顕在化されなかった「働く妊婦さんをサポート」というニーズ

実際にサービスを立ち上げて、妊婦さんや企業からの反響や、関さんがあらためて気づいたことなどありますか?

関さん 妊婦さんからは、「妊娠中も運動したいけれど、どこまでしていいのか、何をしていいのかわからない」といった声や、妊婦さんに関する情報が世の中にあふれすぎていて、自分に合った情報にたどり着くのが難しくて困っているというお声をいただいていました。サービスを利用すれば専属の助産師が付いて、妊婦さんに適した情報提供や運動の推奨ができるようになります。

企業様に関しては、妊婦さんの声が経営層に届きづらい現実を目の当たりにしました。妊婦さんにとっては、「今まで先輩たちはがまんしてきたから、つらくても声を上げづらい」という状況があるようです。また、組織の中で決定権があるのはたいてい50代、60代の男性で、育児に携わってこなかった方が多いので、今の妊婦さんとの意識のかい離が大きいことも、働く妊婦さんをサポートするサービスへのニーズを顕在化しにくくしていると思います。

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最近では国も「女性活躍」を推進していますし、実際に女性の社会進出が進んでいる一方で、「仕事もがんばりたい、でも妊娠もあきらめたくない」という方をサポートできるサービスがなかったことを、起業してあらためてわかりました。

会社で働く女性
妊娠に関する女性の悩みは、なかなか経営層に届きづらい現実がある

妊娠後も仕事をがんばりすぎてしまうと、切迫早産など予期せぬことが起きてしまうこともあります。だからといって、安静にしすぎることも良くありません。妊婦さんが無理なく働けるよう社会がサポートすることが、女性活躍を推進するためには不可欠だと思います。そのために、MamaWellのサービスをもっと普及させていきたいと考えています。

親世代にとっての常識が、現代では正しくない場合もある

世の中には、妊婦さんをめぐる誤った情報や迷信があふれているように見えます。医学に基づいたアドバイスをしてくれる助産師さんの存在は重要だと思いました。

関さん 確かに、間違った情報がまるで正しいことであるかのように広まってしまうこともあります。それに加えて、今の妊婦さんのお母様が出産された20年、30年前には常識とされていたことが、今では正しくない場合もあります。「母親が言っているから正しい」と信じて、間違ったことをしてしまうケースもありえます。

創業時から掲げている私たちのミッションは、「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」ことです。今後も正しい情報に基づいたサポートを続けていきます。

エビデンス、つまり医学的な裏付けを最も大切にしていることは、サービスを受ける側としては安心できますね。それをデジタル技術によって、全国どこでもできるのもうれしい点だと思います。

関さん 妊婦さんの仕事量や健康状態はひとりひとり異なるので、個人に寄り添えるようにデジタルヘルス技術を活用しているのは大きな特徴だと思います。そもそも、医療機関では妊娠中の半分以上の期間で、月に1度しか健診に行けないんですね。でも妊婦さんにとっては、1カ月もあれば状況が大きく変わってしまうものです。助産師との毎週の面談やフィードバックで、医療機関だけでは難しいきめ細かなサポートを実現しています。

私たちのサービスは妊婦さんだけでなく、その旦那さんもサポートできる体制になっています。実際に、助産師との面談に毎回旦那さんも同席されて、妊婦さんとの生活の中で旦那さんが困っていることを伝えて、それに対して助産師がアドバイスをするケースもあります。

妻が妊娠すると、旦那さんもストレスを抱えてしまい、仕事のパフォーマンスが下がりやすくなるという研究結果もあります。医療の専門家が身近にいることは、妊婦さんだけでなく旦那さんも安心できると思うので、夫婦での相乗効果も期待できるのではないでしょうか。

関まりかさん
「MamaWellのことを、もっと多くの方に知ってほしい」と語る関さん

安心・安全で楽しい妊娠生活ができる社会にしたい

今のMamaWellにとっての課題は何でしょうか?

関さん やはり、私たちのサービスを広く知っていただくにはどうすればいいのか、ということですね。今は宣伝になかなかお金をかけられないという現実もありますし、企業様も妊婦さんも、そもそもこういうサービスがあることを知らない方がほとんどなので、ネットで検索するというアクションも起きにくいのが現実です。

20代前半の女性にとって、妊娠や出産は「不安しかない」という声をよく聞きますが、MamaWellのようなサービスがあることを知っているだけでも心強いと言っていただく機会も増えました。

今後は対象を拡大して、妊活期の女性や、妊娠適齢期の女性をサポートするようなサービスも考えています。今は「仕事をがんばりたい妊婦さん」に特化したサービスになっていますが、女性のキャリア形成をより後押しできるような、新たなサービスを打ち出していけたらと思います。

関さん自身も出産を経験されました。妊娠や出産に対して不安を抱えている方や、妊娠や子育てと仕事の両立を前向きに考えている方に向けて、先輩としてメッセージをお願いします。

関さん 私自身、妊娠、出産は楽しいもので、人生を豊かにするものだと思っています。妊娠や出産を望むすべての女性にとって、安心・安全で楽しい妊娠生活ができる社会にしていきたいと考えています。

女性の人生において、出産は人生で数えるくらいしかない重大なイベントです。その初回でしんどい経験をしてしまうと、「2人目はいいや」となってしまいます。でも妊娠や出産が楽しい経験であれば、2人目を産みたい、3人目も育ててみたい、と思えるようになると思います。私たちのサービスが、少子化問題の解決にもつながればと考えています。

【図表】夫婦の平均理想子ども数と平均予定子ども数の推移
夫婦の平均理想子ども数と平均予定子ども数の推移
出所:国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」をもとにMonJa編集部作成

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