上場企業に投資する主な方法として、株式を購入する方法と、社債を購入する方法の2つがあります。今回は、株式と社債の違いや、企業の資金調達から見た株式と社債の違い、NISAでの利用について見ていきます。
※本記事において社債は、固定金利の利付債(利子の支払いがある債券)を指します。
- 株式は値上がり益を期待する投資家が多いが、値下がりや減配・無配のリスクもある
- 一定の利子を受け取れる社債は、安定性が高い資産として位置付けられる
- 株式はNISAの対象商品だが、社債でNISAを利用するには投資信託が選択肢
株式投資とは
上場株式への投資は、証券会社を通じて行います。一般的には、すでに発行されている株券を、株式市場にて時価で購入します。
株式投資で期待できる収益は、主に値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)です。
2つの収益のうち、株価の値上がりによるキャピタルゲインを期待する投資家が多いのが株式投資の特徴です。ただし、決算近くになると配当利回りの高い銘柄が物色される傾向があります。
株式投資は景気の動向や企業の業績見通しによって、株価の値下がりや配当金の減配・無配のリスクがあります。
また、安定した個人株主を増やすことを目的に株主優待をおこなっている企業もあり、株主優待目的で銘柄を選ぶ投資家も多くいます。
社債(債券)投資とは
企業が発行する社債(債券)への投資も、証券会社を通じて行います。社債への投資は、株式投資と異なり、企業が新たに発行する社債を購入するのが一般的です。
社債はすべての証券会社で同じ社債を購入できるわけではなく、証券会社により取り扱っている社債の種類が異なります。株式は原則どの証券会社でも売買可能ですが、その点が株式との違いになります。
社債投資で期待できる収益は、利子(インカムゲイン)と、社債の値上がり益(キャピタルゲイン)です。
定期的に支払われる利子は「額面金額※×利率」で計算されるため、固定金利の社債では社債の時価に関係なく、受け取れる利子は一定となります。
値上がり益は、社債購入時の価格より、売却時の価格または額面金額が上回った時に発生します。そのため、額面金額で発行されて満期まで保有した場合には値上がり益を得ることはできません。
中途売却をする場合は時価での売却になるため、購入時の価格より売却時の時価が高ければ売却益が発生し、低ければ売却損が発生します。ただし、株式のように市場で売却することはなく、ほとんどは証券会社での店頭取引(相対取引)になります。
※額面金額は満期時に支払われる元本に相当し、原則発行から満期まで金額が変動しません。
企業から見た株式と社債の違いについて
企業が資金調達を行う方法には、株式や社債の発行、金融機関からの借入などがあります。
ここでは、株式と社債の発行による資金調達の違いについて見ていきます。
株式の発行によって得た資金は、株主に対して返済義務はないので、貸借対照表(バランスシート)の資産の部に計上されます。
社債は利子の利払いと元本の返済の義務があるので、金融機関からの借入と同様に負債に計上されます。期日どおりに利子の支払いや元本返済が行なわれないと債務不履行になります。そのため、企業はよほど業績が悪化しない限り、社債の利子の支払いと元本返済に努めます。
以上の点から社債(債券)は、株式に比べ期待できる収益は小さいですが、安定性が高い資産として位置づけられています。
NISA(少額投資非課税制度)の利用について
ここでは、株式投資と社債(債券)投資におけるNISAの利用について見ていきます。
株式投資はNISAを活用することができますが、個別企業の社債への投資は、NISAを活用することができません。そのため、利子や売却益に対して税金が発生します。
社債投資でNISAを利用するには、複数の社債や国債などに分散投資する投資信託(成長投資枠対象商品)が選択肢になります。
ただし、その場合は個別の社債にある満期(元本償還)というものはなくなり、売却のタイミングは投資家自身が判断することになります。また、投資信託では個別元本(購入時の基準価額)と売却時の基準価額の差額および、保有中に受け取った分配金の合計によって損益を計算します。
最後に
以上、株式と社債の投資方法の違いや、企業の資金調達から見た株式と社債の位置づけ、NISAでの利用について見てきました。
市場環境の変化や自身のリスク許容度などに応じて、投資する資産(株式、社債)を検討する際に参考にしていただけたらと幸いです。