現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第45回は、豚骨ラーメン専門店「一風堂」などの複数ブランドを国内外で運営する力の源ホールディングス(3561)を取り上げます。
- 豚骨ラーメン専門店の「一風堂」を中心に複数ブランドの外食チェーンを運営
- 2008年にニューヨークに1号店を開店し、現在では15カ国で273店舗を運営
- 2024年3月期の業績予想は増収増益。株価は上場来高値を更新
力の源ホールディングス(3561)はどんな会社?
力の源(ちからのもと)ホールディングスは、豚骨ラーメン専門店の「一風堂」を中心に複数ブランドの外食チェーンを運営しています。
社名の「力の源」の由来は、あらゆるものを包んで満たすエネルギー帯の「フォース」に由来しています。顧客が望んでいることを察知する力、相手に伝わる表現する力など、様々なチカラの源泉に満ちている会社を目指したいとの思いから、名付けられました。
一風堂は1985年、福岡市中央区大名で創業者であり取締役会長の河原成美氏によって設立されました。当初は鳴かず飛ばずだった一風堂が、爆発的に成長するきっかけとなったのは、1994年に新横浜のラーメン博物館に出店したことです。関東1号店として豚骨ラーメンが好評となり、翌1995年には、東京・広尾に恵比寿店を出店しました。
その後は、テレビ東京の「ラーメン職人選手権」などのラーメン部門で3連覇となるなどメディアでも注目され、人気となり店舗網を全国に拡大していきました。
現在では、一風堂ブランドのほか、フードコート・サービスエリア向け業態の「IPPUDO RAMEN EXPRESS」、博多長浜ラーメンの「元祖名島亭」、博多うどんの「因幡うどん」などの外食ブランドを運営しています。
また、2008年にニューヨークに1号店「IPPUDO NY」を開店し、海外初進出を開始して以降、香港、台湾、オーストラリア、マレーシア、ベトナムにも進出し、現在では15カ国で273店舗を運営しています。
力の源ホールディングス(3561)の強みは?
力の源ホールディングスの強みは、ブランド力と経営判断です。
一風堂以前の豚骨ラーメンは、くせのある香りが特徴的で消費者によっては、好き嫌いが分かれていました。一風堂は、スープを長い時間煮出す独自の製法によって、臭みのないクリーミーなスープを実現し、女性などの支持を獲得しました。
海外でも日本の豚骨ラーメンは人気です。その知名度を活かし、ニューヨークやパリ、ロンドンなどの大都市の旗艦店を出店し、ブランド力をさらに高めており、各店舗でも行列ができるほどです。ニューヨーク店では、伝統的な豚骨ラーメンの「白丸元味」は、一杯15ドルと日本円で約2100円と日本の倍以上の値段ですが、多くのファンを獲得しています。
また、状況に応じた経営判断もスピード感があります。コロナ禍でラーメン業界も苦境だった時期には、テレワークなどで人の動きのあったロードサイドや郊外への出店を拡大しました。海外出店も加速させ、2028年3月期までに毎年20~30店舗の出店を予定しています。
そのほか、QRコードをスマートフォンで読み込むモバイルオーダーやタブレットオーダーなどデジタル化もいち早く推進し、生産性上昇につなげています。
力の源ホールディングス(3561)の業績や株価は?
力の源ホールディングスの今期2024年3月期の業績予想は、売上高が前期比9%増の283億円、営業利益が11%増の25億円を予想しています。
国内と海外でともにコロナ禍からの回復による既存店の穏やかな成長と新規出店による売上高の増加を見込んでいます。また、国内のECサイトでのラーメンやうどんの販売、コンビニエンスストアとのコラボ商品などの一風堂関連商品も伸びを見込んでいます。
6月23日の終値は1918円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約20万円です。
日経平均株価が33年ぶりの高値圏をつけ、利益確定売りの出る銘柄も多い相場状況においても、力の源ホールディングスの株価は上昇の勢いが衰えず、6月23日に上場来高値1927円を更新しました。
海外での成長が続く中、円安による増収効果も見込まれます。また、今期の想定為替レートは、1ドル=116円と足元の水準よりも15%程度保守的に見積もっていることも安心材料となります。
外食業界はインフレや人件費で苦境の企業も多いなか、そうした逆境を乗り越えて収益を拡大できそうな企業として注目しています。