「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回からは、2024年に制度が変わるNISAを特集。第1回のテーマは「NISAと社会保険制度」です。

  • 老齢厚生年金や老齢厚生年金は「世代間扶養」と言われ、現役世代が支えていた
  • 最近になって社会保険制度の方針が転換。世代内扶養、さらには逆世代間扶養に?
  • 老後の自己負担割合を減らすには、NISAで非課税所得を増やすのが有効

これからは「NISAだ! なぜか?」と問うたら、答えは「坊やだからさ」ではありません。
「戦いは二手先、三手先を読んで行うものだ」とは、あるアニメのセリフですが、なかなかの名言ですね。投資でも、同じことが言えるのではないでしょうか? 2023年も、折り返しを過ぎましたが、まだ半年近くもあります。

翌年の2024年の、いわゆる新NISA開始時期が近づいてきました。

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ところでNISAについて、これまで「NISAは損益通算の機会を得られない」や「株式投資信託は譲渡益が生じても、譲渡所得が非課税となるケースもある」など、筆者は本稿において、NISAについて否定的な見解を明示してきました。

NISAを利用しなくても非課税となる投資の例

しかし、翌2024年の、いわゆる新NISAの制度の詳細を知るにつけ、また社会保険制度の将来を占うたびに、NISAの必要性を強く感じるようになりました。

そこで、本稿では以後、当分の間、「NISA総力特集」をお届けしたいと思います。
まずは「変わる社会保険制度の方針」ですが、果たして、NISAとどのような関係があるのでしょうか?

歴史の中の年金制度

1961年に国民皆保険および国民皆年金が完成し、事実上、全ての国民が何らかの社会保険制度に組み込まれたのは、今となっては歴史の一コマに過ぎないお話です。当時の男性の平均寿命は65歳、女性のそれは70歳です。お気付きの通り、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受け取り開始年齢が65歳という根拠にもなった数字です。では、女性の方はというと、「年金受け取り開始の年齢は5年繰下げることができる(現代では10年繰下げられます)」という点の根拠になっています。

さて、この点を掘り下げると、「では、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受け取り開始の年齢が、将来は80~90歳になってしまうのでは?」という懸念も出てきそうですが……。現代の平均寿命を踏まえれば……ご懸念は否定できませんが、当面は、その懸念はなさそうです。

なぜ、そう言えるのか? 「老後の社会保険制度の方針」が変わったからです。私たちの将来の資金設計は、「老後の社会保険制度の方針」を踏まえたものにする必要がありそうです。

変わる社会保険制度の方針

老齢厚生年金や老齢厚生年金は、「社会的な仕送り」や「世代間扶養」などと説明がなされてきました。つまり、それまでは個人の責任で、あるいは家庭で養ってきた高齢者の生活を、核家族化の進展とともに、「高齢者の生活を社会全体で支えましょう」という方針を具現化したのが、現代の年金制度です。現役世代が納めた国民年金保険料や給料から天引きした厚生年金保険料が、同じ時代を生きる高齢者が受け取る年金の原資になっています。

その社会保険制度も21世紀に入り、介護保険制度が加わり、超高齢社会に向け拡充したわけですが、平成の終わりごろから、今度は社会保険制度そのものではなく、方針が変わり始めました。
「世代間扶養」に「世代内扶養」という考え方が加わりました。世代間扶養が「支える現役世代と支えられる高齢者」なのに対し、世代内扶養は「高齢者同士の支え合い」です。

つまり、定年後も高齢者は年金をもらいながら、70歳までは厚生年金保険料を納め続けます。そして、年金受給者が受け取る年金から介護保険料や国民年金保険料、それに後期高齢者医療保険料、場合によっては住民税が天引きされるのです。さらに、介護保険や公的な医療制度を利用する時にも、所得の額によっては現役世代と同じく3割の自己負担を求められることもあるのです。

高齢者を支えるための負担を高齢者にも求める、これが「世代内扶養」です。

【図表】医療保険・介護保険の自己負担の上限額
75歳以上 70~74歳 70歳未満
介護保険+
後期高齢者医療
介護保険+被用者保険
または国民健康保険
年収約1160万円~ 212万円
年収約770~約1160万円 141万円
年収約370~約770万円 67万円
~年収約370万円 56万円 60万円
市町村民税世帯非課税等 31万円 34万円
市町村民税
世帯非課税
かつ年金収入
80万円以下等
本人のみ 19万円
介護利用者
が複数
31万円

年収が高ければ自己負担額も高くなることがわかります。
出所:厚生労働省

いよいよ逆世代間扶養に?

いわば「子育て世帯に限定したベーシックインカム」ともいうべき児童手当ですが、その財源の中に「(公的な)医療保険制度の仕組みを活用」とあり、その中には高齢者の医療費の自己負担増の可能性もあるようです(=まだ定かではありませんが)。もし実現すれば、これは高齢者が子育て世帯のベーシックインカムを支える、「逆世代間扶養」ともいうべき現象とも言えるでしょう。

社会保険制度の方針の変化に、どのように臨むか?

「世代間扶養」で始まった社会保険制度も、平成の終わりごろに「世代内扶養」に、そして、令和に入ってからは、むしろ「逆世代間扶養」すら聞こえてくるようになりました。
この社会保険制度の方針の変化に賛成の方も、もちろん、いらっしゃるでしょう。

時間はみな平等なら、寄る年波も皆同じ。できることなら、無理のない働き方で、穏やかな老後を過ごしたいものです。また、税金や社会保険料の支払いを控えめにしたとしても、結局、買い物やサービスの利用で消費税を払うことになります。

小さい子どもと家族
高齢者の医療費の自己負担増が児童手当の財源になる「逆世代間扶養」も将来的にはありうる

老後の社会保険料は課税所得で?

老後の社会保険料は、74歳までの国民年金保険料、65歳以上の介護保険料、75歳以上の後期高齢者医療保険料、以上の老後の社会保険料の課税所得で決まります。そして、65歳以上の介護保険の自己負担割合や、70歳以上の医療費の自己負担割合課税所得で判断されます。

老後の社会保険料や介護保険や医療費の自己負担割合を減らすためには、課税所得を減らすことです。しかし、それでは暮らしが厳しくなるだけです。ですので課税所得を減らす一方で、非課税所得を増やすことです。

働いて稼げば給与所得や事業所得。家賃や地代は不動産所得。株式などの配当金は?

稼ぎや利益にかかる税金が所得税ですが、NISAは株式などへの投資による利益(譲渡所得や配当所得)が非課税で、しかも確定申告が不要です。老後の社会保険料や自己負担割合を減らしつつ、豊かな暮らしを送るためには、投資の利益で非課税所得を増やす。それを具現化したのがNISAなのです。

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