東証1部上場企業の筆頭株主が日本銀行
日本銀行によるETF(上場投資信託)の買い入れ額が、今年初めて年間で6兆円を超えたことが報じられました。
この、日銀が買った「ETF」とは、いったいどのような金融商品なのでしょうか。
簡単に説明すると、日銀が買い入れたETFは「複数の株式がパッケージされた金融商品」のことです。
日銀はトヨタ自動車やNTTや任天堂などの個別企業の株式に直接投資しているわけではありませんが、ETFという金融商品を通じて、これらの大企業の株式を間接的に買っているのです。
一般的なETFの定義は「株式などの指標の値動きに連動する成果を目指して運用する、東証などの取引所に上場された投資信託」となります。投資対象は国内株式だけでなく、海外の株式や債券、商品先物などさまざまですが、日銀が買い入れているのは今のところ国内株式のETFのみです。
日銀のような中央銀行が株式を買うのは、世界的に見ても異例なことです。
日銀のETF買い入れは2010年12月に始まり、当初は年間4500億円程度の規模でしたが、2013年以降は物価上昇の早期達成を目的とした「異次元金融緩和」と呼ばれる金融政策により、買い入れ額は徐々に拡大されました。特に、2014年にETFの買い入れ額を年間1兆円から3兆円へ増額を決めたこと、2016年に3兆円から6兆円への増額を決めたことは、日銀総裁の名前から「黒田バズーカ」と呼ばれ、短期間に急激な円安と株高を呼び込むことになりました。
日銀が買い入れているETFの大半はTOPIX(東証株価指数)に連動するタイプです。TOPIXは東証1部の全銘柄をカバーしている指標なので、日銀は上場企業の株式をまんべんなく買っていることになります。このほか、日経平均株価に連動するETFや、「MSCI日本株人材設備投資指数」など一定の条件に沿った企業のみを対象とした株価指数に連動するETFを購入しています。
日銀の年間6兆円におよぶETFの買い入れの結果、上場企業の中には日銀が筆頭株主という企業まで現れるようになりました。先進国ではもちろん異例なことであり、全世界が日本の金融政策とその動向に注目しています。
ETFは証券口座で誰でも取引できる
日銀が大量に買い入れているETFは、決して特別な金融商品ではありません。証券口座を持っている人なら誰でも気軽に売買できる、とても身近な商品です。
ETFは「上場投資信託」とも呼ばれますが、株式と同じようにリアルタイムで価格が動き、売買を行えるのが特徴です。
取引口座も、取引の方法も株式の個別銘柄とまったく同じ。証券コードが割り振られている点も株式といっしょです。たとえば、純資産総額が国内最大の「TOPIX連動型上場投資信託」(野村アセットマネジメント)の証券コードは「1306」。純資産は2018年12月11日時点で約8兆200万円です。
日経平均株価に連動するETFであれば、日経平均が上がるとETFも上がり、下がるときも同様で、値動きがわかりやすいという特徴があります。1口あたり2000円以下で購入できるものも多いので、投資初心者にとって、株式投資に慣れるにはちょうどいい商品といえます。