テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第22回は、数々のゴルフ番組を手掛ける放送作家(たまに漫画原作)の無頼尊さん。

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こんにちは! 無頼尊です

無頼尊さんの似顔絵無頼尊
放送作家、日本放送作家協会会員

2人組の警察官がボクと相対し、ひとりが帽子を取る。この脱帽は、ボクへの敬意、ゆえの行為ではない。続いてボクはおもむろにポケットから小銭を取り出す。
ボクは財布を持っていないので、ポケットの中身は他に家のカギぐらいのもの。
それらを放り込む先が……器として機能するように裏向けにされた警官の帽子だ。

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警官にお金を恵んだわけではない。これは“職務質問”で見られる「儀式」の一つ。ボクは“当たり年”には10回くらい職質される。生来の職質ビジュアル、というか、職質キャラ?
ありがとうございます。

もう、慣れっこ。街を歩いていて正面から警官が来たら、呼吸をするよりも自然な動作でポケットに手を突っ込み、小銭を取り出す準備をするようになりました。ええ、ボクにできる「お金の話」はこの程度のものです。

でも、この職質を呼び寄せるような“ヤカラ感”がいまのボクの仕事に大切だとも思っています。

警察の職務質問
年に10回くらい警察に職務質問されることもあるという無頼尊さん。生来の職質キャラ?(写真はイメージです)
MAHATHIR MOHD YASIN Shutterstock.com

あ、自己紹介が遅れました。無頼尊という名前で「も」活動しています、放送作家(たまに漫画原作)です。
番組や作品のジャンルに応じてペンネームを変えていて気づけば10以上使っているのですが、いま「放送作家とお金」の話をするなら、無頼尊名義での活動が一番かな、と。

というのも、いま世界的にキテいるゴルフ関連の仕事をするときに主に使う名前が「無頼尊」なんです。【ぶらいそん】と読むのですが、この名前はブライソン・デシャンボーという、昨今、注目の的のプロゴルファーに由来しています。

ええ、ゴルフが大好きなんです、ボク
学生時代からのめり込み、ゴルフ歴は27年ほど。

で、ゴルフ、キテます
コロナ禍において、密が避けられるアウトドアの娯楽としてキャンプ、釣りとともに人気で、若者にも始める人が増えているそうです。

実際にゴルフ場や練習場は目を疑うような活況です。週末のラウンドの予約は取れないし、練習場の打席に入るのも1時間待ち、2時間待ちがザラといった具合。「ゴルフ企画を考えて!」という引き合いも多く来るようになりました。

ゴルフをプレイする若い女性
ゴルフ、キテます! 新たに始める若者も増え、無頼尊さんのもとにも「ゴルフ番組の企画を考えて!」という依頼も増えているそう

「貴族イメージ」をやわらげたい

あなや、隔世の感に堪えない。なにしろ、以前はバラエティ番組の会議で「ゴルフをやっている」なんて言おうものなら、「お、おまえ、マジか!? 貴族の出か!?」と引いた目で見られ、ともすると“庶民的なお笑いのネタ”は考えられないだろ!? みたいな扱いを受けるような感じでした。
なので、とにかく若手の頃はゴルフ臭を“ヤカラの香水”でかき消していましたが、担当していたある番組の大御所タレントMCの発案で番組のゴルフコンペが開かれることになり、状況は一変。

ボクは7年ぶりにクラブを握ったにもかかわらず、1オーバー(アマチュアではかなり良いスコア)で回り、2位を引き離しての優勝。大御所から「あんちゃんさ、作家なんだったら空気読めよ」と言われる始末。
でも、これを契機にゴルフの仕事が徐々に増えるようになりました。

さらにゴルフとの関わり合いの潮目となったのが8年前の「娘の誕生」でした。娘にはプロゴルファーになってもらいたい!
そんな思いが芽生え、勢い余って、『娘を絶対プロにするぞ!』という漫画の連載を始めたほどです。

いつしか「いずれ娘が飛び込むゴルフ界をもっと盛り上げないと!」と使命感を抱き、ますますゴルフの仕事を盛んに手掛けるようになりました。番組や漫画を増やして、色々な人が楽しめるようにしなきゃ!と。
そのために、誰よりも力になれる自信があるのです。

そこにきて、このコロナを踏み台にしたゴルフブームです。
ここでにわかに“職質キャラ”が役に立つ、と感じています。というのも、ゴルフには“貴族の戯れ”感がまだ残っている。このイメージ、若い子たちが増えている状況では足枷にもなっています。「貴族、メンドクセー」と思われているんです。

ゴルフをプレイする老夫婦
「ゴルフの貴族感を、ボクのヤカラ感でやわらげたい」(無頼尊さん)

なので、ボクの“ヤカラ感”で貴族感をやわらげたい。テレビはもちろん、YouTubeや活字媒体でも、今までになかった発想で「無頼尊が関わると観やすくなるな」と言われるように、
ゴルフをよりカジュアルに楽しめるものにしていきたいと思っているわけです。

ボクのポケットには小銭以上に企画が詰まっています。
これを読んでいる関係者でゴルフ企画を考えている方、ぜひボクに職質をかけてください。呼吸をするように、否、過呼吸気味にポケットからゴルフ企画をジャラジャラ出しますので。

ギャラも小銭でいいかって? いや、そこは貴族並みで……。

次回は脚本家の飯野陽子さんへ、バトンタッチ!

おヒマなら観てください!

完全に個人的な趣味で、自分のYouTubeチャンネルもやっています。

デシャンボーになりたい!


人気ゴルフインストラクター石井忍プロとデシャンボー目指してスイング改造中

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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