宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、投資初心者が損をしてしまう理由と、資産運用を長く続けるための「金融リテラシー」の大切さについて説明します。

  • 金融リテラシーが低いと、投資を始めても相場の下落に耐えられず損をしてしまう
  • NISAやiDeCoでは「下げ相場でも解約が少ない投資信託」に注目
  • お金の勉強会に参加して金融リテラシーを高めて、投資を続ける感覚を身に付ける

投資に対して「危うい理解」をする地方の初心者

【質問】
今日も銀行に行ったら、お金を増やすためにNISA、iDeCoしませんか?と勧められました。無知な私には、専門用語が多くて説明の意味がわかりませんでしたが、毎度のように「NISAしませんか?」と言ってくるのには困っています。私でも簡単にわかる説明書ってないのですか?

前回に引き続き、お金の価値を高めるための「お金の運用」に頭を向ける手法について考えていきながら、運用の仕方を具体的に話したいところですが、詳細は過去の連載で何度か述べさせていただいていますので、今回は逆に簡潔な説明をすることで、お金の運用について理解を深めていくことにします。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

今こそリスクと向き合う時。投資先をどう選ぶ?

なぜ「簡潔な説明」が必要なのか? これは「金融リテラシーの欠如」が全てです。地方では「こんなこともわからないの?」が普通なんです。
我が宮崎県の例だと、金融知識や判断力で金融リテラシーを問う調査で全都道府県順位は40位(2019年)、投資に積極的な都市ランキングで43位(2022年)と下位。iDeCo加入率でも全国平均を下回っています。県民の間で金融リテラシーの情報量が圧倒的に足りず、お金の運用について人に聞いて調べたり勉強したりできる環境になっていません。

宮崎県
各種調査によると、宮崎県は金融リテラシーが全国平均を下回る結果となっている

岸田首相は「貯蓄から投資へ」と資産所得倍増プランを打ち出しました。個人の金融資産(そのほとんどが現預金)を株式などへの投資へ向けて、株式市場を活性化させて株価を上げて資産を増やそうとしているわけですが、株式投資が増えれば株価が上がると考えるのはナンセンスです。

さて、今回の相談内容は、なぜか直近で金融機関さんからの運用のお誘いが増えているという話です。それも、とある特定の商品を勧誘するために「海外型の投資信託をしませんか?」と言われているケースが多いようで、気になるところです。

大半の方が「わけがわからないから、とりあえず買った」「買わんよりもましかと思った」「積立だから安心」など、中には危うい理解をしている人もいて、先々が心配になります。間違いなく、相場の下落時に解約をして損するのが関の山です。
この状況では、よけいに投資離れに拍車がかかる結果となります。

政府も評論家も、投資は「自分で勉強して、調べることが大切」と言いますが、その全てが東京など都市部からの視点での発言でしかありません。金融リテラシーが不足している地方で、金融商品の販売が「金融機関ペース」になっている現状から、「投資家ペース」での購入にならなければ、いつまでたっても「貯蓄から投資へ」の実現に程遠いのは当たり前です。

金融商品の勧誘
金融機関の提案を受けて、仕組みをよく理解せずに投資信託を買ってしまう人もいる

下げ相場で解約が少ない投資信託のメリット

これからは、なぜ投資の初心者が損をしてしまうのかを解説していきます。

その前に、NISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)を説明します。リスク商品にわかりやすい説明書はありませんが、あえて簡単に言うと、NISAは「解約ができるリスク商品」、個人年金であるiDeCoは「解約できないが税金を取り戻すことができるリスク商品」で区別しておきましょう。
NISAもiDeCoも、どちらともリスク商品である投資信託を運用して資産を増やすための制度になります。どうしても投資の説明書などは専門用語が満載なので、銀行などで説明された時は、このことを少し頭に思い浮かべると、冷静に話を聞くことができます。

資産を増やすためにお金を預けるなら、どこがいいのか? 銀行の積立預金では、金利はほぼつかない。証券会社の商品は運用益が出る。保険は、金利はつかないが一部の外貨建て商品なら運用益が出る。そうなると、運用益が出るものでお金を回すのが普通の行動ではないでしょうか。

投資信託の見分け方として、下げ相場で解約が少なく、上げ相場でも解約が少ない投資信託は、今後も安定したパフォーマンスを上げる可能性が高くなります。特に下げ相場で多くの資金が集まっていると、投資信託のマネージャーは下がった株などをたくさん安く買うことができるので、解約が少ないことは重要です。

投資信託の現況は、商品の純資産総額・現金等の推移と基準価額の推移の比較で確認することができます。下げ相場で大量の資金で株などを買って現金が減り、その対価として基準価額が上昇したことが確認できます。

勉強会に参加して、投資を長く続ける感覚を身に付ける

地方の投資家は残念ながら、下げ相場で①大変だ、②損をする、③解約しかない、となり④損を確定してしまう、となります。この行為、投資に必要な金融リテラシーが不足している、「わけがわからないから、とりあえず買った」「買わんよりもましかと思った」「積立だから安心」の方々の大半がやってしまいます。

運用益が出る前に退散してしまう……。これでは運用どころではありません。投資(長期運用)でなく、投機(短期運用)になってしまっています。下がったから売る、上がったから買うでは利益がでません。下がったら買う、上がったら売るに頭をチェンジさせるしかありません。

運用を長く続けられる手段として、何でもいいので「お金の勉強会」などに参加して、できれば勉強の習慣付けをして、常に情報収集をしながら金融リテラシーを高めていくことが大切です。何回でも何回でも参加することで、長く続けられる感覚を持っていくしかありません。

勉強会
資産運用の勉強会は金融リテラシーを高められる絶好の機会なので、積極的に参加したい

私は定期的に、運用会社による勉強会で様々な情報を共有させていただいているのですが、運用会社のアドバイスに、「まず5万円で5本の投資信託を買ってみて、パフォーマンスを比べてみてください。そして気に入った投資信託を見つけたり、長く積立できる商品を探すのもありですよ」と言われました。なるほどね!
例えば銀行で1本、証券会社で1本、ネット証券会社で1本、運用会社の直接販売で1本など、コストも考えながら選んで、そして最後に、これからも運用を続けられそうな投資信託を探すのも手ですね。

メルマガ会員募集中

ESG特集