テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第149回は、数々の人気バラエティー番組を担当する高須光聖さん。ちなみに高須さんは本日(2023年12月24日)、還暦を迎えられたそうです!

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「高須さんですよね、いつも番組見てます」

高須光聖
高須光聖
放送作家
日本放送作家協会会員

よ〜く考えよぉ〜お金は大事だよ」と子供が歌っていたので、父親として「この歌のように無駄遣いはしちゃダメ」と、いつも口すっぱく教えていたが、そろそろ還暦の声が聞こえる僕でさえ未だに無駄遣いはしてしまう。

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もちろん勿体無いという意識はしっかりある。スーパーへ買い物に行き、エコバックを忘れると「あっ、しまった」としっかり落ち込むし、ドリンクバーで2回しかお代わりしないと、ちょっと損をした気になるし、トイレットペーパーは手に4周分と自分では決めている。しかし、ついつい無駄遣いの鍵が緩む時がある。

先日、ちょっと高めのセレクトショップに好みのコートがディスプレイされていたので、ふらっと中に入ってみた。すると「いらっしゃいませ」と好意的すぎず、それでいて無愛想でもない、程よい距離感をとる僕の好きなタイプの店員さんが、ニコッと笑顔で出迎えてくれた。

表のコートがちょっと気になって……」と告げると、僕のサイズにあったものをわざわざ奥から出してくれ、「鏡の前へどうぞ」と袖を通すのを後ろから手伝ってくれた。

羽織ってみるとこれが微妙に自分のイメージと違っていて、「う〜ん、ちょっと違うかな……ごめんなさい」とコートを店員さんにお返しをした。すると「高須さんですよね、いつも番組を楽しみに見ています」と、とても自然な笑顔で話しかけられた。

こうなるとそのまま直ぐには帰れない。他の服をしばらく物色するふりをして時間を潰していると「こちらなんか如何ですか?」と店員さんが一枚のシャツを持ってきた。正直悪くもないが、ぶっちゃけ買うほどでもない。しかし番組のファンだと言ってくれたことと、とても感じのいい人だったので、一応シャツをもって試着室には入った。

断る勇気が僕にはない……。

「いかがですか?」と閉まったカーテン越しに店員さんが話かけてこられたので、これより上のサイズがあるかと聞き返した。すると「もう残っているのがこのサイズだけなんです」と店員さんが申し訳なさそう返答したので、これ幸いと「このLサイズがあればな……」と言いながらカーテンを開けた。あれば買ったんだけど、無いから今日はなにも買わずに仕方なく帰ります的な雰囲気をプンプン出しながら、シャツを店員へ手渡し、ゆっくりと出口へと向かった。

アパレル店のディスプレイ
店員さんはすぐさまマネキンからシャツを脱がして持ってきてくれた

すると「ちょっとお待ちください」と後ろから声が聞こえた。店員さんが慌ててお店にデスプレイされていたコートのマネキンの前に走っていったかと思えば、すぐさまシャツの値札を見つけ、これまた素晴らしい笑顔で「あっ、良かった、Lサイズがここに一点ございました」と、わざわざマネキンのコートを脱がせて、中のシャツを丁寧に取り出して、僕の前に持ってきてくれたのだ。これを断る勇気が僕にはない。かくして僕のクローゼットには一度も袖を通していないLサイズのシャツが今も眠っている。

次回は鈴木おさむさんへ、バトンタッチ!

ぜひ、ごお聴きください!

空想メディアの画像

高須光聖 誕生60年記念「doda presents 大・空想メディア」

ゲスト スガシカオおぎやはぎ
12月17日のイベントアーカイブが12月31日(日)23:59まで配信中です

配信チケットはこちらまで

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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