宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。前回は会計の「資産」と「負債」について学びましたが、今回は「収入」と「支出」にスポットを当てて、今使えるお金をどう確保すればいいかを考えます。
- 収入と支出を見ればキャッシュフローがわかり、使えるお金を管理できる
- 収入には勤労所得と不労所得がある。資産に働いてもらうのが不労所得
- 支出は税金も含めて改善が可能。収入と支出から「純資産」を確認する
資産と負債に加えて、収入と支出の関係も見る
【質問】
前は家内からもらう小遣いの範囲内で楽しめたのが、お金が足りなくて毎月どんどん苦しくなるばかりで、楽しむどころではありません。月を追うごとに大変になっています。やりくりは家内に任せていて、小遣いの値上げを言うと怒られるし……。お金のやりくりを変えるとか、何か打開策はありますかね?
前回、相談者のお小遣いの使い道について、企業の財務諸表における「資産と負債」という大きな観点から説明していきました。家計の資産と負債のバランスを見るために、今までどこかで聞いたことがある「貸借対照表」の考え方を当てはめてみることを知ったと思います。
貸借対照表(バランスシート、BS)は、現時点でどのくらいのお金を持っているのかと、どのくらい借金があるのかを知るための会計の指標です。貸借対照表では、あなたの資本や純資産も計れます。純資産は、資産から負債を引くことにより出る差のことです。
もう少しかみ砕くと、純資産は、「あなたの負債(ローン、請求書など)を支払いした後に、残った資産がどのくらいあるのか? もしかして足りないのか?」を見るものです。金融機関からすれば、それが「あなたの価値」とも言えるでしょう。これが理解できれば、今使えるお金と今の借金の関係について迷うことはありません。
純資産(あなたの現在の最大使えるお金)について詳しく知るために、今回はもう少し細かく「収入と支出」の関係について理解を深めていこうと思います。資産と負債、そして収入と支出を一緒に考えることにより、わかることがあります。それはお金の流れ(キャッシュフロー)です。もしもあなたが自身のキャッシュフローをハッキリと理解しているならば、それを適切に管理することで、使えるお金を増やすこともできるはずです。
収入には勤労所得と不労所得がある
収入とは、自分の懐に入ってくるお金のことです。以下に収入源として考えられるものを挙げていくと、
①給料
②利息、利回り
③配当金
④キャピタルゲイン(資産価値の上昇による利益)
⑤インカムゲイン(資産から得られる②③以外の利益)
⑥原稿料、講演料
などが考えられます。
一般的に、定期的に入ってくる収入は給料しかないと感じがちですが、収入には主に2つのタイプがあります。1つは働くことで得られる所得、つまり勤労所得。そしてもう1つが、不労所得です。
勤労所得は課税率が決められている
勤労所得は、仕事をすることで雇用主側から支払われる給与です。そして、勤労所得は当初から課税率が決まっており、収入が多額になるほど高い税金を払うものです。「安定した職に就いて真面目に働くことが最善だ」という雇用者のアドバイスに耳を傾ける労働者は、「働き蜂」のまま人生を終えるのかもしれません。でもご安心、日本のリテラシー教育は始まったばかり。まだまだこれから、あなたも学ぶことができます。ネガティブ思考よりポジティブ感を持って行動しましょう。
資産を働かせるのが不労所得。税金も調節できる
そして、税金がかからないように勘案できる収入が不労所得です。不労所得とは、会社の経営者や不動産資産によって創り出されたお金のことです。例えば、不動産所有者は普段の生活をしながら、会社で残業するなどバンバンとお金を稼ごうとしていません。していることは、物件の管理です。あなたのために、物件を通じて「お金に働いてもらっているだけ」の状態です。
収入分類の②~⑤が不労所得に当たり、これらは株式投資や、NISAやiDeCoといった非課税の投資などを含む金融商品の組み合わせ(ポートフォリオ)で得られるものです。「えっ」と思われるでしょうが、ここには銀行口座の利息も入ります。
別の言い方をすると、勤労所得と不労所得の収入の違いは、お金を得るためにあなた自身が働くのが勤労所得。そして、あなたの生活環境を変えず、自分の資産をあなたのために働かせることができるのが不労所得となります。
支出は改善できる。余計な借金を背負わない
そして支出です。支出とは、そのままあなたから去っていくお金のことで、主なものを分類すると以下になります。
①クレジットカードの支払い
②住宅ローン
③自動車ローン
④楽しむための支払い(旅行など)
⑤生きるための支払い(水道・光熱費、食料品ほか)
⑥税金
稼いだお金から、使うお金を払う。当たり前のことがなぁなぁになった結果、余計な借金を背負うことが多々あります。昔から言われているのは、お金持ちは現金での一括払いが多く、カードで分割払いをしないということです。これはまさに理にかなっている行動だと思います。カード会社はポイントが貯まる利点を言いますが、「使いすぎる」という欠点と、見えない利息を支払っていることに気づくことが大事です。利息を払ってまで買う価値があるかないかを考えたうえで、カード払いを検討すべきです。
例えば旅行の計画を立てる際に、お金は現金払いにしようと考えたならば、次のステップとして、そのお金をどう用意するかを検討することになるかもしれません。旅行する費用を、何らかの方法で稼ぎ出すことを考えるでしょう。現金払いをするなら、手元に「使えるお金」が必要です。支出だけでなく、収入にも気を配る必要があります。
①~⑤の支出を改善できることはわかりますが、⑥を減らすことは絶対無理だと思っていませんか? 資産家の多くは税金こそが重要なことがわかっています。そして、支出を削ることだけが得策ではなく、使うことも善であることも理解しています。
住宅ローンも税金も、支出はすべて改善できる
貸借対照表の「資産」と損益計算書の「純資産」
企業の財務諸表で、収入と支出を測定する指標を損益計算書(PL)といいます。要は企業が儲かっているのかどうかを探る書類とも言えるのですが、家計においては、「正しくやりくりができているか?」を計るものだと思ってください。損益計算書は、1カ月ごとというように定期的に作成すると、家計の状況を測ることができます。
貸借対照表と損益計算書は、お互いに関係があります。貸借対照表の項目で「資産」としていいのか、または「資産」としての価値がないものなのか、損益計算書を見れば決定できます。損益計算書は総所得から記入して、残るお金(純資産)で終わります。総所得とは、仕事などを通じて得られた全てのお金のことであり、残るお金(純資産)とは、総所得から全ての支出を差し引いた後の余ったお金です。簡単に言うと、この純資産が今使えるお金であり、これから貯金できるお金ともいえるでしょう。
次回は、貸借対照表と損益計算書の相互関係からお金の流れを確認し、経済的自由の位置付けはどうなっているのか?を見ていきます。