティー会場では個人投資家やプロの機関投資家、デイトレーダーがたくさん集まって大騒ぎします。結果としてその銘柄の出来高が増えて、IPOの株価は実力以上に上がりやすくなります。

パーティー
個人やプロ、デイトレーダーなどたくさんの投資家が参加するIPOはまるでパーティー。宴が盛り上がれば株価も上がる

投資家にとって重要なことは、投資した会社がIPOのあとも成長していけるかどうかです。IPOでは業績や利益率などの会社の中身より「伸びそうな事業か」「夢がありそうか」といった表面的な印象で判断されがちで、SNSなどでは初値がどれだけ上がったかで盛り上がる光景がよく見られます。そこをデイトレーダーが狙って、株価が乱高下するのもIPOの日常です。

IPO銘柄は業績や時価総額だけでなく「人」を見る

IPOの中には、いわゆる上場ゴールの銘柄もあります。経営者の友人の話を聞いていると、もちろん「何のために上場するか」というビジョンを持っている人もいるのですが、上場すること自体が目標になっている人も多い印象です。

IPOは会社の資金調達の手段で、上場すれば億単位のお金が入ってくることになります。調達したお金をどう使うかが、IPOのあとに伸びる会社と伸びない会社の分かれ目になると思います。経営者の手腕にかかっています。

個人投資家は、IPOという宴が終わって、株価が落ち着いてから投資すべきかどうかを見極めてもいいと思います。IPO銘柄もそうでない会社も、見るべきところは変わりません。開示資料や経営者の考え方、そして売り上げや利益に対する時価総額を見て判断することになります。

特に「人」の要素が大きいと思います。すべての産業やサービス、商品は人で成り立っています。IPO直後は勢いで業績を伸ばせても、競争が激しくなったときは、経営者の思いやビジョンで、伸びる会社とそうでない会社の差が付くのではないかと考えています。

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