テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 

9月18日に創立64年を迎える日本放送作家協会。
その成り立ちにはある草野球チームの存在があった、ということは放送作家協会内でも伝えられているのですが、今、その詳細を知る人はいません。
以前、協会の創立50周年記念本に、チームメンバーだった永六輔さんが数行ほど草野球チームについて言及しているのですが、鬼籍に入られ、詳しいお話も聞けないまま残念に思っていました。
ところが、ここに来て朗報が!
放送作家協会が運営する作家養成スクール「東京作家大学(東作大)」で講師を勤めるエッセイストの島敏光さんが「それ、親父の本に書いてあったなあ」と!
島敏光さんのお父様は「ゲソ」のニックネームで親しまれた昭和の偉大なジャズシンガーの笈田敏夫さん。
そこで連載第135回は、島敏光さんに伝説の草野球チームについて、2回にわたって寄稿してもらいました。

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東京作家大学の前身は草野球のチームだった!

島敏光さんの写真島敏光
エッセイスト タレント
東京作家大学講師

作家大学と草野球。
何とも奇妙な取り合わせだが、調べてみると、どうも本当の話のようだ。

私の父は笈田敏夫というジャズ歌手で、生涯に一冊だけ、自伝のような本を出版している。

ある日、東京作家大学前学長のさらだたまこ女史より、この大学を英語で言うときは「トウキョウライターズ・スクール」、その始まりを辿ると「東京ライターズ」という野球チームだったようだが、当時の様子を知らないか、と尋ねられた。

「島さんのお父さんもメンバーだったらしいのよ」
そう言われてみると、その名前に憶えがある。

そこで父が1985年に上梓した『ス’ワンダフル』(桐原書店)を読み返してみた。
確かに「東京ライターズ」という章がある。
その一部を引用してみよう。

昭和33年、長嶋茂雄が巨人に入団し、開幕直後の対スワローズ戦で、金田正一投手に連続4三振をとられた試合がありました。
この試合を、現在は直木賞作家ですが、当時は放送作家だった神吉拓郎と、永六輔、前田武彦の3人が見に行っていました。
試合終了後、興奮さめやらぬ3人は、
「俺たちも野球のチームを作ろう」
と、主に放送作家、作曲家、親しいタレント関係にチーム設立に関する勧誘状を郵送しました。
呼びかけに集った連中は30余人。
中には野球を余り知らない人も交っていました。
球団名は東京ライターズと決定しました。
そのうち一番熱心だったのはキノ・トールさんで、以下、三木鮎郎、曽我部博、成瀬数富、松宮梓、桜井淳、薩摩忠、石川皓也、伊藤裕弘、山本浩久、岡本克巳、岸田哲などの方々が参加しました。
青山の墓地の裏にある小さなグランドで練習を始め、初試合は駒沢にある電通の八声園グランドで行われました。

一般の人にとっては馴染みのない名前が並んでしまったようだ。
私自身も知らないメンバーが大半だ。
それでもこれらの人々が当時の放送業界の中核を担っていたことは間違いない。

野球グラウンドとボールのイメージ東京作家大学の始まりは、「東京ライターズ」という野球チームだったようだ

人気ジャズシンガーを本気にさせた草野球の魅力

父の本によると1958年、私が9才の時に東京ライターズは誕生した。

メンバーには甲子園出場の経験者もいれば、三角ベースもやったことのない人間もいて、何ともチグハグなチームだった。

父も誘われたものの、最初は「いい大人が子供みたいにはしゃいで」と無視を決め込んでいた。

ところが親友の三木鮎郎が嬉々としてユニホームに身を包み、スパイクを履き、バットやグローブを手にして出掛けて行く姿を目の当たりにして、「俺も入る」と宣言。

いざ入団の段になると、父の親友は
「本来は放送作家、作曲家の集まりだから、番組の台本を書いたことがなければ入団の資格はありません
と突き放す。

そこで意地になった父は、レギュラー出演をしていたテレビ番組の構成台本を強引に書かせて貰い、ようやく入団の運びとなった。

次回は、島敏光さんの『放作協&東作大のそもそも誕生秘話!』(後編)へ続く!

放作協&東作大のそもそも誕生秘話!(後編)

ぜひ、読んでください!

『スワンダフル』(桐原書店)の表紙

島敏光さんの父・笈田敏夫さんの自伝『ス’ワンダフル』(桐原書店)

『黒澤明のいる風景』(新潮社)の表紙

島敏光さんの初エッセー、伯父・黒澤明さんの素顔に迫る『黒澤明のいる風景』(新潮社)

『爺の手習い』(ワニブックス)の表紙

島敏光さんの最新刊『爺の手習い‐定年が待ち遠しくなる習い事体験10』(ワニブックス)

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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