700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家、そして彼らと関わる様々な業界人たち・・・と書き手のバトンは次々に連なっていきます。ヒット番組やバズるコンテツを産み出すのは、売れっ子から業界の裏を知り尽くす重鎮、そして目覚ましい活躍をみせる若手まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜くユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第189回は、強い営業力・企画力・プレゼン力・条件交渉力を武器とする、放送作家の宇野 宇さん。

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大阪弁とりあえずの文法

宇野 宇さんの写真宇野 宇
放送作家
日本放送作家協会会員

東京・砧にあるTMC(東京メディアシティ)の廊下で、撮影の合間に向こうから歩いてこられた古畑任三郎(田村正和氏)と、偶然すれ違ったことがあります。
若い頃から田村正和氏のモノマネは得意でしたが、その日以来、古畑任三郎がボクの十八番になりました。
そこで今日は、その古畑任三郎のモノマネで行かせてもらおうかなと思います。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

え~、お金と言えば、まず思い浮かぶのは、大阪人でしょうか。
『儲かりまっか』、あれ、実は質問ではありません。疑問でもない。
ですから『?』は付きません。
ただ聞いてみた、それだけなんです。
『儲かりまっか』に対して『ぼちぼちでんな』、コレもそうです。
返事ではありません。ただ言ってみたかっただけのことなんです。

大阪人の「人の心を平気で触る面白さ」の本質、とでも言うんでしょうか。
早い話、適当です。皆さんが大阪に旅行をして、もし誰かに、『どないでっか』なんて馴れ馴れしく聞いて来られたとしたら、『まあまあでんな』と即答してください。
え~、このやりとりも、全然意味がありません。
そして、『ほんまでっか』も、『ほんまでっせ』も、『ほんまでんがな』も、時間の無駄です。

これが、「大阪弁とりあえずの文法」なんです。
え~、文字数を無駄にしてしまいました。
実は、大事な話はこれからなのに、こんな展開、如何なものでしょうか。

値段で昇格する味と人間性

え~、大阪人は値段に左右されます。
オオタニ選手ではありませんが、生まれた時から二刀流を使い分けているんです。
まあ、オオタニ選手がいつから二刀流だったのかは、この際、ちょっとヨコへ置いておきましょう。

トラリピインタビュー

例えばですよ~『あんた、このシュウマイ、なんぼすると思てんの、めっちゃ高かったんやで』なんて言って出されると、『ほんまやな、見た感じ普通とちょっとちゃうな』と、まずボケなくてはいけません。
そして次の瞬間、口にシュウマイを入れたまま目を丸くして、「あんた、これ死ぬほどウマいがな~」と、死にそうな顔でツッコむのです。
値段を聞いただけで、大阪人の心の中では興奮状態が続き、そんなに美味しくないシュウマイが、驚くほど美味しい高級シュウマイに、瞬間的に昇格してしまうのです。
え~、シュウマイだけではありません、イチゴやブドウも同じです。

大阪のイメージ大阪人の『儲かりまっか』『ぼちぼちでんな』の会話に、ほとんど意味はない。
写真:kuenlin / Shutterstock.com

え~、逆にこんなことも。
『コレ安かったんやで』と言って見せられると、高いモノを安く買えた大阪人のお手本ということになってしまうのです。
また、物を貰う時も、『これ貰い物なんやけど、よかったら~ええよな』と言うと、『かまへんかまへん、タダやろ、ウチもよそへ回すかも知れへんし』この気を使っているのか、いないのか、全然わからないのが、大阪では正しいコミュニケーションなのです。

大阪人はどんな状況でも、それなりの理屈をつけ、なんだかんだと言いたいだけで、そこに何の深い意味もないのです。
早い話、ノリが命なのです。

車を停めて何が悪おますんや

え~、やっと真面目なお話ができるかも知れません。
これは、日本の常識を覆す大問題です。
聞いた話なので、所々間違えているかもしれませんが、まあ気にせず行きましょう。

時は江戸、江戸時代のこと。大阪には、武士が1000人ほどしかいなかったそうです。
京都と大阪と長崎だけは、徳川幕府の中でも別格地扱いだったのです。

大阪では、お金を持っている商人が、自分たちの商売のために、道を整備し、橋を架け、自分たちが暮らしやすい町を作っていったわけです。
ですから、よろしいですか(×2)駐車違反に対する認識が、ほぼほぼ無いのです。

「自分たちが作った道でっせ、その道に車を停めて何が悪おますんや」、え~、これは如何なものでしょうか。
駐車違反の法律、駐車違反の切符、駐車違反の罰金、大阪人はまるで他人事のように、何でもお笑いに。東京の人は、払うものは粋に払う。
大阪の人は、ウダウダ言って払いたくない。
『粋』とか『野暮』なんて言葉は、大阪人の辞書には無いのかも知れません。

え~、実は私も、駐車違反になりかけたら、「道に車を止めて、遠くから時間をかけて、何枚も写真を撮っていただけだ」と、一応言います。
はい、古畑任三郎でした。

次回は三上幸四郎さんへバトンタッチ!

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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