テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第169回は、『ダウンタウンDX』『行列のできる相談所』など、数多くのテレビやラジオ番組を手掛ける、放送作家の山名宏和さん。

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シートベルト着用のランプが点灯

山名宏和さんの写真
山名宏和
放送作家
日本放送作家協会会員

96万2759円の黒字。

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小学生のお小遣い帳レベルで出した2023年の僕の収支決算です。収入の大半は放送作家業によるもの。これに加えて昨年は、例年より雑収入が多めでした。

こんなふうに、僕が自分の「お金」を意識するようになったのは、ここ2、3年のことです。それまでは、収入こそ月に1回、事務所から振り込まれるのでわかっていましたが、支出に関してはまったく把握していませんでした。

30年以上、無頓着だった自分の「お金」に対し、どうして急に関心を寄せるようになったのか。

それは、放送作家という自分のキャリアが着陸態勢に入ったことを実感したからです。
放送作家を始めて5年ほどで、生活の心配をせずに済む収入を得られるようになりました。それから安定飛行となりましたが、こんなにも長く続くとは思っていませんでした。30代半ばの頃、「こんなふうに仕事があるのは40代前半までだろう」とよく言っていたものです。しかし幸いにもその予想は外れ、50代になるまで安定飛行は続きました。

ですがそれも、そろそろ終わりの時が来ました。わかっていたとはいえ、シートベルト着用のサインが点灯するとさびしいものです。ただひとつよかったのは、それが、新型コロナの影響で、今後の自分の時間の使い方について考えるようになった時期と重なったことです。「仕事が減ったのではなく、自由な時間を確保するために仕事の量をセーブした」と考えを変えることで、かなり気が楽になりました。

しかし仕事をセーブする=収入減です。

そこで初めて考えたのです、いくら「お金」があれば生活ができるのだろうかと。

着陸態勢の飛行機のイメージ自分のキャリアが着陸態勢に入ったことを実感し始めた

管制塔なきアプローチ

ただ生活できればいいというものではありません。しばらくは生活の質を落としたくない。僕の場合、支出の大半は本、CD、演劇やライブのチケット代。これはケチりたくありません。1~2曲のボーナストラックだけのために、すでに持っているアルバムの再発盤を買うのはちょっと…とためらうようにはなりたくない。家族に関しても、それは同様です。

そんな生活を続けるためには、いくら必要なのか。そのためには、まず支出を把握しなければいけません。そこで、小学生のお小遣い帳レベルですが、自分の収支の把握を始めたのです。

ただし、それで何か具体的な対策を始めているわけではありません。拙い収支決算を行っただけで満足している状態です。さすがにそろそろ次のステップに移らないといけないと思ってはいるものの、いったい何をどうしたらいいのやら。もう少し考える時間が必要なようです。

放送作家は定年のない職業です。僕より年上で、変わらず活躍している方もいます。でもそれは、ごく一部の特別な人です。僕のような標準仕様の放送作家は、ある年齢になると仕事の数が減ってきます。その時のために、どんなふうに備えておけばいいのか。会社員だったら、色々なモデルケースが出回っています。しかし、放送作家はかなり特殊です。以前、銀行で将来のマネープランのシミュレーションをしてくれると言われたのですが、仕事の詳細を話したら、銀行のシミュレーションには当てはめることができないと断られたぐらいですから。

僕より先輩の放送作家たちはどうしているのでしょうか。聞く機会はありません。同世代はどうしているのか。これも聞きづらい。結局、手探りで、自分で考えるしかないのです。そう、新番組を立ち上げる時のように。

ときれいにまとめられたらいいのですが、残念ながら、そんないいものじゃありません。今の気分は分厚い雲の中を飛んでいる新人パイロット。しかも、この飛行機、計測機器が正常に作動していない。いや、そもそも機器が付いているのか。現在位置も高度も何もわからない。わかるのは、高度を下げつつあることだけ。あとどれぐらいで、この雲から抜け出すのか。そして、雲から出た時、目の前に見えるものは。

次回はデーブ八坂さんへ、バトンタッチ!

ぜひ読んでください

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下記からどうぞ。地味な日々の備忘録ですが。

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一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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