GDPは「国内で生産された付加価値の総計」

内閣府は12月10日に、国内総生産(GDP)の「平成30年7-9月期2次速報値」を公表しました。その数値が「年率2.5%減」ということで、金融市場に携わるたくさんの人たちが、予想以上の落ち込みに驚きの声をあげています。

経済指標としてよく使われるこの「GDP」という数字、そもそも何を示すものなのでしょうか?

教科書的な説明では、「国内で新たに生産された付加価値の総計」となります。ざっくり言うと、私たちがモノやサービスを買う(企業がモノやサービスを売る)、企業が設備投資や輸出をする、政府が公共事業をするなど、ありとあらゆる経済活動によって動いたお金の合計がGDPということになります。
つまり、GDPが高いほど、その国の経済活動が活発であることを示します。

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GDPが年率2.5%減少したということは、日本経済の規模が2.5%小さくなったということです。

これまでの日本の名目GDP(物価変動の影響を除いていない、額面通りのGDP)の推移は以下のとおりです。

【図表】日本の名目GDPの推移(1994~2017年度。各年度は4~3月)
【図表】日本の名目GDPの推移
出所:内閣府

GDPは長い間500兆円台前半で横ばいを続け、2008年以降はリーマン・ショックや東日本大震災などの影響で低迷していたところ、2017年になってようやく1997年度の値を上回るなど、上向きになりかけていたところでの年率2.5%減という結果ですから、株価の先行きも懸念されます。
実際に、12月10日の日経平均株価は一時的に前日比500円以上のマイナスとなる場面がありました。その主な要因は米国株式市場の低迷ですが、GDPの減少もいくばくかの影響を与えていると考えられます。

ところで、海の向こうではこのようなニュースがありました。

第3四半期のGDP成長率は前年同期比5.7%(ポーランド)
(ジェトロ ビジネス短信 2018年12月11日)

世界には経済成長をしている国と、経済が縮小している国があるという現実を示しています。

なぜ「2次速報値」でGDPが「下方修正」されたのか?

2018年7~9月期のGDPは、11月14日に「1次速報値」が公表されました。そのときの数値は「年率1.2%減」だったので、12月10日の「2次速報値」では1.3%分が下方修正されたことになります。金融市場ではGDPが下方修正されることはある程度予想していたようですが、1.3%という修正幅は想定外だったようです。

なぜ、GDPの数値が途中で変わってしまうのでしょうか?
それを説明するためには、「GDPをどのように算出しているのか」を知る必要があります。ここでは細かい説明は省きますが、GDPを計算するもととなる、個人消費や企業活動などに関する参考指標に推計が含まれていることが、速報値ごとに数値が変わってしまう理由です。当初は推計だった指標が、後に正確な値に差し替えられるため、GDPも後で発表された数値の方が正確になるのです。

今回、GDPの速報値が大幅な下方修正となったのは、1次速報値の時点での各種経済指標が「現実より甘く見積もっていた数値だった」ということができます。
7~9月は各地で地震や豪雨など自然災害が相次ぎました。個人消費や企業活動に与えた影響が、予想以上に大きかったのかもしれません。

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