「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は「NISAではない投資で利益が出ているのに、課税されない例」をもとに、「譲渡損失」について考えてみます。

  • ドル建て社債の償還で利益が出たのに、課税されなかった
  • 投資の利益を外貨のまま受け取った場合でも、税金は円転して計算する
  • 為替差損による譲渡損失は、利息や配当金などほかの利益と損益通算ができる

皆さん、こんにちは。
これまで筆者はMonJaにて、日本のインフレの可能性や海外との賃金格差を提起してまいりました。最近になり、ようやく、その提起が脚光を浴び始めた感があります。

もし、万が一にでも日本銀行の目標「2%の物価上昇」が実現したら……

それでもインフレになると思う。物価の上昇から現金の価値を守るには?

さて、本稿は、タイトルからして突拍子もない提起かもしれません。

ドル建て社債の売却益が非課税に

先日、筆者は米ドル建ての外国社債が償還(=満期)を迎えました。
【図表1】を参照してください。社債、つまり債券は償還を迎えると「額面価格」の100ドルで現金化されます。ちなみに、社債はドルのまま現金化し、円に転換(円転)しませんでした。

【図表1】ドル建て社債の購入・償還の条件(円高になった場合)
購入 価格① 99.50ドル
為替レート② 112.50円
単価 (①×②)=③ 11,193円
償還 価格④ 100.00ドル
為替レート⑤ 111.00円
単価 (④×⑤)=⑥ 11,100円
損益 価格差 (④-①) 0.5ドルの売却益
為替レート差 (⑤-②) 1.5円の為替差損
単価差 (⑥-③) 93円の損失

筆者が現金をドルのまま受け取ったのは、なぜでしょうか? 為替差損を避けるためでもありますが、後日、NY市場の株式を買うためです。また、NY市場の株式を買うことがなかったとしても、ドル建てMMF(短期の国債や公社債などに投資する投資信託の一種)で運用を続けることができます。
ドルMMFなら、わずかとはいえ、預金よりも高い利息が付くうえに、価格変動がほとんどありません。時間を無駄にせず、円安ドル高のタイミングを待ち続けることができるのです。

なお、筆者はこの社債を「額面(パー)価格」の100ドル(④)よりもわずかに「安い価格(アンダーバー)」の、99.5ドルで購入しています(①)。ですので、償還時には額面価格と購入時の差額0.5ドルが利益となります。
この利益に対して、20.315%の課税がなされるのは、皆さん、ご存知の通りです。

しかし、筆者は、このドル建て社債の売却による利益には課税されていません。理由は、為替差損が生じたことによるものです。これは不思議ですね。
筆者は先述の社債の償還による現金をドルのまま受け取っているので、1.5円の円高ドル安になっても、実際の損失は出ていないはずです。

なぜ、ドル建て社債の売却益に課税されなかったのでしょうか?

ドル建て社債の売却益が非課税になった理由と、貴重な「譲渡損失」

株式・債券・保険のいずれを問わず、ドルなどの外貨建て資産は、利益や損失を円転して税金を計算します。たとえ、受取時に円転せず、外貨(筆者の場合はドル)のまま受け取ったとしても、です。

ですので、税金の計算上は為替差損が生じたために、売却による利益が生じていたとしても非課税なのです。

筆者は事実上、投資元本+利益が、そのまま手取り額になりました。しかも、為替差損によって「譲渡損失」という貴重な財産まで得ることができました。
譲渡損失が貴重な財産とは、何とも不思議ですね。

先述の、筆者が償還を迎えた社債には利息があります。この利息にも、通常なら20.315%の課税がなされます。
この利息への課税に対して、譲渡損失が活きてきます。いわゆる損益通算によって、利息に対する税金を取り戻すことができるのです。

譲渡損失は、債券の利息や株式の配当金だけでなく、債券や株式などの売却に伴う利益とも通算することができます。

逆のケースを考えてみます

もちろん、逆のケースもあり得ます。
先述の筆者の社債売却ケースにて、為替差損ではなく、為替差益が生じた場合はいかがでしょうか?
【図表2】を参照してください。

【図表2】ドル建て社債の購入・償還の条件(円安になった場合)
購入 価格① 99.50ドル
為替レート② 112.50円
単価 (①×②)=③ 11,193円
償還 価格④ 100.00ドル
為替レート⑤ 114.00円
単価 (④×⑤)=⑥ 11,400円
損益 価格差 (④-①) 0.5ドルの売却益
為替レート差 (⑤-②) 1.5円の為替差益
単価差 (⑥-③) 207円の利益

額面と購入時の差額が0.5ドルの利益となるのは先述と同じなのに加え、為替差益が1.5円もありますから、税金(207円×20.315%)が生じることになり、手取りが減ることになります。
もし、為替差益が生じる場合でしたら、むしろ円転して受け取った方が良いかもしれません。

まとめに代えて

外貨建ての社債ですから、そもそもNISAの対象外ですし、iDeCoとも無関係です。しかし、先述の「譲渡損失を損益通算する」というお話を思い出してください。損益通算の対象となる株式や株式投資信託がNISAに入っていたのでは、損益通算することができません。

「投資初心者向き」というフレーズと共に紹介されることもあるNISAやつみたてNISAですが、このフレーズに違和感を覚えるのは筆者だけかも知れません。もし、本稿に記した損益通算が「投資初心者向きではない」のでしたら、ほかの口座と損益通算ができないNISAやつみたてNISAは、投資初心者向きなのでしょう。

筆者がNISAを利用しないのは、ひとえに「損益通算の機会を逃したくない」からです。例え、「課税上は損失であったとしても、現実の利益を得ることが出来れば、それで良い」と言うのが筆者の考え方です。現実の利益とは、手取り額のことです。

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