「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回も、前回に引き続いて「積立投資」の魅力についてお伝えします。
- 積立投資は、売却する日の基準価額が「損益分岐点」を上回れば成功
- 損益分岐点を下げる方法は「長期投資」「基準価額の変動幅が大きい」
- 積立投資の最大のメリットは「タイミングからの解放」
新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に、謹んで哀悼の意を表します。また、罹患して闘病なさっていらしゃる皆さま、並びにご家族の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
筆者も、いわゆるフリーランスですが、お仕事がないまま、すでに2カ月が過ぎました。この大型連休中も、金融機関へ融資の相談に行ったり、助成金の申請書類を作成したりと、これまでに全く経験のないことに取り組みました。
さて、今回は前回の続編として、『見せてもらおうか!積立投資の実力とやらを~その2 積立投資の目的は損益分岐点の引き下げ』の本論に入ります。
そもそも、積立投資は「価格で勝負」はしません
積み立てではない「ワンショット」な投資、つまり一般的な投資のイメージですと、価格(=株式なら株価、投資信託なら基準価額、債券なら債券価格)が安い時に買って、保有期間中はインカムゲイン(=株式なら配当金、投資信託なら分配金、債券なら利息)を得ます。そして、買った時よりも価格が上がったところで売却します。価格が上がった分がキャピタルゲイン(=売却益)ということになりますが、その際、負担した手数料などのコストを考慮に入れなくてはなりませんね。
しかし、積立投資では「価格で勝負」はしません。
積立投資における「損益分岐点」の考え方
損益分岐点とは、本来なら会計の言葉であり、投資には用いない言葉なのですが……。
論より証拠。以下の表をご覧ください。
①投資信託の名称 | 日本株ファンド | 公社債ファンド |
---|---|---|
②投資額の合計 | 1,530,000円 | 1,530,000円 |
③基準価額の平均 | 9,900円 | 10,823円 |
④取得口数の合計 | 1,794,518口 | 1,418,113口 |
⑤損益分岐点 | 8,526円 | 10,789円 |
①投資信託の名称:どちらも実在する投資信託ですが、ここでは仮称です。
②投資額の合計:2009年1月30日~2020年4月30日まで、毎月の最終営業日に、1万円ずつの積立投資を12年9カ月もの間、行っています。なお、どちらもノーロード(=購入時手数料がない)です。
③基準価額の平均:②の期間中の、毎月の最終営業日の基準価額の相加平均、すなわち毎月の積立投資を行った日の基準価額の平均になります。なお、それぞれの基準価額は実在する投資信託の運用会社のサイトから取得しています。
④取得口数の合計:②の期間中、毎月の積立投資によって得た、投資信託の口数を合計したものです。
⑤損益分岐点:「②投資額の合計」÷「③取得口数の合計」×10,000で計算しています。
※どちらの投資信託も、基準価額を用いていますので、信託報酬は織り込み済みですが、分配金による再投資は行われていません。
どちらの投資信託もぼかした名前にはなっていますが、実在する投資信託です。ですので、この数字は過去の実績に基づくシミュレーションです。
2009年1月30日~2020年4月30日まで、毎月の最終営業日に、1万円ずつの積立投資を12年9カ月、合計153万円を投資しています。
なぜ2009年1月30日から始めているのかといえば、公社債ファンドが2009年1月に販売をスタートしたらしいという理由です。深い意味はありません。
話は飛びますが、「投資って、いつ始めたらいいの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。積立投資に絞るのでしたら「思いついた時に、いつからでもOK」が答えになろうかと思います。
さて、肝心の積立投資における損益分岐点ですが。
損益分岐点は、上述の通りの計算式で算出します。そして、この算出した損益分岐点は、以下のように用いるのです。
投資信託を売却する日の基準価額が「損益分岐点を1円以上、上回っていれば」投資は成功、すなわち売却益を得ることができます。
先述の表をもとに、以下試算してみます。
日本株ファンド(損益分岐点は8,526円)
売却する日の基準価額が8,527円だとすると
↓
8,527円×1,794,518口÷10,000=1,530,185円
(投資額の合計は1,530,000円)
公社債ファンド(損益分岐点は10,789円)
売却する日の基準価額が10,790円だとすると
↓
10,790円×1,418,113口÷10,000=1,530,144円
(投資額の合計は1,530,000円)
投資額を売却する日の基準価額が「損益分岐点と全く同じ」ですと、投資はプラスマイナスゼロという結果になります。同じく、先述の表をもとに試算します。
日本株ファンド(損益分岐点は8,526円)
売却する日の基準価額が8,526円だとすると
↓
8,526円×1,794,518口÷10,000=1,530,006円
(投資額の合計は1,530,000円)
公社債ファンド(損益分岐点は10,789円)
売却する日の基準価額が10,789円だとすると
↓
10,789円×1,418,113口÷10,000=1,530,002円
(投資額の合計は1,530,000円)
逆に、投資信託を売却する日の基準価額が「損益分岐点を1円以上、下回っている」場合は、投資は失敗、すなわち売却損になります。いわゆる元本割れということになります。やはり、先述の表からです。
日本株ファンド(損益分岐点は8,526円)
売却する日の基準価格が8,525円だとすると
↓
8,525円×1,794,518口÷10,000=1,529,827円
(投資額の合計は1,530,000円)
公社債ファンド(損益分岐点は10,789円)
売却する日の基準価額が10,788円だとすると
↓
10,788円×1,418,113口÷10,000=1,529,860円
(投資額の合計は1,530,000円)
積立投資の目的と申しますか、積立投資の効果は、この損益分岐点を引き下げることにあります。