「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、株式がどれだけ売買されたかを表す「出来高」について考えてみます。

  • その日売り買いされた株式の数を示す「出来高」は、銘柄ごとの差が大きい
  • 出来高が少ない銘柄は、成行注文では思わぬ高値で買ってしまうことが起きる
  • 急に出来高が増えた銘柄は「仕手筋」が絡んでいる可能性があり、注意が必要

次の首相を決めることにもなる可能性が高い、自民党の総裁選挙。まさか、その余波とも思えませんが、筆者の『もし、万が一にでも日本銀行の目標「2%の物価上昇」が実現したら……』が、「週間」および「24時間」の、それぞれのランキングにノミネートしています。理由はともかく、記事に人気が出るのはありがたいことです。

もし、万が一にでも日本銀行の目標「2%の物価上昇」が実現したら……

筆者は総裁選挙の動向に関わらず、2%を超える物価上昇のカウントダウンが始まっていると思っておりますが。

首相を決めることにもなりそうな総裁選挙ですが、投票できるのは自民党に連なる方に限られています。国民の人気と自民党内の人気とでは、ギャップがあるのでしょうか?
次の首相には、ぜひとも新型コロナウイルス感染症を収束に導いていただきたいものです。収束後は旅行や宿泊、外食やお酒などに、夢を膨らませていらっしゃる方も多いでしょう。

ところで、旅行の宿泊先といえばホテルが選択肢になろうかと思います。
多くの方が羨望と憧れの眼差しで見つめるホテルと言えば?
やはり帝国ホテルでしょうか?

憧れのホテルも、投資の世界では……

しかし、意外なことに帝国ホテルは、株式投資の世界では、その関心がイマイチです。2021年9月10日の出来高は8,900株しかありません。

帝国ホテル
東京の高級ホテルとして真っ先に名前が挙がるのがこの「帝国ホテル東京」。運営するのは株式会社帝国ホテルで、東証2部に上場している
picture cells / Shutterstock.com

出来高とは、その日に取引、つまり売り買いされた株式の数です。帝国ホテルは100株が取引単位ですから、どんなに多く見積もっても、売買した人数は178人(売った人が89人と買った人が89人)しかいない、ということです。

ちなみに、2021年9月10日、最も出来高が多かったのが東京電力ホールディングスで71,043,200株です。先述の帝国ホテルに比べると、7,982倍の出来高です。

【図表】2021年9月10日の国内株式の出来高上位銘柄
市場 企業名 出来高
東証1部 東京電力ホールディングス 71,043,200
東証1部 三菱UFJフィナンシャル・グループ 70,695,400
東証2部 アジア開発キャピタル 47,591,500
東証2部 音通 39,114,300
東証1部 ソフトバンクグループ 27,781,600
東証1部 ルネサスエレクトロニクス 27,528,900
東証1部 ランド 23,255,500
東証1部 Zホールディングス 22,449,500
東証1部 ソフトバンク 20,799,000
東証1部 ENEOSホールディングス 18,713,100
マザーズ BASE 15,754,300

表は東京電力ホールディングスを含む、出来高の多い企業です。なお、ETFやJリートは除きました。また逆に、同じ2021年9月10日、一日の出来高が最も少ない100株という企業も32社ありました。
一日の出来高が100株ということは、先の帝国ホテルよりも、もっと関心が少ない、取り引きに参加した人が2人(売った人が1人、買った人が1人)ということになります。
一日の出来高がゼロという企業は、筆者は、今まで見たことがありません。

投資対象を出来高だけで決める人は、まず、いらっしゃらないと思います。
しかし、出来高が少ない企業に投資をする場合には、気に留めておいた方が良いかもしれません。

出来高が少ないと何が問題なのか?

どうしても欲しい企業の株式がある場合、価格を指定しない「成行」で発注すると思います。しかし出来高が少ない企業の場合、成行注文では思わぬ高値で買ってしまうことになるかもしれません。また、自身の入れた買い注文の数が多かったりすると、自身の買い注文が株価を吊り上げてしまう可能性もあります。

では、思わぬ高値で買うことを避けるため、指値で買い注文を入れたとしましょう。出来高が少ないと、今度はいつまでも買い注文が成立しないかもしれません。

これは逆の売り注文でも、同じことが言えます。
保有している株式を、どうしても売りたい、現金にしたいという時に、成行で売り注文を入れたとします。思わぬ安値で売れてしまうかもしれません。出来高が少ない株式では、売却で利益を見込んでいたはずが、損失の確定になってしまうことだってあり得ます。

いえ、売れればまだ良い方で、成行注文でも売れるまでに何日も時間がかかったり、売れないまま注文の期限が来てしまったとしても不思議ではありません。

急に出来高が増えてきた場合も注意が必要

今まであまり名前を聞かなかったけど、最近になって出来高が増え続け、株価も上昇傾向が続いている企業があったとします。その企業は、実は投資の世界では密かに人気が出始めた企業かもしれない、と判断したくなりますが、このような企業には注意した方が良いかもしれません。
「仕手筋」と言われる、短期間に投機的な利益を狙う人のターゲットにされてしまっている可能性も否めないからです。
仕手筋は、ある程度株価が上がると、今度は売り続けます。すると、株価は急速に下落し続けます。

仕手筋が入るような株式への投資は避けた方が良いです。
少なかった出来高が急に増えたら、注意した方が良いでしょう。

出来高は、いったいどのくらいが目安なのか

出来高に、「○株なら安心です」といった、ハッキリとした目安はありません。
また、投資先を選ぶに当たり、出来高が全てということでもありません。
とはいえ、先に述べた帝国ホテルの出来高は少ないという印象も拭えません。

出来高を含め、他の指標も併せて、トータルで投資の是非を検討した方が良いでしょう。

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