お金の使い方をMEからWEへ

渋澤 健渋澤 健
コモンズ投信 取締役会長

第一回で取り上げた「消費」第二回の「貯金」は、小さなお子さんたちでもすぐわかってくれる日常のお金の使い方です。一方、今回ご紹介する3つ目のお金の使い方は「寄付」です。通常、子どもの日常生活の行いではないでしょうから、ちょっと説明が必要になります。
ただ、私たちコモンズ投信の「こどもトラスト」セミナーからの経験では、お子さんは必ず寄付というお金の使い方をわかってくれます。なぜなら、子どもでもきちんと良心を持っているからです。

困っている人がいるとがわかれば、助けてあげたいという気持ちが込み上がります。でも、自分は子ども。困っている人がいても、自分には力があまりない。家から遠いところに一人で行って助けることもできない。
子どもたちの表情が無力感でちょっと曇ります。
そんな時「こどもトラスト」セミナーでは、世の中には他の人が抱えている問題を解決するために活動する人がいることを丁寧に説明します。

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そうか。自分に力がなくても、自分が行動できなくても、力があって遠いところまで行動できる人がいるんだ。その人たちが困っている人のところへ助けに行くために、僕は自分のおこづかいをちょっぴり「寄付」すれば良いんだ。
自分の寄付だけでは足らない。だから、自分の友達や大人たちに話をして、皆が寄付してくれれば、困っている人を助けることができる。小さな力を皆で足せば、大きなことができるんだ。

寄付についてわかってくれた子供たちの表情がパッと明るくなります。
この時、子どもたちにはどのような変化があるのか。コモンズ投信では「ME」から「WE」へとお金の使い方の視野が広まったことを期待しています。

「消費」や「貯金」とは自分、MEのこと。子どもたちにMEという自己肯定が育まれることは、とても大事です。それに加え、子どもたちが「寄付」のことをわかってくれれば、MEの”M”がひっくり返って、”W”になり、WEという世界観も見えてきます。
MEは微力な存在かもしれない。でも、WEになれば、今日よりもよい明日を実現する勢力になれる。こんなことを理解する子どもたち、そして、その子を見守る大人たちが増えれば、必ずよりよい世の中になるはずです。

寄付一人ひとりの寄付額は少なくても、大勢が寄付を行えば大きな変化を起こせるかもしれない

日本の寄付には伸びしろがある

コモンズ投信では、運用するコモンズ30ファンド(公募投資信託)から生じる収入(信託報酬)の約1%を有能な社会起業家に寄付する「コモンズSEEDCap(社会起業家応援プログラム)」を、10年前のファンド設定来から実施しています。
毎年10月には社会起業家という精鋭が集まって登壇するスピーチ・リレーのイベントである「コモンズ社会起業家フォーラム」も開催。
これらは売上ゼロのファンド設定時から設けているプログラムであり、コモンズの設立理念の一環です。寄付はコモンズ投信の社会貢献やCSR(企業社会責任)という次元に留まらない、「本業」の一つなのです。

コモンズ投信の存在意義は、「一人ひとりの未来を信じる力を合わせて、次の時代を共に拓く」と明記しています。日本全国の世帯に「お金の使い方」を提案し、持続可能な世の中を支える長期的な新しい流れのお金を経済社会の隅々まで循環させるために、会社を興したからです。
コモンズ投信がファンド運営を開始した2009年から5年後に、ザ・2020ビジョンというファンドも設定しました。こちらも同様に「コモンズPOINT」という寄付プログラムで障害者スポーツの団体を応援しています。

寄付には、人と人をつなげるWEの力があります。しかし、日本の寄付総額は名目GDP(国内総生産)の0.1%程度。英国では同比0.5%、米国では同比1.4%です。ということは、まだまだ伸びしろがある「お金の使い方」といえそうです。

参考文献:「寄付をしてみよう、と思ったら読む本」(共著:鵜尾雅隆、渋澤健)
参考活動:寄付月間Giving December

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