「現役証券アナリストが語る、やさしい株式投資のハナシ」の執筆者である佐々木達也さんの新連載がスタート。「株式市場の注目銘柄、その実力に迫る」と題して、株式市場で注目度が高い銘柄を掘り下げて解説していきます。第1回は、半導体製造装置の世界大手、東京エレクトロン(8035)を取り上げます。
- 東京エレクトロンは半導体製造装置の世界大手
- 半導体製造装置メーカーの売上高ランキングで国内1位、世界4位
- 2022年3月期は過去最高の売上高、利益が見込まれる
東京エレクトロンはどんな会社?
東京エレクトロンは半導体製造装置の世界大手です。
すべての物質は電気を通す「導体」、電気を通さない「絶縁体」、条件によって電気を通したり通さなかったりする「半導体」の3つに分類されます。半導体はその特性を活かし、デジタル信号を演算する「CPU」「MPU」などのロジック半導体、データを記憶できるメモリー半導体など用途によって様々ですが、スマートフォンや自動車、パソコン、家電など我々の身の回りのあらゆるモノに使用されています。
この半導体を作るために必要なのが半導体製造装置です。半導体の製造工程は1000工程以上にも及び、材料となるウエハーの状態から完成品が出来上がるまで1カ月~2カ月も時間をかけて非常に細かい加工を行います。
東京エレクトロンは1963年に東京放送(現在のTBSホールディングス)が出資をして株式会社東京エレクトロン研究所として設立されました。現在でも資本関係があることもあり本社はTBSが所有する東京都港区赤坂の「赤坂Bizタワー」にあります。かつては輸入販売の商社として事業を行っていましたが、自社で研究開発し、製造装置メーカーに転身したという歴史があります。
東京エレクトロンの強みは?
東京エレクトロンの強みは半導体製造装置の市場で大きなシェアを獲得している点です。2020年の世界の半導体製造装置メーカーの売上高ランキングでは国内企業では1位、世界では4位となっています。
半導体の製造装置業界は、半導体の性能の進化に伴い、非常に高い技術を持ったメーカーしか参入出来ないハイテクの塊ともいえる装置です。東京エレクトロンは前工程と呼ばれる材料のシリコンから回路を形成する工程で多くの世界シェアの高い競争力のある製品群に強みをもっています。
半導体の進化は年々加速しています。新型コロナウイルスの感染拡大はテレワークやオンラインでの様々な活動を大きく普及させました。また、スマートフォンやクラウドの普及により、膨大なデータの計算や記憶を支える半導体は足元で不足気味の状態が続いています。このため米国のインテル、韓国サムスン電子、台湾のTSMCといった世界のハイテクメーカーは巨額の資金を投じて半導体製造装置を発注し、量産設備をさらに拡大しようとする動きが続いています。こうした中で東京エレクトロンなど世界の半導体製造装置メーカーの業績はさらなる拡大が期待されています。
東京エレクトロンの業績や株価は?
東京エレクトロンの今期2022年3月期は売上高が1兆7000億円、純利益が3300億円と過去最高の売上高、利益が見込まれています。足元で広がりを見せている5G(次世代高速通信)やデータセンターの新設などを背景に半導体製造装置業界の市場規模は前年比で3割増とさらに加速する見込みとなっています。東京エレクトロンは昨年から新設した東北工場や山梨工場も稼働を開始しており、需要の増加に備えた生産体制を構築しています。
株価は4月に51300円の高値をつけてから足元ではやや調整していますが、8月5日の終値は47490円と上場来の高値圏で推移しています。一般的な投資単位は100株単位で、最低投資金額は約480万円弱とやや高額になっています。投資資金を抑えたい場合は、1株単位で購入できる証券会社を通じて投資するといいでしょう。
東京エレクトロンは値がさ(額面が大きい株のこと)ハイテク株として知られており、テクノロジー株が買われる局面では多くの場合上昇しています。半導体については今後さまざまな分野で需要が広がるとみられるため業績も先行きについて強気な見方が増えており、ハイテク株の動向をみるうえでも東京エレクトロンの今後の株価や業績動向に注目すべきといえます。