宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマも「一棟アパート投資」。思わぬ出費に対応するための火災保険の活用法や、事前にトラブルの芽を摘む方法について、小田さんの実体験に基づいてお伝えします。
- 建物の壁の損傷は、補償内容にもよるが火災保険で請求できる
- 「事故物件」など、起こりうるさまざまな出費に対応するための特約を検討
- 老朽化などトラブルの元を、管理会社の話や退去者のクレームなどから見つける
火災保険は特約が重要。いわゆる事故物件への補償も
【質問】
夢だった福岡のアパートオーナー! 土地から購入するつもりで、複数の建物を観に行ったらデザイナーズアパート。すぐに欲しくなって、勢いで契約してしまった。こんなに思い切って大丈夫ですかねぇ?
新築アパートを購入してからの諸費用には、「思わぬ出費」が生じることがあります。入居者募集の際に、入居者の満足感を高めて他物件との差別化を図るために、インターネット環境をオーナー負担にして無料提供するのもその一つです。
「思わぬ出費」は初めから計画案で提示されているわけではないので、出費が発生したときに、その都度解決していくしかありません。ただ、簡単に解決できないものもあります。建物に損害が発生した場合が、これにあたりますね。
私が管理する物件でも、建物の壁が割れ、損傷が発生したことがありました。それも2度です。誰がやったのか? いつ起こったのか? 当然のことながらわかるわけがなく、誰にも賠償請求できないので、泣き寝入りです。自分で修繕するしかありません。
ここで必要不可欠なのが、建物本体に付いている火災保険。補償内容にもよりますが、保険請求ができます。その際には、「壊された」という損害事実の証明のため、警察の届け出の証明書番号が必要になります。
補償内容については、保険の特約に「建物外部からの物体の落下・飛来・衝突など」があるか、確認してみてくださいね。案外、火災保険の中身まで見ていないオーナーが多いと思われますので、事前に確認しておきましょう。
また、アパートオーナー向けの火災保険には、次のような特約が付いているものもあります。
入居者の借家人賠償責任保険の漏れを防ぐ意味での①借家人賠償責任や修理費用を包括する特約。
火災などにより損害を受けた結果、被った家賃収入の損失を補償する②家賃収入特約。
そして、オーナーにとって最悪の“事故物件”に対応するための、賃貸住宅内での死亡事故に伴う家賃の損失や、その戸室を賃貸可能な状態にするための費用、火葬や遺品整理などにかかる費用を補償する③事故対応等家主費用特約。
火災保険はアパート経営の経費として計上できるので、収支を踏まえて、どのような特約を選ぶかを考えてみましょう。
ただ、火災保険は自然災害の多発などで、毎年のように保険料の値上がりが続いています。下記の事業収支計画の数字を見ると、火災保険の保険料は一定になっていますが、実際にはずっと一定ということはあり得ません。ご購入の際は十分注意しながら検討しましょう。
老朽化などの「トラブルの元」を見つける
私が新築アパートを購入してから14年が経過しましたが、今も定期的に福岡を訪問しながら、管理会社で情報収集や新たな物件調査などを行い、現在の物件の状態などを見ています。この他に所有している区分マンションも含めて、トラブルに見舞われないように、トラブルの元を早めに見つけておく準備をしています。
長年アパートを経営している中で起こりうるトラブルといえば、物件の老朽化問題です。例えば雨漏りなどがそうです。
雨漏りが発生して入居者からクレームをつけられ、家財道具の弁償までさせられてしまったら? 弁償で終わればいいのですが、雨漏りでぬれた建物の柱が腐食してしまったらどうしますか?
退去者が出た際には、必ず理由を聞き、クレームがあればすぐ対応します。常日頃から、トラブルの元を探し出すように努めましょう。この意識があるかないかの違いが、収益を大きく増やせるか、あるいは損失を抱えてしまうかという、大きな差となって自分に帰ってくるのでしょうね。
ところで私自身、仕事をしていく楽しみの一つとして、いつかは不動産(別荘)を持って余暇を過ごしていく(笑)などと、大それた願望を持っていました。そこで、私が頻繁に地方から福岡に通っていることを考えると、入居者の退去が出た時点で募集なしにして、空けておく選択もありかな?と思い、一部屋を空けて、自身のために使用することにしました。まさに、ミニミニ別荘地?を作っちゃいました。
これで出張の際の宿泊費も浮きますし、何はともあれ、いつでも“別荘”が使えるというメリットが生まれました。もちろん、アパートの一部屋を自分で使うために空けるのは、不動産経営の収支計画に問題ないことが前提条件ですので、本来お勧めはしないのですが、ま、ご褒美ということで、よしとしましょう。
次回は、アパート・区分所有マンションを含めた「申告」について話をしていきます。