「孤独死」という単語を一度は耳にしたことがあるでしょう。社会的な課題であることはもちろんですが、賃貸物件経営者にとっても、収入の減少と費用負担が発生する可能性があるため、対策が必要な問題です。今回は孤独死についてと、それに備える孤独死保険について考えてみましょう。

  • 孤独死は高齢単身者だけの問題ではなく20~50代が約4割を占める
  • 孤独死に伴い発生する費用負担に備えるのが、孤独死保険
  • 住戸の修繕・清掃・消臭や遺品の整理・撤去などにかかった費用を補償

若い世代にも起こりうる孤独死の概要

孤独死とは、単身者が自宅内で亡くなった後に発見されることで、孤立死ともいいます。高齢化の進む日本では高齢単身者にとっての心配事として挙げられることも多いですが、実は高齢者だけの問題ではありません。

少額短期保険協会の「第4回孤独死現状レポート」によると、孤独死で発見された人のうち、現役世代といわれる20代~50代の割合は約4割を占めています。

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【図表1】男女別死亡年齢の構成比
男女別死亡年齢の構成比出典:少額短期保険協会「第4回孤独死現状レポート」

孤独死の原因については、男女共に病死が最も多くなっており、孤独死した人の半数を超えるとされています。病気は本人も気付かない間にかかってしまい進行している場合もありますので、発生を予見することは難しいでしょう。

ですので、居住者が若い世代中心の場合でも、いつ何が起きても不思議ではありません。居住者の孤独死は、賃貸住宅経営者にとっては、備えておかなくてはいけないリスクのひとつと言えるでしょう。

孤独死が発生した場合、賃貸住宅経営者には様々な費用負担が必要となります。例えば居室に破損や汚損があった場合には、その修繕や清掃などの原状回復工事費用が必要になります。

また、孤独死された人に身内がいなかった場合などには、居室に残されている家財の整理・処分も行わなくてはいけません。同じく「第4回孤独死現状レポート」のデータによると、原状回復工事にかかる費用は平均約36万円、残置物の処分費用は平均約21万円と、その負担は少なくはないようです。

こうした孤独死に伴い発生する費用負担に備えるのが、孤独死保険です。

部屋で孤独な男性孤独死は高齢者だけの問題ではなく現役世代にも起こり得る

大家さんを助ける孤独死保険とは

孤独死保険は、経営している賃貸物件で孤独死が発生した際の損害費用を補償する保険です。

居住者が住戸内で亡くなり、住戸の修繕・清掃・消臭や遺品の整理・撤去を行った場合に、実際にかかった費用と同額を支払限度額まで受け取れるのが、一般的な孤独死保険の補償となっています。支払限度額の金額は、50万円~300万円など保険商品ごとに異なる金額が設定されています。

このほかに、孤独死に関連して空室期間が発生するなど家賃収入が減少したときの補償や、臨時費用全般に備えられる一時金を受け取れる補償などを備えるタイプもあります。

また、最近では物件で火災が起きた際に備える火災保険で「家主費用特約」といった名称で、孤独死の補償が用意されているものも増えてきています。

加入は物件単位で、あるいは所有物件すべて加入しなくてはいけないものが多く、こちらも保険商品によって異なります。

【図表2】孤独死保険の一例
孤独死保険の一例孤独死保険の補償範囲は商品によって異なる

孤独死に関するリスクへの備えは保険で対応を

孤独死が起きてしまうと、費用の負担だけでなく、精神的な負担もかかることになります。ですので、居住者とのコミュニケーションの工夫や見守りサービスの導入、居室の設備拡充など、孤独死自体を防ぐ工夫を行うことも、賃貸物件経営者には必要かもしれません。

孤独死を予防する仕組みの導入と併せて、もしもの場合には上記のような保険で備えておけば安心かもしれませんね。

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