株主のお金は企業に蓄えられた資金(Stock)
福沢 隆雄
若葉マークの株式投資 代表
前回は投資と投機、ギャンブルの違いについて述べました。今回は株式投資の本質とその成り立ちについて説明したいと思います。
株式は英語で「Stock」といいます。Stockには「蓄える」という意味があります。
株主が投資した資金は企業に蓄えられ、企業はその資金を用いて事業を行います。企業は社会に必要な商品やサービスを提供するため様々なプロセスを経るのですが、株主から提供された資金を用いて、工場やビルを建てるなどして事業を行います。
投資家は、その資金の出し手として、株主の権利を有します。企業が事業を行い利益を上げると、企業は株式を購入した権利者である株主に、そのお礼として会社の業績に応じて配当を行います。
株主への配当は、投資に対するリターン(投資収益)となります。
企業利益が増加すると企業価値が上昇し、株主は、さらなるリターンを得ることができます。
株式投資とリターン(投資収益)
例えば、あなたがA社株式を1株当たり1,000円で購入したところ、A社は決算で1株当たり60円の利益を計上しました。あなたは、そこで20円の配当を受領します。するとリターンとして、配当利回りは2%(20円(配当金)/1,000円(買付株価))となります。
その後、A社の利益が上昇すれば、配当が増加し、企業価値もさらに上がっていきます。
・ある企業への投資は、購入代金をその企業に出資したのと同様の意味となります。
・投資企業への投資資金とリターンの感覚をつかめば、投資家として第一歩をあゆみはじめられます。株式投資のものさしは「株価、1株利益、1株配当」で把握しましょう。
・配当金支払いの考え方は企業により様々ですが、上場企業の比較的多くの会社が最終利益(税引き後利益)のうち3割を配当として、株主に還元しています。
・現在、東証一部上場企業の平均の配当利回りは2%程度です。
株式制度のはじまりと渋沢栄一
わが国の株式制度は、渋沢栄一によりもたらされました。徳川幕府最後の将軍、徳川慶喜に仕えた渋沢はパリ万博に出席する慶喜の弟(昭武)に随行し、1867年から1年半ヨーロッパに滞在しました。そこでは、特に株式制度と銀行制度を学びました。帰国後は、静岡での合本会社(株式会社の前身)の立ち上げや大蔵省に勤務し新しい国作りに深く関わりました。大蔵省退官後の1873年には日本最初の株式会社(現在のみずほ銀行)の設立を行いました。また、電力、鉄道、東京証券取引所など500もの企業の設立に携わり、日本の資本主義の父と言われています。
渋沢は、株式制度により、多くの人々の知恵と資金を集め、道義にのっとり活発な企業活動の展開と、自由で活発な市場経済の実現による豊かな社会の実現をめざしました。その功績により、2024年度から流通が始まる新一万円札の肖像に採用されました。
今日、株式についてはお金儲けの話が主体となっていますが、株式制度は社会のインフラを整え、経済を支え発展させる大切な原動力なのです。
次回から、株式投資で長期的にお金を増やす「株式貯蓄」にふさわしい企業を、どのような基準で選べばよいかについて考えていきたいと思います。