「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、50代の方にとって先の話ではありますが、「終活」という観点からNISAとiDeCoの利用について考えます。

  • NISAは株式や投資信託のまま相続できるが、相続税が非課税にはならない
  • iDeCoは利用者が亡くなれば現金化され、「死亡一時金」として遺族が受け取る
  • 死亡一時金のうち「500万円×相続人の数」までは相続税の計算の対象にならない

皆さん、こんにちは。
アメリカはトランプ政権に交代し、50日を迎えようとしていますね。移民対策・高関税・ロシアとウクライナの平和など、矢継ぎ早に政策を打ち出しています。そして、それらの政策は、アメリカ以外の国にも影響を及ぼしています。中でも関税には、世界が振り回されています。
一方、日本はというと、103万円の壁・教育無償化・高額療養費の自己負担額など、トランプ政権が打ち出す政策に比べると、私たちの暮らしに身近な、外国にはあまり影響がなさそうなことが争点になっていますね。

さて、今日は身近とはあまり言いたくはありませんが、無関係とは言えなくもない、「終活」がテーマです。
どこかのサイトで「50歳を過ぎたら終活を」というフレーズを見たことがあります。本稿のテーマとピッタリですね。

前回は「50歳代でも遅くない……NISA? iDeCo?」というタイトルでした。前稿ではNISAとiDeCoの比較を試みています。本稿では終活、つまり相続においてのNISAとiDeCoの比較です。

50歳代でも遅くない……NISA? iDeCo?

NISA口座は、相続税は非課税にならない

まず、金融庁が公表している2024年9月末時点のNISA口座の年代別利用状況(10歳刻み)を見ると、50歳代から80歳以上を合計すると、50.3%と、ちょうど過半数です。そして「50歳を過ぎたら終活」というフレーズがあるのは、先述のとおりなのです。
では、この過半数の人たちは、NISAによる投資と併行して「終活を考えなくてはならない」ということなのでしょうか。そもそも「NISAの終活とは、何なのでしょうか?」。
その問いに対する答えは、最後に述べています。

あらためて、NISAが非課税なのは「売却益などのキャピタルゲイン」と「配当金や分配金(=普通分配金)などのインカムゲイン」の2点というのはご存知だと思います。しかし、相続税については非課税ではありません。つまり、NISAではない、課税口座(特定口座や一般口座)と同じ扱いになる、ということなのです。

つまり、NISA口座の有無に関わらず、株式や投資信託は現金預金、不動産などとあわせて、相続財産の計算に含まれるのです。相続財産の計算に含むということは、相続税の課税対象になるかもしれない、ということなのです。

NISA口座にあった株式や投資信託……相続人の誰が受け取るの?

亡くなった人のNISA口座にあった株式や投資信託は、いったい、どなたが受け取ることになるのでしょうか?

亡くなる前に、遺言などであらかじめ指定しておくか、亡くなった後で、相続人が話し合う、いわゆる遺産分割協議で決めるかの、いずれかになろうかと思われます。

補足:相続は“争族”に?

NISA口座の株式や投資信託を含む、亡くなった人の遺産について、遺言がない場合には、遺産分割協議を行うのが原則です。協議とは話し合いのことですが、この話し合いが相続争いに発展することになります。遺産分割協議をしなくてすむようにと、生前に遺言をしたためることがあります。

しかし、むしろ遺言がきっかけとなって、相続争いが生じることもあります。相続に“争族”という字を当てるのは、決して洒落ではありません。
株式や投資信託、それに不動産。その中には「相続したくないもの」もあれば、「一人占めしたいもの」も、それぞれあるでしょう。これが争族の理由の一つです。

NISA口座にある株式や投資信託を、株式のまま、投資信託のまま相続はできる?

亡くなった人のNISA口座にあった株式や投資信託は、株式のまま、投資信託のまま、相続することは可能です。
つまり子々孫々に至るまで、「長期投資の意志」を相続することが可能なのです。が、「非課税を相続する」ことはできません。

「非課税を相続」はできません

これが「NISAは相続に向かない」という、筆者の主張の由縁でもあります。
例え、株式のまま、投資信託のまま、相続したとしましょう。では、相続した株式や投資信託を、相続した人の名義であるNISA口座に入れることができるか? 残念ながら、できません。

なぜならば、NISAのルールを思い出してください。NISAの対象になるのは、ご自身名義のNISA口座で買った株式や投資信託に限られるのです。亡くなった人がNISA口座で買ったとしても、相続した人の名義のNISA口座で買ったものでありません。