あらためて気が付いた……金への投資は意外とハイリスク?
筆者が金のETFに投資してみて、あらためて気が付いたことなのですが、金には利息・配当金・分配金などのインカムゲインがありません。インカムゲインがあれば、売買に伴う手数料などのコストはインカムゲインで相殺できる可能性があります。
インカムゲインは、さらに価格変動を和らげてくれるクッションのような役割も果たします。長く保有し続けた場合は、特に。
加えて、株式とは異なり、金には成長がありません。企業は今、新しい時代を生き抜こうと懸命です。そして、その懸命さは株価に反映します。それが企業の成長です。
インカムゲインがなく、成長もない……。金とは文字通り、塊(かたまり)に過ぎず、金投資においては時間は味方にならない、といえるのかもしれません。
インカムゲインと成長があれば、時間は強い味方となります。インカムゲインは積み上がっていくし、企業はより成長していきますから。まあ、中には時の流れについていけず、淘汰されてしまう企業もありますが。
ということで、金は純粋に価格変動で勝負するしかありません。さらに、金はドルで取引するのが、世界中のルールです。つまり、価格変動に加え、為替変動の影響も受けるのです。
インカムゲインも成長もなく、ただ、ひたすら価格変動と為替変動に晒されるだけ、それが金への投資というのが、実際に投資をしてみて得た、筆者の感想です。
もし、筆者の感想が妥当なものだとしたら、金への投資は国内企業への投資よりもリスクが高いともいえるかも知れません。
もっとも、企業には倒産リスクはあっても、金の価値がゼロになってしまうことはないと思われますが。
ところで、投資信託(ファンド)の中には、金だけを投資対象とし、為替ヘッジを行っているものもあるようです。つまり、為替ヘッジ付きの金投資ということになりますので、為替変動リスクをある程度、押さえることができるようです(為替ヘッジは、為替変動リスクを完全に排除できるものではありません。過剰な期待をなさらないように)。
為替ヘッジには「ヘッジコスト」がかかります。ヘッジコストとは、通貨同士の短期金利の差(金投資の場合なら、円とドルの短期金利の差)がコストになります。そして、そのコストはファンドの基準価格に反映します。
かつて、金本位制という名のもとに、各国のお金の価値の裏付けとして、その価値とともに、高い信用力のある金。世界共通の価値を誇る投資資産のハズですが、その割に、「リスクが高い投資資産では?」という疑問が、筆者は拭い切れずにいます。
ライフプランの中に金を組み込むか?
さて、お子様の教育資金の準備や、ご自身の老後資金の準備に、金(ゴールド)を組み込むのか否かについてです。
筆者が「金はリスクが高い投資資産では?」という疑問が拭い切れずにいるのは、これまでに述べてきたとおりです。
が、平和な時代の有事……金融危機や新型コロナウイルス感染症の世界的な流行のような……時には、やはり「有事の金」という、あの言葉を思い出します。
実は、本稿を書くに当たり初めて知ったことなのですが、金の価格の変動は株式のそれとは異なる傾向を示し、特に有事には、いわゆる逆相関になるようです(下記リンク参照)。
ですので、株式と併せ持つことで、有事の際には株式投資に伴うリスクをある程度抑えることが期待できるかも知れません。
とはいっても、上記の記事における金価格の比較対象は、アメリカの株価指数の「S&P500」です。つまり金と同じ通貨、すなわち同じドルで比べていますので、為替変動リスクがない点には留意が必要です。
いかがでしょうか?
お子様の教育資金の準備や、ご自身の老後資金の準備のために株式投資などを行っていらっしゃる方ですと、株式とともに金に投資をするのは有効かもしれません。
特に、ワンショット(一括)で株式投資を行っている方なら、金に、実際に投資するか否かは別にして、検討してみても良いかもしれません。
また、積立で株式投資をなさっていらっしゃる方も、長い期間続けていらっしゃる方なら、やはり実際に投資するか否かは別にして、金への投資を検討してみても良いかもしれません。長く積立を続けてきて、ゴールを目前に金融危機が起きたら大変なので、金でリスクヘッジを期待する、という考え方です。
まとめに代えて
さて、筆者がナゼ、金に投資したのか。実際に投資をしてみて、何を知り得たのか。今回の執筆に伴い、筆者自ら得た情報を基に書いてみました。
なお、金に限りませんが、実際の投資に当たっては自己責任に基づく判断をなさってくださいませ。
自己責任に基づく投資の判断とは、大きく分けて2つ。
株価や金価格が大きく下落してしまった時に、ご自身やご家族のライフイベントやアクシデントと重なり、多額の現金が必要になった。しかし、手元の現金だけでは足りず、泣く泣く投資資産を換金しなくてはならない、と言うことがないように。
また、株価や金価格が大きく下落した時に、「投資するんじゃなかった、だまされた!」と叫ぶことがないように。「ナゼ、下落したのか。そして、今後、どのような展開を想定し、どのような行動をするのか」を、ご自身で理解し、納得できるか、です。
筆者は金を保有し続けますが、これは筆者の判断に基づくものです。
(次回は11月2日を予定しています)