「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、実在する投資信託のデータをもとに、積立投資のパフォーマンスについて細かく見ていきます。

  • 積立投資に限らず、投資でパフォーマンスを挙げるには、やはり時間が味方
  • ひたすら右肩上がりの投資信託なら、一括投資の方がパフォーマンスは高い
  • 積立投資に向くファンドとは「基準価額の変動の幅が大きなファンド」

緊急事態宣言が解除され、暦も7月になりました。読者の皆さまは、平穏とともに、いわゆる「コロナ前」の暮らしを取り戻すことはできましたでしょうか?

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「テレワーク」という言葉が頻繫に聞かれるようになりましたし、電車の混み具合も「コロナ前」のそれとは異なります。やはり、「新しい生活様式」が始まって、人々の暮らしぶりはずいぶん変わったようです。

さて、本日の本題に入っていきたいと思います。

長期の投資がより良いパフォーマンスを示した事例

積立投資のパフォーマンスが「期待通りで順調」という方もいらっしゃるかもしれませんし、「あれれ?」と焦っている方もいらっしゃるかもしれません。

投資のリスクはご理解をいただいたうえで、「今なら積立投資のパフォーマンスを上げやすい」とお聞きになられて、投資をお始めになった方も多いと思います。
と申し上げても、もともと投資というのは「未知の未来への投資」ですから、将来のことは誰にも約束はできません。でもそれが分かっていても、株価が下がる様子を目にしてしまうと、焦る時や不安になる時もあるでしょう。

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今回も実在する投資信託をもとにしたシミュレーションを見ながら、積立投資の話を進めていきたいと思います。

【表1】

①投資信託の名称 Aファンド
世界成長株
Bファンド
リート
Cファンド
公社債
Dファンド
日本株
Eファンド
バランス
②投資額の合計 430,000円 430,000円 430,000円 430,000円 430,000円
③基準価額の平均 15,247円 2,731円 10,820円 14,592円 14,409円
④取得口数の合計 290,730口 1,599,711口 397,432口 297,214口 298,710口
⑤損益分岐点 14,790円 2,688円 10,819円 14,468円 14,395円
⑥基準価額(3/31) 16,731円 1,905円 10,735円 13,450円 14,141円
⑦=⑥-⑤ 457円 ▲783円 ▲84円 ▲1,018円 ▲254円
⑧売却金額 486,420円 304,744円 426,643円 399,752円 422,405円
⑨売却益 ⑧-② 56,420円 ▲125,256円 ▲3,357円 ▲30,248円 ▲7,595円
⑩投資の開始日 2016.9.30 2016.9.30 2016.9.30 2016.9.30 2016.9.30
⑪投資の終了日 2020.3.31 2020.3.31 2020.3.31 2020.3.31 2020.3.31

【表2】

①投資信託の名称 Dファンド
日本株
Cファンド
公社債
②投資額の合計 1,520,000円 1,520,000円
③基準価額の平均 9,871円 10,818円
④取得口数の合計 1,787,547口 1,409,499口
⑤損益分岐点 8,503円 10,784円
⑥基準価額(3/31) 13,450円 10,818円
⑦=⑥-⑤ 4,947円 34円
⑧売却金額 2,404,250円 1,524,796円
⑨売却益 ⑧-② 884,250円 4,796円
⑩投資の開始日 2009.1.30 2009.1.30
⑪投資の終了日 2020.3.31 2020.3.31

「積立投資の目的」のおさらい

積立投資の目的は「損益分岐点の引き下げ」です(損益分岐点とは会計の言葉なので、投資の世界にはあるいはふさわしくないかもしれませんが)。
売却時の基準価格が損益分岐点よりも1円以上高ければ、プラスのパフォーマンスです。逆に1円以上低ければ、マイナスのパフォーマンスです。詳しくは5月18日公開の「第17回」をご笑覧ください。

表1と表2のシミュレーションについて

表1および表2は、どちらも実在の投資信託をもとにした、積立投資のシミュレーションです。
本稿の公開は7月6日ですが、表1および表2ともに、今年の3月末までの積立投資で3月末に損益を確定、つまり、それまで積立投資を行ってきたものを売却した場合を想定しています。
今年の3月といえば、新型コロナウイルスの感染が世界で広がり、株価の下落が最も厳しかった時期でもありますから。

ところで、表1は本稿のために新たに作成しましたが、表2は5月18日に掲載した「第17回」に載せた表をもとにしています。
「第17回」よりも投資の終了日が1か月、早くなっています(第17回のシミュレーションでは、投資の終了日を2020年4月30日としています)。

表1および表2は、ともに筆者が意図して作成したわけではありませんが、筆者の狙い通りの表になりました。どういうことなのでしょうか?

積立投資でパフォーマンスを挙げるには……「時間」

積立投資に限らず、投資でパフォーマンスを挙げるには、やはり時間が味方です。
「『投資は長期で』という話はよく聞くけど、それって、どのくらいなの?」
とお感じの方は多いと思います。「長期」という言葉に対する印象も、お一人おひとり異なるとは思います。繰り返しになりますが、投資は未知の未来への投資ですから、未来の利益に対するお約束はできません。が、過去を振り返ることはできます。

Cファンド(公社債ファンド)とDファンド(日本株ファンド)につきましては、表1と表2の比較が可能です。
表1と表2では、積立投資の売却は同じ時期ですが、積立投資を始めた時期が異なります。表1の積立投資を始めたのは2016年9月30日ですが、表2では2009年1月30日です。ということは、表1と表2とでは、積立投資の期間も異なりますね。表1は3年7カ月、表2は11年8カ月です。

つまり、表2の方が長期投資なのです。
では、肝心のパフォーマンスの方はいかがでしょうか?
ファンドごとに比較しましょう。

まずCファンドから。
表1では⑤損益分岐点は10,819円なのに対し、表2のそれは10,784円です。先述の通り、積立投資においては損益通算分岐点が低い方が良いので、表2の長期投資の方が、パフォーマンスが優れていることになります。
また、それ以前に⑨売却益をご覧いただくと、表2の方が4,796円のプラスなのに比べ、表1については投資金額に対し3,357円のマイナス、つまり元本割れになってしまっています。

続いてDファンドについて。
DファンドについてもCファンドと同じ傾向を見ることができますが、表2は投資金額に対し884,250円のプラスなのに比べ、表1のそれは30,248円のマイナスとなっています。

あくまでも過去の話ではありますが。
積立投資の期間が3年7カ月と比較的短い表1では、CファンドとDファンドはどちらもマイナスのパフォーマンスでした。
期間が11年8カ月にわたる表2では、CファンドとDファンドのどちらもがプラスのパフォーマンスとなりました。
長期投資の「長期」の定義を明確にすることはできませんが、「短期積立投資より長期積立投資の方が優れたパフォーマンスを示した」という過去の事実をお見せすることができました。